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第134回 ロボットのための画像処理技術(実施報告)


第134回ロボット工学セミナー実施報告書

ロボットのための画像処理技術

 

開催日時:2021年5月18日(火)10:00~17:00
会場:オンライン開催
参加者数:88名
オーガナイザー:竹村憲太郎 (東海大学)
サブオーガナイザー:井尻善久 (オムロン サイニックエックス株式会社)

 

セミナー概要

近年,物体認識やセグメンテーションなどロボット工学に必要な画像処理技術は,深層学習により目覚ましい発展を遂げています.しかしながら,画像の撮像プロセスには,光の性質が大きく関わることから,高度な画像処理システムを実現する上で,物理・光学への理解は必要不可欠です.そこで本セミナーでは,物理ベースビジョンや光学系を含むビジョンシステムにおいて,第一線で活躍されている研究者の皆様をお招きし,基礎から最新の研究までご紹介いただきました.

 

第1話 光学的視線制御機構の原理と応用 -撮像光学系を改造するには-

群馬大学 奥 寛雅 先生

ロボット工学では,追跡対象に合わせてカメラの視線方向を適宜変更したい場合が多くあります.そこで本講演では,幾何光学の基礎からカメラの視線方向をミラーで制御する手法まで説明を頂きました.高速にカメラの視線方向を変更するため,回転ミラーをガルバノスキャナで制御する光学式視線制御機構を紹介頂くとともに,その応用例として高速な物体追跡や,広範囲を移動する物体に対するプロジェクションマッピングについて紹介頂きました.

 

第2話 分光イメージングの基礎と原理

東京工業大学 紋野 雄介 先生

本講演では,医療・農業・ロボットなど様々な分野で応用されている多バンド・多波長の分光イメージングについて,基礎から説明頂きました.これまでに提案されている分光イメージングシステムの原理と各システムの特徴を学ぶことができました.また,深層学習を取り入れた分光イメージングや最新の研究成果である3次元センシングへの新しい試みも紹介頂きました.

  

第3話 画像分野における偏光の活用

広島市立大学 宮崎 大輔  先生

偏光子がOn-Chip化されたカメラが登場し,容易に計測が可能となったことから,偏光を用いた画像処理技術は注目を集めております.本講演は,光の振動方向が偏る現象である偏光について,その原理と基礎知識を説明頂きました.また,コンピュータビジョン分野における偏光の活用事例として,反射成分の除去やヘイズ除去,照度差ステレオなどを紹介頂きました.

 

第4話 光伝播計測に基づくコンピュータビジョン

奈良先端科学技術大学院大学 向川 康博 先生

反射や屈折,散乱等も光の特徴的な現象であることから,本講演では光伝播計測に基づくシーン解析について講演頂きました.光の反射や散乱を計測することで材質を推定する手法や,最新の成果であるSingle Photon Avalanche Diode(SPAD)を用いた光伝播の可視化手法を紹介頂きました.

 

まとめ

ロボット工学の分野では,3次元計測等の様々な画像処理技術の研究開発が盛んに行われておりますが,本セミナーでは4名の先生に講演を頂き,光学の知識が高度な画像処理を実現する上で必要不可欠であることが,改めて確認できました.第134回ロボット工学セミナーが,今後のロボットビジョンの発展に少しでも寄与できれば幸いです.

COVID-19の影響で,本セミナーもzoomを用いた完全オンラインでの開催となりました.オンラインでのセミナー実施は,遠隔からの参加が可能という大きな利点がありますが,質疑におけるインタラクティブ性等に課題があることも事実です.オンサイトでの実施が可能となった後も,オンライン参加が多く活用されると予想しており,今回のセミナーでの得られた知見は,今後のセミナーにて活かされるように引き継ぎたいと思います.

 

謝辞

各分野を代表する研究者の方々に,本セミナーでの講演をご快諾いただいたことに感謝申し上げます.また,セミナーに参加頂きました皆様にお礼申し上げます.サブオーガナイザーの井尻様には当日の進行を支援頂き,誠にありがとうございました.ロボット学会事務局の皆様にはセミナーの円滑な運営のためサポート頂きました.感謝申し上げます.

 

2021年7月14日

文責  竹村憲太郎 (東海大学)