SEARCH
MENU

[気鋭のロボット研究者vol.24] 既存技術や材料を組み合わせ実現【後編】/近畿大学 柴田瑞穂准教授


本記事はrobot digest 2022年5月24日掲載記事を転載しております。

センサーや電気回路を真空パックすれば、水中ロボットが作れるのではないか――。例えばそんな思いつきも、近畿大学の柴田瑞穂准教授の手にかかれば本格的な研究となる。ロボットに関して「やればできそうだが、まだ誰も本格的に実験したことのない手法」を、まじめに評価、検討するのが、柴田准教授のスタンス。元は思いつきでも、検証してみれば期待以上の可能性を見いだすこともある。


ロボットを真空パック



水中を進む仕組みは魚のひれの動きをまねた


 用いる技術や材料は、食品包装用の真空パックと、半導体やスーパーコンピューターなどの冷却液に使うフロリナート。そしてバッテリーやセンサー、モーターなど簡易な電気回路を搭載したユニット。比較的入手しやすいものばかりだ。
 近畿大学の柴田瑞穂准教授は、これらを組み合わせ、水中ロボットを作り上げた。食品包装用の厚手のビニール袋にユニットとフロリナートを入れ、真空パックする。フロリナートが緩衝材となって水圧からユニットを守り、魚の動きをまねたアクチュエーターで水中を進むことが確認できた。



簡単に再パッキングできる


 より実用的な用途として、水中で使えるロボットハンドやセンシングユニットが考えられる。「簡易ではあるものの、非常に低コストで防水性や防じん性を得られるのがメリット」と柴田准教授は力を込める。簡単に真空パックのやり直しや追加ができるのも魅力だ。水滴やちりの多い現場でロボットを使う時に、要所を保護するなどの使い方も期待できる。
 最大の課題は、真空パックすると外部との接触が断たれる点だ。例えば記録したデータの転送や、バッテリーの給電のために有線でつなぐことができない。「無線技術があるが、信頼性の面で一歩及ばない」と柴田准教授は指摘する。解決のポイントとなるのは、外部と接続する部分のインターフェース。「今後は企業との共同開発も視野に入れて、用途や改良を検討したい」と話す。


(ロボットダイジェスト編集部 松川裕希)


柴田瑞穂(しばた・みずほ)

2006年立命館大学理工学研究科総合理工学専攻修了。08年立命館大学理工学部ロボティクス学科助教、11年近畿大学工学部知能機械工学科講師。13年同ロボティクス学科講師、近畿大学次世代基盤技術研究所先端ロボット工学研究センター所員。18年近畿大学工学部ロボティクス学科准教授。「ワールドロボットサミット」ものづくり競技委員会委員。福岡県出身の43歳。