日本のロボット研究の歩みHistory of Robotics Research and Development of Japan2000Locomotion〈ロコモーション〉人間型ロボットの研究
吉野 龍太郎 | 本田技研工業株式会社 |
この論文は、ロボット研究開発アーカイブ「日本のロボット研究開発の歩み」掲載論文です。
ホンダは1986年に自動車の次なる商品としてコンシューマ・ロボットの研究を開始した。コンシューマ・ロボットのあるべき姿を描き、人間型ロボットをターゲットとした。当時、人間型ロボットの技術課題のなかで最も困難が予想された2足歩行技術の完成を目指し研究開発をスタートした。
筆者らは路面の凹凸などの不整地に対する歩行の安定化研究に着手した。まず,静歩行での凸部,斜面踏破を試みた。これは足首のコンプライアンス制御と傾斜フィードッバク制御により安定化を実現した。足首のコンプライアンス制御は動歩行での遊脚の着地衝撃を吸収する技術へと発展した。
1990年代初頭の動歩行の研究では、傾斜センサから各リンクの絶対角と,絶対角加速度を推定し,状態フィードバックにより安定化を図る技術を開発した[1]。しかしこの方法では関節をトルク制御していたため,摩擦トルクによる応答遅れやノンコロケーションによるスピルオーバー振動が発生し,制御系の応答上げることができず人間並みの歩行速度を実現することが困難であった。そこで高速な関節角サーボで外乱を抑制し、傾斜センサによる安定化制御をそのサーボ系に加えることにより,時速3Kmの人間並の高速歩行が可能となった[2]。
1993年より人間型ロボットの研究課題として作業について研究を進めた。人間型ロボットにふさわしい分身ロボットというコンセプトから,力覚帰還型マスタースレーブアームの研究を始め,7軸冗長アームのテレオペレーション・システムを完成させた。さらに人間のように道具を操れる器用なハンドが人間型ロボットに必須と考え,独自の力覚センサを考案し多関節多指ハンドを開発した。このアーム・ハンドによりナットの取り付け作業に成功した[3][4]。
2001年 第15回日本ロボット学会論文賞受賞