SEARCH
MENU

日本のロボット研究の歩みHistory of Robotics Research and Development of Japan2011Locomotion〈ロコモーション〉環境認識、歩容計画、歩行制御の統合によるヒューマノイドの自律移動


西脇 光一産業技術総合研究所
Joel Chestnutt産業技術総合研究所
加賀美 聡産業技術総合研究所

この論文は、ロボット研究開発アーカイブ「日本のロボット研究開発の歩み」掲載論文です。

オンラインでの地形形状計測、オンライン歩容計画、未知不整地に頑健な歩行制御の統合により、予め地形を知らない環境における等身大ヒューマノイドの自律移動を実現した。地形形状は、腰部に搭載したスキャン型レーザ距離センサにより、ロボット近傍の床面高さ地図を生成することにより、ロボット周囲数mの範囲内で、精度数cmの形状地図をオンラインで逐次構築できるシステムを実現した。歩容計画は、探索的手法によりゴールに到る着地位置列を求めた。

1歩程度の時間である800msの間に25000程度の着地位置を評価することにより、オンラインでの経路計画、更新を可能とした。オンラインで生成された地図を用いて、着地位置候補の傾斜、凹凸等を評価し、コストを割り当てるとともに着地の可否を判定した。また遊脚足部の通過領域についても地図を用いて評価することにより、着地高さの相対変化や中間の障害物の評価により、コストの割り当て、実現可否の判定を行った。さらに、地形形状に応じて着地位置候補セットを調整することにより、複雑な不整地においても、探索の分岐の数が極力減少しないように工夫することで、有限な着地位置候補を用いた探索により、不整地においても目的地まで到る経路が計画できるよう工夫している。歩行制御では、主にIMUを用いて推定された実際の運動状態から歩行継続可能な運動軌道を生成し、軌道を実行する際には、生成された運動軌道の位置のレベルでの実現にこだわらず、生成された運動を実現するのに必要な目標床反力及び絶対空間での速度を実現するよう制御する。その結果、生成された軌道から位置は乖離していくが、40msといった周期で実行される軌道生成が、実際の運動状態からの軌道を生成し、床反力及び速度目標を更新する。このようにして、地形形状の想定との差異に頑健なシステムを開発し、数cmといった環境形状計測誤差や路面の変形に対応できる歩行制御系を実現した。地形形状のみからは、本当に通過して良いか不明なこともあるので、オペレータが概略の経路を与えるためのインタフェースを複合現実感技術を用いて実現し、与えられた経路近傍で着地位置列を計画する手法も開発した。