日本のロボット研究の歩みHistory of Robotics Research and Development of Japan1992Locomotion〈ロコモーション〉通信を用いた分散的管理に基づく複数の自律型ロボットの協調的作業分担決定手法
淺間 一 | 理化学研究所 |
遠藤 勲 | 理化学研究所 |
尾崎 功一 | 宇都宮大学工学部 |
松元 明弘 | 東洋大学工学部 |
石田 慶樹 | メディアエクスチェンジ株式会社 |
この論文は、ロボット研究開発アーカイブ「日本のロボット研究開発の歩み」掲載論文です。
完全な環境情報が得られない,あるいは動的にタスクが発生するような状況で柔軟に作業を行えるようなロボットシステムを実現するには,状況に応じてシステムの構造を動的に変えられるような自律分散型アーキテクチャが有効である。本研究では,複数の自律移動ロボットが,相互に無線通信を行いながら,作業や環境の状況を分散的に管理し,それに基づき協調的に作業分担を決定する手法を提案した。
本研究のポイントは,
- 複数のロボットの行動形態を並列的単独行動と協調行動に分類したこと
- 各ロボットが作業状況をブロードキャストすることによって,すべてのロボットが分散的に作業や環境の状況を管理できるようにしたこと
- 並列的単独行動において管理している状況に応じて作業分担を決定,通知することで競合を防止したこと
- 協調行動では,協調の委託を受託より優先させたことで,デッドロックを回避したこと
軽い荷や重い荷が混在する環境での荷片付け作業を例に取り,実際の無線通信システムと動作シミュレーションを組み合わせた実験によって,動的に行動形態を切り替えながら競合やデッドロックを生じることなく作業分担を自律的に決定しながら作業を達成できることを示した。作業実行中に協調が必要なタスク(重い荷)を発見しても,チームの組織化を動的に行い,状況に応じて柔軟に対応できる点が特徴である。また,並列的行動による効率の向上,協調行動による高度な作業の達成を確認した。
なお,自律分散型ロボットシステムにおける複数自律移動ロボットの協調動作に関しては,本研究のみならず,自律分散型ロボットシステムの概念の構築[5,8],システムの最適機能分散を決定するための評価手法の開発[1,6],多数台ロボット間の無線通信システム[3,9]の開発を行うとともに,実際に複数台自律移動ロボットによる相互衝突回避[4,11],同期動作[7],協調チーム組織化[2,10]などの協調動作を実現した。さらに,最終的にはこれらの成果を統合し,実際に複数台の自律型移動ロボットによる荷片付けを達成した[12]。図1は,無線通信を用いた複数台自律移動ロボットの協調動作による荷片付け動作の様子である。
実験画像:無線通信を用いた複数台自律移動ロボットの協調動作による荷片付け動作