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活動報告2023:ソフトロボティクス研究専門員会


日本ロボット学会 ソフトロボティクス研究専門員会(SIG Soft Robotics)
2023年活動報告


2023年9月5日
委員長:新山龍馬


概要

日本ロボット学会ソフトロボティクス研究専門委員会は、日本国内の関連研究者による学際的な研究コミュニティの構築と、ソフトロボティクス分野のさらなる振興のために2017年4月から活動している。研究会やワークショップ/シンポジウムの開催のほか、関連学会にてオーガナイズドセッション(OS)を実施している。2022年12月から2023年8月までに、計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会(SICE SI)2022においてOS「ソフトメカニズム」を、日本機械学会ロボティクスメカトロニクス講演会(Robomech)2023においてOS「ソフトロボット学/フレキシブルロボット学」を実施した。
活動の中から、Robomech 2023の期間中に開催したシンポジウムを下記で詳しく紹介する。


シンポジウム開催報告

日本機械学会ロボティクスメカトロニクス講演会(Robomech 2023)期間中の2023年6月28日にシンポジウム「 “いいかげん”を科学するソフトロボット学4」を開催した。このシンポジウムは、ハイブリッド形式とし、名古屋国際会議場での対面開催と並行して、zoomおよびYouTubeライブでも配信を行った。なお、この企画は科研費新学術領域研究「ソフトロボット学」との共催で、コーディネータ:望山洋(筑波大学)、・安藤 潤人(立命館大学)の体制で実施された。
今回のシンポジウムは「脱力(DATSURYOKU)」をキーワードに、トピカル講演2件、関連研究を進める若手研究者による講演3件で構成した。各講演の概要をまとめる。

 

「DATSURYOKUを実現する人間拡張技術」村井 昭彦(産業技術総合研究所)

日常的マルチモーダル計測、ヒトのモデル化・解析、リアルタイム介入などの多角的な研究アプローチについてお話しいただいた。村井博士は「DATSURYOKU」を国際的テクニカルタームとして提案している。非侵襲的な運動力学的介入の例として、歩容のフェーズに合わせてリアルタイムでトレッドミル速度を制御することで伸長反射を抑制し、歩行時の負荷軽減を目指す研究事例などを紹介いただいた。

 

「2足ロボットの強靭な身体と脱力の学習」佐野 明人(名古屋工業大学)

ロボットの身体は強靭であることが重要であるという考えのもと、その中でやわらかさや脱力を実現することについて豊富な事例を紹介いただいた。受動歩行や、受動部分の多い走行ロボットを動画で紹介いただくとともに、深層強化学習を利用したロボットの運動学習に関する新しい取り組みについて論じていただいた。

 

「鳥類の首に学ぶ柔軟マニピュレータの設計とその活用法」中野 風志(東京大学)

身体性の観点から、知能の基盤となるやわらかい機械の探るという大目標のもと、生物を規範としたアプローチについてお話いただいた。ダチョウの首を規範とした超多関節マニピュレータの制御や、それを使ったセンシングの試みについてご紹介いただいた。

 

「脱力可能なヒューマノイドの身体と制御」河原塚 健人(東京大学)

広い観点でやわらかさについての論考と、主にヒト型ロボットにおける実践例を多数お話いただいた。複雑で脱力が可能なロボットアーキテクチャとして、モータを使ったワイヤ駆動筋骨格ロボットの事例では、ある関節の駆動をオフにすることや、拮抗関係にあるワイヤ(筋アクチュエータ)の張力を自律的に調節する手法などを紹介いただいた。

 

「やわらかさによる計算:ソフトロボットと機械学習と数理の連関」明石 望洋(京都大学)

情報処理は制御器だけでなく身体や環境に「外注」されているという考えのもと、その実装として物理リザバー計算による空気圧人工筋の制御などについてお話いただいた。物理リザバー計算を用いることで、精度良くソフトアクチュエータの動的状態を推定できるだけでなく、時間発展の分岐構造をやわらかい身体に埋め込める可能性についても論じていただいた。


シンポジウムの最後には、講演者5人によるパネルディスカッションを行った。また、ウェブ上および会場からの質問も寄せられ、議論が広がった。


以上