この回で学ぶ事
親子で学ぶロボットプログラミング講座の第2回目は、「ロボットプログラミングの準備をしよう」です。
前回は、自宅で親子でロボットプログラミングを楽しむための教材の選び方を解説しました。
この回からは、世界中のプログラミング教育の現場で利用されている教育用ロボット「mBot」を使うための準備方法を解説いたします。
mBotを使ったロボットプログラミングをする為の必要機材は、ロボットキット(mBot)と、パソコン(タブレットも可能)です。
mBotに関しては、アマゾンなどのECサイトや家電量販店などで簡単に購入できますので、mBotで検索してお好きなところで購入しましょう。尚、日本の正規代理店が流通させているのは、「mBot v1.1 Bluetooth版」になり、この講座もこれを使っていきます。
パソコンに関しては、Windows・Mac・Chromebook・LinuxやAndroid・iOSなど各OSで動作可能です。
タブレットでもプログラミングをする事は可能ですが、使い勝手や応用していく事を考えると、パソコンの利用をお進めします。筆者の個人的な考えですが、ロボットプログラミングを学びながら、キーボードの使い方に慣れていくというのも、子供にとっては、非常に重要なことだと思います。
この連載では、特に断りが無い限り、Windows10のパソコンで進めていきます。尚、windowsは、64bit版であれば、5年以上前の古いスペックでも動作しますので、現在流通しているPCはほぼ問題ないでしょう。
さて、mBotとパソコンを用意したら、いよいよ、ロボットプログラミングの準備を始めましょう。準備は4つのステップで解説していきます。
STEP1:mBotの動作確認
mBotの組み立て
まずは、mBotの組み立てから始めましょう。
mBot v1.1 には、超音波センサー・ライントレースセンサー・DCモーター・メイン基板・Bluetoothモジュール・タイヤ・各種ケーブル・シャーシ・ネジ・ドライバー及び、動作確認用のテストコースシートが入っていますので、このキットに電池(単3電池4本)を用意すれば、全て事足ります。
組立てに関しては、同梱されている組立説明書を見れば、子供の手でも60~90分程度で完成すると思います。
まだ、お手元に無い読者さんの為に、組立のCG動画をご紹介します。
組立の際に知っておきたいことは、主に、2つです。
一つは、センサーの接続をするポート番号を間違えない事。mBotのメイン基板、mCoreには、センサーや拡張電子パーツを接続する為に4つのポートがあります。1~4のポートのどの番号にどのセンサーを接続するか、取り扱い説明書の通り、しっかり接続しましょう。
もう一つは、バッテリーについてです。mBotは、単三乾電池4本(6V)か、充電式のmBot専用のリチウムポリマー電池(3.7V)の2つに対応しています。組み立ててみると気付くのですが、乾電池にした場合、電池交換のために、mBotを少しばらさなければなりません。これは結構面倒です。一方、別売りの充電式リチウムポリマー電池は、付属のUSBケーブルで、PCとmCoreをつなげつなげると充電できます。これは非常に便利ですので、がっつり取り組みたい方は、リチウムポリマー電池の購入をお勧めします。
mBotの動作確認
組み立てたら、mBotの動作確認です。
mBotは、初期状態で、リモコンモード・障害物回避モード・ラインフォロワーモードの3つの動作モードがあり、mCoreのスイッチか、付属の赤外線リモコンで、モードを切り替えます。
1:リモコンモード
リモコンの上下左右ボタンを押して、mBotをラジコンのように動かす事が出来るモードです。もし、上手く動かない場合は、左右のモーターの取り付けが逆になっていないかなどを確認しましょう。
2:障害物回避モード
mBotの主要パーツである、超音波センサーを使って、障害物を回避する動作をします。
上手く動かない場合は、超音波センサーが説明書通りのポート番号に取り付けられているかどうかを確認しましょう。
3:ラインフォロワーモード
mBotのライントレースセンサーを使って、黒い線上に沿って、mBotが走行するモードです。キットに付属している八の字のテストシートを使って、確認します。
問題なく各動作が動いたら、mBotの組み立ては完了です。
ちなみに、この講座を終えると、上記の3つの動作をプログラミングできる状態にまでなれます。
STEP2:mBlock5のインストール
mBot=ハードウェアの準備が出来たら、次は、ソフトウェアの準備です。mBotのプログラミングをするソフトウェアは、makeblock社が無償で提供しているmBlockを使います。
まずは、mBlockのサイトを確認しましょう。
mBlock5とmBlock3
mBlockには、最新版のmBlock5と旧版のmBlock3があります。これから始める人は、mBlock5を使っていきましょう。
ちなみに、mBlockは、代表的なビジュアルプログラミング言語「Scratch」をベースに作られています。ScratchはNHKのプログラミング教育番組でも取り上げられ、非常に多くの子供向けのプログラミング教室やワークショップでも使われており、事実上デファクトスタンダードといっても良いと思います。
mBlock5は、最新版Scratch3.0をベースに作られていて、操作方法や、プログラミング方法・画面の構成などは、ほぼ同じです。お子さんがScratchを使ったことがある人は、すぐに慣れてしまうでしょうし、お子さんの友達がScratchを使って学んでいれば、共通の話題にもなるソフトウェアです。
ウェブ版とダウンロード版
mBlock5には、ウェブ版とダウンロード版があります。ウェブ版とは、インターネットが繋がっているPCで、https://ide.mblock.cc にアクセスすると、ウェブブラウザ(Chrome推奨)上で、プログラミングする事が出来ます。
ダウンロード版は、PCにmBlock5ソフトウェアをダウンロードして使います。インターネットにつながっていなくてもプログラミングをする事が可能です。
ダウンロード版を最新バージョンにしておけば、ウェブ版と基本的な機能に違いはありません。ただ、若干ウェブ版の方が、最新機能などのアップデートが早いので、常に最新の機能の環境で取り組みたい人はウェブ版にしましょう。
本講座では、特に断りが無い限り、2020年6月現在最新のダウンロード版(ver5.2)で解説していきます。
ダウンロード版の設定手順は、以下のPDFにまとめておきましたので、ご確認ください。
STEP3:mBotとPCの接続
さて、mBot=ハードウェアとmBlock5=ソフトウェアの準備が出来たら、ハードとソフトの接続です。mBotとmBlock5(PC)の接続方法は、3つあります。
1:USBケーブルを使う方法
最もポピュラーで、どのPC(USB-TypeAのポートがあるPC)でも安定して接続が出来ます。基本は、USBケーブルで接続をしましょう。
2:PC内蔵のBluetoothを使う方法
USBケーブル接続だと、プログラミングの際に、PCとmBotが物理的に離せず、PCからプログラムを実行する場合に、不便です。そこで、mBotのBluetoothと、PCに内蔵されているBluetoothを使いケーブルに接続することなく、mBlock5で実行したプログラムを送信することが出来ます(プログラムのアップロードは出来ません)。
ここで注意したいのが、PCの内蔵Bluetoothのバージョンが、基本的には、Bluetooth4.0でなければならない点です。
※ ちなみに、Bluetooth4.0以外のPCを4.0にする方法はこちらのURLをご参照下さい。ただ、あまりお勧めできません。
3:別売りのBluetooth接続用USBドングルを使う方法
mBlock5とmBotを無線(Bluetooth)で繋げる為の一番確実な方法は、Makeblockの別売りのBluetooth接続用USBドングルを使う方法です。
このドングルを使うと、一度ペアリングしてしまえば、mBotの電源を入れるだけで接続完了できます。
ワークショップなどで、同一教室内で、PC-mBotの複数セットを同時で繋げる時も、事前に1mBot-1ドングルでペアリングをしておけば、混線の心配はほぼありません(一応、10台同時使用までは試したことあります)
また、内蔵Bluetoothとの一番の違いは、プログラムをアップロードしたり、ファームウェアを更新することが出来る点です。これは、想像以上に便利です。
ここでは、最も基本的な接続方法である、USBケーブルでの接続についてご説明します。
1:mBotの電源を入れる。
2:mBlock5を立ち上げる
3:言語の設定を確認。※「日本語」か「にほんご」にすることが可能です。
4:mBlock5のデバイスをmBotに設定する
立ち上げると最初は、デバイスタブが「Codey」という白いロボットの設定になっているので、×印をクリックして、「Codey」を削除します。その後、「追加」を押して、下の画像のように、デバイスライブラリを開いたら、mBotを指定して「OK」を押して追加しましょう。
このようにmBotが追加されます。
5:mBotのUSB差込口にケーブルを挿し、PCのUSBポート(USB-TypeA)と接続。
6:ケーブルを接続したら、下の画面の、接続を押します。
7:COMポートを指定して、mBotを接続
8:接続完了
下の画像のようになれば、接続が完了しています。
STEP4:プログラミングをする前にやること
mBlock5アカウントログイン
mBlock5は、ウェブ版、ダウンロード版、共にアカウント作成機能があります。
mBlock5画面の右上のアイコンをクリックすると、メールアドレス、パスワードを登録してアカウント作成が出来ます。
アカウントを作成すると、インターネット接続さえできれば、作ったプロジェクトを、サーバーに保存することが出来るので、PCを変えても、以前作ったプログラムを呼び出すことが可能です。
また、プログラムを世界中のユーザーにシェアしたり、mBlock5の画像認識AI機能を使ったりする事が可能です。
尚、ログインしなくても、mBotへのロボットプログラミングをする事は可能です。
mBotのファームウェアの更新
mBotは最初、赤外線リモコンモード・衝突回避モード・ラインフォロワーモードが切り替わるプログラムが、インストールされた状態になっています。
このまま、プログラミングを始めても構いませんが、上記のモードで動作確認をした後は、ファームウェアを最新のものに更新することを強くお勧めします。理由は、今後、ソフトウェアmBlock5がバージョンアップしていく際は、mBotのファームウェアが「最新版であることを前提にしている」からです。
ファームウェアの更新の方法は、デバイスリストにある「設定」>ファームウェアを更新と進み、
この画面で、オンラインのファームウェアを選択しアップロードします。
尚、もう一度、3つの動作モードのファームウェアに戻したいときは、上の画像のオンラインのファームウェアの下にある、工場出荷時のファームウェアをアップロードします。
デバイスリストの初期設定
ここまでで、プログラミングの準備は完了です。ですが、このままmBlock5を閉じて、再度立ち上げると、また「Codey」がデバイスに設定された状態になります。
もし、最初から「mBot」からスタートしたい場合は、下の画面のように、デバイスライブラリのmBotのデバイスを左上にマウスを合わせると、「☆」が出現しますので、それをクリックしましょう。そうすると、デフォルトのデバイスがmBotになります。
親子ロボットプログラミング講座の第二回目は、初期の設定などで、少々退屈だったかもしれませんが、これからプログラミングしていく際に、余計な躓きが無いように、最低限の設定についてご説明しました。次回からは、いよいよ、mBotを実際にプログラミングしていきたいと思います。
筆者プロフィール
荻原 裕
TINKERBASE代表
2010年よりIOTデバイス開発ベンチャー企業での海外営業・新規事業開発・大企業向けIOT事業開発アクセラレーション責任者を歴任。2018年より小中学生向け出張専門プログラミングスクール「TINKERBASE」運営。
国際的ロボットプログラミング大会「MakeX」2019東京大会審判委員長。2020東京大会事務総長。
2015年経済産業省登録 中小企業診断士。著書:IOTビジネス入門&実践講座 2016年 ソシム出版