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[気鋭のロボット研究者vol.9]人の手を超える機能をロボットで【後編】/神戸大学大学院横小路泰義教授


本記事はrobot digest 2019年11月7日掲載記事を転載しております。

 

 

産業用ロボットに人と同等以上の機能を持たせることを最終的な目標に掲げる横小路教授。後編では、人の手のように何でもつかめるロボットハンドの研究を紹介する。目指したのは、さまざまな形状とサイズの部品で構成される製品の組み立てを、一つのロボットハンドでこなす汎用性だ。


4本指のハンドで組み立て作業

独立した4本のスティック状の指を持つ、汎用のロボットハンド

 

 ロボットハンドはつかむ対象物に合わせて現場ごとに開発されることが多いが、最近は少量多品種の生産が当たり前になりつつあり、汎用性の高いロボットハンドが求められている。

 横小路教授が研究の目標に設定したのは、一つのロボットハンドで機械製品を組み立てること。機械製品を組み立てるには、さまざまなサイズや形状の部品を、決められた姿勢で正確につかむ必要があり、補助器具(ジグ)なしで行うのは非常に難しい。

 現在最も有力なのは、4本のスティック状の指を平行に配置したロボットハンドだ。指が1本ずつ独立して直線的に可動する。実験では、異なるサイズの歯車や複雑な形状のシャフト(棒状の部品)などで構成されたギアユニットの組み立てにも、ジグを使わず一つのロボットハンドだけで成功した。
 「ジグを使わない組み立て技術は、少量生産に役立つだろう」と横小路教授は話す。

 

長所を生かして人以上の機能を

 ギアを軸に通すには、0.1mm以下の位置決め精度が求められる。人の手では軸の先端を穴に当てながらはまり具合を探るしかないが、「位置決め精度の高さなどロボットの得意な面を生かせばスムーズな軸挿入ができ、ここに人間の手の機能を超えられる可能性がある」と話す。

 

ギアユニットを組み立てる様子(横小路教授提供)

 

 「現状のハンドではコストが高く構造もやや複雑だが、実際の現場ではもう少し扱う対象物の種類が限られることも多い。現場に応じて簡素化してコストを下げれば、誰でも使えるロボットハンドになる」と実用化に自信を見せる。


――終わり
(ロボットダイジェスト編集部 松川裕希)

 

横小路泰義(よここうじ・やすよし)
神戸大学大学院 工学研究科機械工学専攻 教授
1988年京都大学大学院博士課程中退、京都大学工学部オートメーション研究施設助手。92年機械工学科助教授。2007年機械理工学専攻准教授。09年神戸大学大学院工学研究科機械工学専攻教授。18年日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス部門功績賞受賞。14~18年レスキューロボットコンテスト実行委員長。ワールドロボットサミット2020ものづくり競技委員会委員長。1961年生まれ58歳。大阪府出身。