SEARCH
MENU

[気鋭のロボット研究者vol.21]初見の道具を器用に扱う【前編】/青山学院大学 田崎良佑准教授


本記事はrobot digest 2021年10月27日掲載記事を転載しております。


田崎良佑准教授は自身の研究室を立ち上げる時に「知技能ロボティクス研究室」と名付けた。知能と技能を兼ね備えたロボットシステムの開発を目指す。「人は知恵を身に付けながら、感覚や技を得て成長する。機械もそのように発達や成長できればロボット分野は大きく発展する」と未来を描く。


「匠の技」をロボットに

 田崎准教授は人の「匠の技」を知能と技能に分けて考える。
 知能を「経験と知識を基にした判断行動」、技能を「感覚で得た情報を応用する臨機応変さ」とし、人工知能(AI)やセンシング技術を駆使して、ロボットに実装する。

 


初見の道具も使いこなす知技能ロボットシステム


 これを体現するのが、ほうきやハケなどの軟らかい道具を器用に扱うロボットシステムだ。どんな特徴の道具でも、初めて扱う場合でも、過去の経験を生かして作業するロボットを研究している。
 人がロボットに道具を与えると、3次元画像センサーで形状を読み取って道具の種類を認識し、適切な動作を導く。例えば「ほうきは掃き掃除に使う物」とロボットが連想して、掃除の動きを自律的にプログラムして、すぐに動作する。


 次に把持部にある力覚センサーなどを駆使して、ほうきの柄の硬さや、毛の長さと軟らかさを把握。その結果をもとに、毛を適切に押し付けながら床に沿わせて、ゴミに見立てた対象物を回収する。


鋳物の注湯作業にも


ワインボトルから液体を注ぐロボットと田崎良佑准教授


 また、鋳物の注湯作業に使うロボットも開発する。それにもAIと「人工技能」を組み合わせる。
 ロボットが注湯する場合、溶けた金属を入れた取鍋(とりべ)の注ぎ口の位置を変えず、ほどよい流量を保つように調整しながら傾けて砂型に注ぐ。その際に流体力学や温度で変わる金属の粘性も考慮して注ぐのが理想だ。


 注湯ロボットの前段階として、まずはワインボトルの注ぎ口を定位置にして複数のグラスに液体を注ぐ制御システムを開発した。
 「鋳物メーカーなどと協力して、自動化が難しい変種変量の生産ラインでも器用に動くロボットの実装を進めていく」と話す。


(ロボットダイジェスト編集部 西塚将喜)


田崎良佑(たさき・りょうすけ)

2004年小山工業高等専門学校機械工学科卒。06年京都工芸繊維大学工芸学部機械システム工学科卒。08年豊橋技術科学大学大学院生産システム工学専攻修士課程修了、11年同電子・情報工学専攻博士課程修了後、研究員を経て12年同大学機械工学系助教。19年から青山学院大学理工学部機械創造工学科准教授(現職)。日本鋳造工学会で各種幹事などを歴任。豊橋技術科学大学在籍時に鋳造の奥深さに魅了され、その加工技術の追究をライフワークに掲げる。1983年栃木県生まれの38歳。