日本のロボット研究の歩みHistory of Robotics Research and Development of Japan1997Locomotion〈ロコモーション〉路面形状に偏差のある環境に対する適応能力を持つ2足歩行ロボットの開発
山口 仁一 | 早稲田大学 |
木下 昇 | 三菱電機(株) |
高西 淳夫 | 早稲田大学 |
加藤 一郎 | 早稲田大学 |
この論文は、ロボット研究開発アーカイブ「日本のロボット研究開発の歩み」掲載論文です。
高齢化社会を目前にして高齢者,病人の介護や対人サービスの代行など日常生活において何らかの支援を必要とする人の数が増大している。こうした状況を解決する手段の一つとして,人と共に働き,人に種々のサービスを提供し得る人間型2足歩行ロボットの重要性が指摘されている。
1973年,早稲田大学理工学部生物工学研究グループにより,世界初の人間型知能ロボットWABOT-1を開発し,1984年,世界初完全動歩行を実現した。
本研究はWABOT-1の延長線上での研究であり,様々な環境に適応できる人間型2足歩行ロボットの開発を目指している。2足歩行ロボットを路面形状に偏 差がある環境に適応させるために,着地路面の傾斜を動歩行中において測定できる着地路面検知システムを開発し,着地路面情報を用いて脚の軌道制御を着 地路面に対して実時間で行う閉ループ制御系を構成する歩行制御方式を考案した。非平坦路における設定ZMPを決定する際には仮想路面の概念を導入した。
また,高速な歩行および外力下での歩行には3軸モーメントを補償する歩行制御方式が考案された。これらにより,2足歩行ロボットが環境に対する適応が可能となった。さらに本WL-12シリーズの研究はWABIANの研究につながり,より人間に近い情報の処理や歩行が可能ともなっている。
第11回(1997年)日本ロボット学会論文賞受賞