日本のロボット研究の歩みHistory of Robotics Research and Development of Japan1979Manipulation〈マニピュレーション〉人工の手の運動制御に関する研究(第1報~第3報)
内山 勝 | 東北大学 |
この論文は、ロボット研究開発アーカイブ「日本のロボット研究開発の歩み」掲載論文です。
本論文は,著者が東京大学の博士課程学生のときに行った研究をまとめたものである。関連研究として,[1], [2]がある。著者は,工学部産業機械工学科藤井澄二教授の指導の下,研究を行った。
第1報では,研究に使用したロボットアームの機構解析を行っている。使用したアームは6自由度の多関節アームで,藤井澄二研究室の設計に基づき,トキコにより製作された。論文では,順運動学,逆運動学等の解析を行うとともに,アームの特異点の解析を行い,特異点で機構の自由度が退化すること,逆運動学の解の種類が変化することなど,その性質を明らかにした(動画1)。また,特異点の回避ならびに逆運動学の解の種類の変更を考慮に入れた大域的な協調運動の計算法を示した。これにより,ヤコビ行列を用いた分解速度制御では不可能な大域的な協調運動の実現が可能となった。
第2報では,アームの運動制御システムについて述べている。この制御システムは,制御対象の動特性を考慮した動的制御システムで,任意に設定された作業座標系において,軌道制御,力制御,コンプライアンス制御が可能である。このシステムでは,外乱がないとき,軌道制御のサーボ偏差が0となるため,このサーボ偏差をモニタすることにより,外力の動的な検出が可能である。以上の機能により,クランクを回転させる,定規で線を引く,ボールを箱に投げ入れるなど,柔軟かつ動的な作業を実現した(動画2)。なお,この制御システムは,力覚センサを使用せず,アクチュエータのバックドライバビリティを活用し,実現されている。この方法は,関連研究[3]においても採用されている。
第3報では,ロボットアームのビジュアルフィードバック制御について述べている。TVカメラより得られる視覚情報を高速に処理し,運動物体の追跡,予測を行うビジョンシステムを実現し,これをアームの運動制御システムに接続し,並行動作させることにより,ビジュアルフィードバック制御が可能なシステムを構築した。このシステムにより,運動物体の位置,速度からその捕捉位置と時間を予測し,それに対してアームを動かすことにより,物体を捕捉する実験を行った。実験では,転がってくるボールの捕捉を実現した(動画3)。