日本のロボット研究の歩みHistory of Robotics Research and Development of Japan2000Locomotion〈ロコモーション〉脚車輪複合移動体 ローラーウォーカー
遠藤 玄 | 国立大学法人 東京工業大学 |
広瀬 茂男 | 国立大学法人 東京工業大学 |
この論文は、ロボット研究開発アーカイブ「日本のロボット研究開発の歩み」掲載論文です。
不整地で高い踏破性を発揮する脚型移動ロボットと,硬平地で高速な移動を実現する車輪型ロボットの両方の特質を兼ね備えた脚車輪複合移動体が注目されている.従来研究のほとんどは歩行機械の脚先あるいは胴体に能動車輪を付加したものであった.能動車輪には駆動系と操舵系のアクチュエータが付加されるため過大な質量になりがちで,その結果,歩行モードにおいては脚を軽快に振ることができず,歩行機械としての特性は大きく限定されていた.
提案するRoller-Walkerはこの問題を解決するため,歩行機械の足裏を倒すとそれが受動車輪となり,脚を動かしてローラースケートのように推進する機構を有している.このような構造であるためRoller-Walkerの脚には,車輪走行するための付加機構が実質的にほとんどなく軽量である.また歩行のための駆動系が車輪移動にも使用されるため,車体全体としても余分な自由度を装備せず軽量化できることから,Roller-Walkerは脚運動性と車輪運動性の両方とも十分な性能を発揮することが出来る.受動車輪で推力を出し操舵もするための脚の制御法は世界的にも全く検討されていなかったため,Roller-Walker特有の運動生成のための脚軌道を導出した.
開発したRoller-Walker実験機は,普及型4脚歩行機械TITAN-VIIIの脚先に足裏兼用の受動車輪を装備し,足首ロール角度可変機構を付加している.高さ0.25m,左右幅0.6m,前後0.5m,全質量24kgである.ハイブリッド化に伴う重量増加はTITAN-VIII本体の7%に抑えられている.車輪のキャンバー角はワイヤーを用いた平行リンク機構により,脚の姿勢に関わらず常に一定に保たれる.また受動車輪からの床反力はウォームギアにより構造的に支えられている.
不整地ではTITAN-VIII同様歩行を行い,硬平地上では脚軌道を左右対称に周期的に動かすことにより推進する.高速推進実験では歩行時の10倍を越えるおよそ2.2m/sの速度で直進できることを確認し,その時の移動効率は歩行時の8倍を達成している.
2002年 第16回日本ロボット学会論文賞受賞
2014年 Advanced Robotics Best Paper Award受賞