本記事はrobot digest 2022年3月30日掲載記事を転載しております。
南山大学の中島明教授は、人のような器用さや巧みさを備えたロボットの実用化を目指し、多指ハンドや卓球ロボットの研究に力を注ぐ。後編では卓球ロボットについて取り上げる。人と何回もラリーを続けられる卓球ロボットを開発するため、中島教授は画像センシング技術やロボットの制御技術の研究に努める。
「ダイナミックな巧みさ」を追求
「『ダイナミックな巧みさ』を実現したい」と話す中島明教授
中島教授はさまざまな物体を把握できる多指ハンドに続き、2008年ごろから卓球ロボットの開発に本格的に着手した。人とラリーを繰り返せる卓球ロボットを目指し、画像センシング技術や制御技術の研究に取り組む。
「相手が打ったボールの軌道を予測し、最適な場所でボールを正確に打ち返すようロボットを制御する。卓球ロボットで実現したいのは、こうした『ダイナミック(動的)な巧みさ』」と説明する。
ロボットが相手の陣地にボールを打ち返すには、いくつかの課題をクリアしなければならない。まずは相手のラケットにボールが当たった瞬間のボールの位置や回転速度、球速を把握する必要がある。中島教授は画像センサーで取得したこれらの情報を、空気抵抗も加味した運動方程式に当てはめ、ボールの軌道を物理的に予測するという。
人とラリーを繰り返す卓球ロボット
だが、ボールの軌道が分かったとしても、相手の陣地に正確にボールを返さなければラリーは続かない。そのため、中島教授はボールとラケットの跳ね返り運動を表すモデル方程式を導き、それに基づいてロボットがボールを打ち返す時のラケットの位置や角度、ロボットの姿勢などを最適に制御する技術も並行して研究している。
「現状は人がスマッシュを打たない限り、複数回は継続してラリーできる」と語る。
今後はラリーだけではなく、ロボットが卓球で人に勝つための戦術や戦略も検討する考えだ。
――終わり
(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)
中島 明(なかしま・あきら)
2005年3月名古屋大学大学院工学研究科電子機械工学専攻博士課程修了、同工学研究科機械理工学専攻助手。07年4月同助教。15年4月南山大学理工学部機械電子制御工学科准教授。20年4月同教授、21年10月から現職。趣味は読書と合唱。石川県出身。1977年生まれの44歳。