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日本のロボット研究の歩みHistory of Robotics Research and Development of Japan2011Manipulation〈マニピュレーション〉コンプライアント―パラレルメカニズムを応用した高精度・広動作域位置決め装置


小塚 裕明金沢大学
荒田 純平九州大学
奥田 憲司ブラザー工業株式会社
翁長 明範ブラザー工業株式会社
大野 元嗣ブラザー工業株式会社
佐野 明人名古屋工業大学
藤本 英雄名古屋工業大学

この論文は、ロボット研究開発アーカイブ「日本のロボット研究開発の歩み」掲載論文です。

本研究では,これまでに,従来の回転関節などに代わり,広い屈曲角度をもつばね関節を有したコンプライアント―パラレルメカニズムを提案し,試作機を開発している.同メカニズムは,材料の弾性変形を利用して動作するため,可動部に機械的なガタが生じず高精度な動作が可能であり,潤滑の必要がなく磨耗粉や騒音も生じない.また,一体成形が可能であるため,組み立て精度が高く,簡易かつ軽量で小型な構造を実現できる. これらの特徴を利用し,著者らは,同メカニズムの応用として,クリーン環境下にて光学部品のピッキングから位置決めまで1台で行うことの可能な広い動作域と高精度を有するロボットの開発を目的した.従来,このような作業には直動機構を直列に配列した装置を用いることが多く,同装置は大型で,体積や重量が大きい.また,多くの機械要素により構成されるため,部品数が多く,高コストであり,メンテナンス性にも問題があった. そこで,同作業に応用可能な動作域を有するコンプライアント―パラレルメカニズムのために,著者らは新たに互い違いに溝の付いたばね関節を考案し,解析を行った.同ばね関節は板状をなし,両側面から細かく互い違いに溝の入った形状である.同溝形状により,提案したばね関節は,従来から用いられる板ばね関節などと比較し,広い屈曲角度を有しながらも,屈曲方向以外の回転剛性が高く高精度な剛性特性を有することが明らかになった. 以上のばね関節を用い,並進3自由度を有した一般的なパラレルメカニズムであるDELTAへ応用した位置決め装置を開発した.本装置の解析および実機評価を行い,X・Y軸方向に50[mm]四方の広い動作域を有しながら,繰り返し位置決め精度が平均0.46[μm]で動作することが分かった.また,Z軸方向に剛性が高く,94.3[N/mm]であることが分かった.これらのことから,著者らが提案したコンプライアント―パラレルメカニズムが,光学部品位置決め装置に代表される高精度・広動作域位置決め装置に有効であることが示された.

2014年 第28回日本ロボット学会論文賞受賞

2013年 FA財団論文賞

柔軟ばね関節
柔軟ばね関節
柔軟ばねパラレルメカニズム
柔軟ばねパラレルメカニズム
 

動画


対応論文


小塚裕明,荒田純平,市川翔平,奥田憲司,翁長明範,大野元嗣,佐野明人,藤本英雄:柔軟なばね関節を用いた多自由度コンプライアント―パラレルメカニズムの光学部品位置決め装置への応用

日本ロボット学会誌, Vo.32,No.5,pp.481-489,2014.

小塚裕明:コンプライアント―パラレルメカニズムの研究

日本ロボット学会誌,Vol.34,No.3,pp.180-183,2016.

関連論文


[1] 小塚裕明,荒田純平,奥田憲司,翁長明範,大野元嗣,佐野明人,藤本英雄 ,“コンプライアントメカニズムを用いた円弧ばね関節を有するばね―パラレルメカニズムによる精密位置決め装置の開発”,日本機械学会論文集(C編),Vol.78, No.793, pp.3216-3227,2012.
[2] H. Kozuka, J. Arata, K. Okuda, A. Onaga, M. Ohno, A. Sano, H. Fujimoto,“Compliant-Parallel Mechanism for High Precision Machine with a Wide Range of Working Area,” Proc. Int. Conf. on Intelligent Robots And Systems (IROS), pp.208-214, Algarve, Portugal, Oct. 2012.
[3] H. Kozuka, J. Arata, K. Okuda, A. Onaga, M. Ohno, A. Sano, H. Fujimoto,“A Bio-Inspired Compliant-Parallel Mechanism for High Precision Robot,” Proc. Int. Conf. on Robotics and Automation (ICRA) 2012, pp.3122-3127, May 2012.