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親子ロボットプログラミング講座(1)「親子でロボットプログラミングに取り組む」


 2020年度から、プログラミングの考え方や活用方法、エッセンスを、小学校の既存教科へ取り入れる取り組みが本格的に始まりました。そんな中、最近、新型コロナウイルスのパンデミックによる外出自粛要請の影響から、自宅で巣ごもり学習をする為の商品に人気が集まっているそうです。ヤフーショッピングでは、前年比でプログラミング学習玩具が3.2倍の売れ行きとなっているそうです。

2020年3月1日~31日の注文数をもとにしたランキングによると、プログラミング学習玩具の1位は「レゴプログラミングトイ」(1万6,979円)、2位は「レゴ WeDo 2.0 基本セット」(2万6,300円)、3位は「GoGoロボットプログラミング」(2万1,320円)。ロボットを組み立てて動作をプログラミングする教材セットなどが人気を集めている。

情報ソース:https://resemom.jp/article/2020/04/13/55776.html

 親の立場からすると、例えば、テレワーク中に、休校中の子供と一緒に家の中で取り組むアクティビティを平日に繰り広げていくのは、精神的にも、かなり厳しいものがあると思います。恐らく、罪悪感を感じつつも、Youtubeを見せたり、テレビを見せたり、おやつを増量させながら、時間を何とか過ごさせているという保護者さんも多い事と思います。

 そのような特殊な状況の今、「プログラミング教育が小学校でも」という言葉に敏感な親たちが、子供の学びにもなり、尚且つ、親自身もやってみて、なんだかおもしろそうで、これで有意義な時間が過ごせるのであれば、例え玩具であったとしても、親自身の内に秘めた罪悪感は緩和されるという心境もあって、ロボットプログラミング教材の需要が増えたのではないかと推察しています。

 そこで、今回、何回かに分けて、ロボットプログラミングを、子供と一緒に家庭で取り組む為の、ロボットプログラミング講座を、このロボ學に掲載したいと思います。この講座の対象は、基本的にプログラミングについての初心者であり、お子さんが、小学校生以上の親子です。あくまでも、自宅にいながら、親子で楽しくロボットプログラミングに取り組む事を目的にした内容になりますので、アカデミックな内容ではない点はご容赦ください。尚、子供だけじゃなく、ロボットプログラミングの知識がゼロの親自身も、それなりに学びを得られるという事を意識していきたいと思います。

 

ロボットプログラミング教材を選ぶ時の3つの観点

 一言でロボットプログラミング教材といっても、自宅で取り組む場合に、どれを使ったらよいのでしょうか?googleで「ロボットプログラミング 教材」検索してみると、星の数ほどの商品が出てくることが分かります。人型のロボットを本格的に勉強するアカデミックなものから、PCなしでも取り組めるような4歳・5歳向けのもの。ブロックで組み立てるものや、ビジュアルプログラミングソフトウェアで書き込めるマイコンボードを使ったものなどなど。正直言って、選べません。そこで、まずは、「親子で熱中できるものを選ぶ」という場合に、3つの観点で吟味する事をお勧めします。

観点1:長く取り組める

 よくある、ロボットプログラミング教材の謳い文句として、「このキットを買うと、10個のモデルを組み立てられる」というものがあります。一見、長く楽しめそうですが、そういうキットは大体、「それだけしか」できません。長く取り組めるかどうかのポイントは、2つです。

拡張性があるか

 ロボットプログラミングキットの中に、豊富な組立パーツが入っているかどうか?また、そのキットにさらに追加パーツセットなどが発売されているか?を観点に見てみましょう。代表的な例は「レゴ®エデュケーション」の中学~高校生向け「教育版 レゴ® マインドストーム® EV3」・小学校高学年~高校向け「 SPIKE™ プライム」・小学校低学年~向け「レゴ®WeDo 2.0」でしょう。言わずと知れた、レゴの、ロボットプログラミング教材です。各キットに数百のブロックが入っており、拡張性は無限大といってもいいでしょう。基本キットに加え、追加で拡張キットが用意されている点も特筆すべきでしょう。

出典:レゴエデュケーションHPより

 

 その他としては、アーテック社のアーテックロボ2.0が、高い拡張性を有しています。

出典:アーテック社HPより

 

ビジュアルプログラミングからテキストプログラミングまで対応できるか

 ロボットプログラミング教材に使用するプログラミングソフトウェアは、ほとんどが、ビジュアルプログラミング言語用語解説]でプログラミングする事が出来ます。予め機能を持ったブロックをドラック&ドロップして、スクリプトを作っていくものです。このビジュアルプログラミングは、プログラムの考え方などの基礎を学ぶ上では、非常に有効ですが、さらに上級を目指そうとした場合は、いずれ、テキスト言語用語解説]に移行したくなってきます。そんな場合にも対応できる教材であるのもポイントです。

レゴ®WeDo 2.0のプログラミングソフト画像

 

 ちなみに、ビジュアルプログラミング言語の中にも、Scratch3.0ベースにしたものや、LabVIEW用語解説]のようなフローチャートのようなUIにしたもの等、いくつか種類が存在します。例えば、「レゴ®WeDo 2.0」は、フローチャート式で、基本的には文字ほとんど意識しなくてよいものになっています。また、Scratch (スクラッチ) は、MITメディアラボが開発したプログラミング言語学習環境で、最新版のScratch3.0をベースとしたプログラミングソフトウェアを採用しているキットも非常に多いです。Makeblock社が提供するロボットキットは、全て、Scratch3.0ベースの「mBlock」というソフトウェアでプログラミングをします。

Makeblock社のmBlock5

 

 最近のロボットプログラミング教材は、上記のようなビジュアルプログラミング言語と共に、PythonやJavascriptといったテキスト言語にも対応できるという事を謳っているものが増えてきているので、その辺りをしっかり見ておきましょう。

 

観点2:国際的なロボットコンテストに対応しているかどうか?

 自宅でロボットプログラミングに取り組む時にほぼ全員が遭遇する壁が、モチベーションの壁です。導入から基本的なプログラミングまであらかじめ用意されていたカリキュラムを一通りやり終えた後、途端にその先の道しるべがなくなり、路頭に迷い、モチベーションが下がるという状況です。外国語の勉強でも、初級は終えたけど、その後、中級で行き詰る事があるかと思いますが、それと一緒です。

 ロボットプログラミング学習は、論理的思考力がつく、プログラミングスキルが身につく、21世紀に必要な力が身につくなど、点数では測れず、どう評価してよいか判断できない能力を高める取り組みになる為、何かアウトプットの場がないと、モチベーションが長続きしないと思います。そこで、良質なアウトプットの場として、ロボットコンテストを目指すという事をお勧めします。

 ロボットコンテストの中でも、基本的な事が分かっていれば、それを活用して、コンテスト競技用のコース攻略の為のプログラミングをしたり、ロボットを改良したりといった事に取り組む事が出来る初級者向けのコンテストが数多くあるので、親子で取り組んでいるロボットプログラマーのアウトプットとしては最適です。

 ロボットコンテストには、プログラミング教室が、教室の生徒の為に開催するクローズドのものから、国際的な大会まで繋がるような誰でも参加できるオープンなものまで多種多様にあります。今回は、モチベーションを高めていく為に、日本で参加できる青少年向けコンテストの中でも、世界大会に繋がるもので、尚且つ、市販のキットを使って、誰でも参加できる大会をピックアップしてみました。

VEX ROBOTICS 競技会

 VEXロボティクス競技会は、アメリカで生まれたSTEM教材「VEX ROBOTICS」を活用した、世界最大級のロボットコンテストです。「VEX ROBOTICS」の特徴は、3種類のロボット(VEX V5/VEX IQ/VEX PRO)・独自のロボットプログラミングソフトウェア・無償で提供される本格的なカリキュラム・競技会の4つの構成要素を一括で提供している点です。イベント参加を前提としているところは、他のロボットプログラミング教材とは一線を画しています。

出典:VEXロボティクス公式サイト

 【対応教材】

  • VEX V5
  • VEX IQ
  • VEX PRO

 

FLL

 FLL(First Lego League)は、VEXと並ぶ、世界最大規模の国際的なロボット競技会です。1998年に米国のNPO法人「FIRST」とレゴ社によってに設立され、日本では2004年から開催されています。競技は、Lego社の自律型ロボット用語解説]を組み立てて課題をクリアする「ロボットゲーム」と、大会テーマに合わせて研究発表を行う「プレゼンテーション」に分かれており、これらの順位を総合して優勝が決定されます。

出典:https://firstjapan.jp/

【対応教材】

  • 教育版 レゴ® マインドストーム® EV3
  • レゴ® SPIKE™ プライム
  • レゴ®WeDo 2.0 

 

WRO

 WRO(World Robot Olympiad)は、シンガポール国立サイエンスセンターの発案により、2004年に始まった自立型ロボットによる教育的な競技会で、シンガポールにてNPO法人として活動しています。FLLと同じく、Lego Educationの、WeDo2.0やSpike、ev3などを使って4種類の部門が実施されます。 性能と品質を競う競技から、アイディアやビジネスを競う競技まで広く挑戦の場を提供され、小学生から高校生まで参加できるように、幅広く部門が設定されている事が特徴です。

出典:https://www.wroj.org/

【対応教材】

  • 教育版 レゴ® マインドストーム® EV3
  • レゴ® SPIKE™ プライム
  • レゴ® WeDo 2.0

※上記に制限されずに参加できる部門も一部あり

 

MakeX

 MakeXとは、STEAM教育を核とした国際的なロボットコンテストで、中国のMakeblock社が中心となって開催されています。2017年から開始された新しいコンテストですが、既に世界41か国で開催され、2019年の世界大会ではヨーロッパや東南アジア、日本から450チームが参加した、勢いのある大会です。FLLのような自立型ロボットによる競技部門と、テーマに沿った電子工作の作品をプレゼンテーションする部門があります。

出典:https://makex.jp/

【対応教材】

  • Makeblock社のmBot及び、大会参加用の拡張キット

※Makeblock社の製品に限らずに参加できる部門も一部あり

 

観点3:同じキットを使っているユーザーが多く、情報がオープンになっているかどうか?

 最後は、自宅で取り組むために、一番重要な、ユーザ―数の多さと情報のオープン性です。プログラミング教材自体は非常に優れていても、高価でユーザーが少なかったり、特定のプログラミング教室での活用がメインとなっていて、チュートリアルなどの情報がネット上にあまり出ていないロボットプログラミング教材は意外と多いです。

 ユーザーが少なかったり、情報がオープンではないプログラミング教材は、親子で取り組むには、後々に、技術トラブルや、プログラミング上の課題で悩んだ時に、質問できる相手がいなく、路頭に迷いやすいです。

 仮に、ロボットプログラミング教材メーカーが作るパンフレットや商品プロモーションページでの情報がしっかりした内容であったとしても、実際取り組んでみると、その情報だけでは足りない事が多いです。

 従って、そのロボットプログラミング教材を使っているユーザーが独自で掲載している情報(個人のブログなど)や、そのキットを使っているユーザーのコミュニティが存在しているかどうかを、事前に調べることをお勧めします。Googleでの検索や、各SNSで、キットの名前やコミュニティのキーワードで検索すれば、意外と簡単に調べられます。例えば、Makeblock社のmBotであれば、「Makeblock ユーザーコミュニティ」といった具合で検索すると、ユーザー自身の主催しているイベントなども開催されている事が分かります。

 

3つの観点からの教材候補をピックアップ

 以下は、これまで見てきた観点から、筆者がピックアップした候補です。

【候補】

  • VEX(IQ or V5)
  • LEGO (Mindstorms ev3 / Spikeプライム/WeDo2.0)
  • Makeblock(mBot)

 

 これらをのうちのどれか選べば、全く期待外れだったという事にはならないはずです。後は、各教材の値段や、各ご家庭の好みにでご判断されるのが良いかと思います。

 筆者は、3つの候補のうち、一番、基本キットが「値段が安く」、「ネットで買いやすい」という事も踏まえ、Makeblock社のmBotを選択しました。

出典: https://www.makeblock.com/mbot

 

 次回以降は、このmBotを使っての親子ロボットプログラミング講座を連載していきたいと思います。

 

筆者プロフィール

荻原 裕

TINKERBASE代表

2010年よりIOTデバイス開発ベンチャー企業での海外営業・新規事業開発・大企業向けIOT事業開発アクセラレーション責任者を歴任。2018年より小中学生向け出張専門プログラミングスクール「TINKERBASE」運営。2015年経済産業省登録 中小企業診断士。

著書:IOTビジネス入門&実践講座 2016年 ソシム出版

 

用語解説

ビジュアルプログラミング言語

テキスト言語」に対して、図形や命令の書かれたアイコン、ブロックなど視覚的な形を操作することでプログラミングを可能とする言語を「ビジュアルプログラミング言語」という。ドラッグ&ドロップなどの操作がメインでプログラミングができるため、プログラミングに慣れてない人にとっても障壁が低い。なお、ビジュアル言語の一部には、ビジュアル言語で記述したプログラムをテキスト言語に変換して表示したり、テキストでもコードの入力ができるものもある。[記事に戻る
出典:https://miraino-manabi.jp/dictionary

 

テキスト言語

プログラムを「文字、記号と数字のみ」で記述するもの。文字は英語、日本語を問わない。世界で実用的に使われているプログラミング言語の大多数が「テキストプログラミング言語」である。[記事に戻る
出典:https://miraino-manabi.jp/dictionary

 

LabVIEW

LabVIEWはグラフィック型言語によってプログラミングすることのできる開発環境であり、主に計測用に用いられる。Laboratory Virtual Instrumentation Engineering Workbenchを略したもの。[記事に戻る
出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/LabVIEW

 

自律型ロボット

自律型ロボットとは、簡単にいうと、人がコントローラーなどで操作しないで動くロボットのことです。日々の生活の中で一番身近な自律型ロボットは、自動のお掃除ロボットです。その為に、自律型ロボットには、事前にプログラムをアップロードしておく必要があります。教育目的で行われているロボットプログラミングでは、基本的に組み立てたロボットをコントローラを利用せずに、自律動作させる方法を試行錯誤しながら学んでいきます。[記事に戻る