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[気鋭のロボット研究者vol.16]光の反射を応用した触覚センサー【前編】/名古屋大学大学院 大岡昌博教授


本記事はrobot digest 2020年12月16日掲載記事を転載しております。

 


大岡教授の研究テーマは「触覚」。①センシング②人の知覚を定量化して測定する学問の心理物理学③仮想現実――の3つの分野を組み合わせながら、人とロボットの触覚の研究に取り組む。ロボット関連では、光の反射を応用した3軸触覚センサーを開発した。「電気的なノイズに強いのが特徴」と話す。


微妙な力加減が求められる作業を自動化


3軸触覚センサーの構造(提供)


 大岡教授は30年以上にわたり、3軸触覚センサーの研究開発に取り組んできた。
 垂直方向にかかる荷重の力に加え、水平方向の2軸にかかるせん断力を検知でき「部品の組み付けなど、微妙な力加減が求められる作業を自動化するのに役立つ」と説明する。


 触覚センサーには、タッチパネルなどで使われる「静電容量式」などのさまざまな検知方式があるが、大岡教授は光の反射を応用した触覚センサーを開発した。
 光を通すドーム状のアクリル板と、円筒状の長い突起(円柱触子)と円すい状の4つの突起(円すい触子)を上下にまとめたプローブ(探触子)を使う(=写真)。物に触れるなどして長い突起に力が加わると、4つの突起がアクリル板に接触する。その時の光の反射の度合いを画像センサーで読み取り、画像処理をして3軸方向の力を測定する。


 「多くの触覚センサーは電気的なノイズに弱いが、この方式は光の反射を使うため、ノイズに強いのが特徴」と語る。


人の指の第一関節のサイズまで小型化


指先にある赤い部分が3軸触覚センサーだ


 画像センサーとアクリル板の間には一定の距離が必要で、触覚センサーが大型化する課題があった。
 そこで大岡教授は画像処理の機能を駆使し、長い突起がなくても3軸方向を測定できる触覚センサーを新たに開発した。従来は35mmの大きさだったが、人の指の第一関節のサイズまで小型化した。

 

 現状は触覚センサー一つにつき、高額な画像センサーが一つ要る。
 そのため、今後は「コストをいかに削減するか」との視点で研究を進める考えだ。


――後編につづく
(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)

 

大岡昌博(おおおか・まさひろ)
1986年名古屋大学大学院博士課程修了、富士電機総合研究所入社。92年名古屋大学工学部講師、93年静岡理工科大学助教授。2003年名古屋大学大学院情報科学研究科助教授、07年同准教授。09年から現職。最近は触覚が錯覚を起こす現象のメカニズムを解明する研究にも注力する。趣味は音楽鑑賞。愛知県出身の62歳。