日本のロボット研究の歩みHistory of Robotics Research and Development of Japan2010Locomotion〈ロコモーション〉センサレスで精密高負荷トルクを制御可能な空圧・電動ハイブリッド駆動外骨格ロボット
玄 相昊 | ATR 脳情報研究所 / 立命館大学 |
野田 智之 | ATR 脳情報研究所 / 立命館大学 |
水野 剛 | ATR 脳情報研究所 / 立命館大学 |
森本 淳 | ATR 脳情報研究所 / 立命館大学 |
この論文は、ロボット研究開発アーカイブ「日本のロボット研究開発の歩み」掲載論文です。
力制御は因果律から言って位置・速度制御の下位にあたり,人間や環境と親和性ある物理的インタラクションを実現する上で鍵となる技術である.とくに近年、不整地作業ロボットの移動技術や、外骨格ロボットのアシスト制御技術等、ロコモーションにおいてもその力制御の重要性はますます増加している.
しかしながら、力やトルクを直接操作でき、かつ実用的な大推力・トルクを発生できるアクチュエータはダイレクトドライブモータや、ドイツKUKA社/DLRのトルクセンサ内臓型アクチュエータ等、ごく限られている。
開発者らは、歩行や姿勢制御のアシストやリハビリを目的としたトルク制御可能かつ軽量な外骨格ロボットの実現を目指し、近年ロボットのアクチュエータとして活発に利用されている空気圧ゴム人工筋に小型サーボモータを組み合わせた「空気・電動ハイブリッド駆動技術」を搭載した下半身外骨格ロボットを実現した。
アクチュエータ選定方法や負荷の配分方法は用途に応じて決まるものであるが、基本的には、抗重力トルク等の低周波であるが大きい負荷を空気圧人工筋で発生し、バランス制御など一時的に要求される高周波な運動負荷をサーボモータで発生するという考え方が有力である。このように負荷を分担することの最大のメリットは、モータを小型化できる点である。モータは減速比の大きいギヤを用いなければ、指令電流と発生トルクがほぼ正確に比例する。ロボットに用いられている小型モータは瞬間的には大きなトルクを発生できる点がポイントである。モータが瞬発的にトルクを発揮している間に、空気圧人工筋が目標トルクに追いつけるようにアクチュエータを選定すれば、望ましいトルクを精度良く発揮し、駆動部を軽量化できる。
提案技術開発は、実際に人間の体重を100%支えることが可能な外骨格ロボット1号機および、出力と自重を半分程度まで減らした2号機に適用された。文献と添付ビデオに示すように、これまで、自律重力補償制御、自律バランス制御、健常者アシスト制御等に成功しており、現在、EMGやEEG等、生体情報を活用した運動推定と制御アルゴリズムとそれを応用したリハビリ制御等を研究中である。
なお、空気アクチュエータとモータを並列に組み合わせる技術は2007年発表の先行技術であるが、外骨格ロボットへの応用例とその有効性を示したのは本研究が世界初である。ヒューマノイドロボットなど、軽量歩行ロボットへの適用も有効である。