日本のロボット研究の歩みHistory of Robotics Research and Development of Japan1999Integration, Intelligence, etc.〈インテグレーション・知能ほか〉分散視覚システムによる移動ロボットの誘導
十河 卓司 | 京都大学 |
木元 克美 | 京都大学 |
石黒 浩 | 京都大学 |
石田 亨 | 京都大学 |
この論文は、ロボット研究開発アーカイブ「日本のロボット研究開発の歩み」掲載論文です。
本研究では,屋外のように複雑な環境における移動ロボットの誘導を可能とするインフラとして,分散視覚システム(図1)を提案した.このシステムは複数の視覚エージェント(図2)と,それらを接続する計算機ネットワークによって構成され,ロボットが必要とする様々な視覚情報を提供する.
能動視覚の研究で議論されているように,視覚情報に基づいて行動するロボットの問題は注意制御にある.本研究では,ロボットのタスクは局所的な環境と密接に関わるという設計方針に基づき,分散視覚という従来の研究とは異なるアプローチを取ることで注意制御の問題を解決した.すなわち,ロボットの周囲に位置する視覚エージェントで環境を観測し,適切な視覚情報を選択することで注意制御を実現できる.
本研究では,実際に屋外環境を忠実に再現した街の模型上にシステムを構築した.各視覚エージェントはオペレータに教示されたロボットの誘導経路を記憶しており,それらを統合することでロボットの誘導を実現する.また,例えば図3, 4は,環境内を移動するロボットを観測することで検出された道路領域を示しているが,このように各視覚エージェントが持っている局所的な環境の情報を用いることなどにより,これまで困難であった,複雑な屋外環境における視覚情報に基づくロバストなロボットの誘導を実現できることを確認した.
分散視覚システムは,ネットワークやセンサなどを組み合わせてできる,新しいロボットのためのインフラである.将来的には,これらを統合した新しい情報システムとして,ロボットに限らず人間を含む様々な実世界エージェントに情報を提供する知覚情報基盤(PII: Perceptual Information Infrastructure)[3]へと発展していくものと考えている.
2001年 第15回日本ロボット学会論文賞受賞