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みのつぶ短信第3回「真の裕げ(ゆたげ)とは?」


本エントリーは会長在任中に投稿された記事です。

8月に二回ヨーロッパで開催される国際会議と共同研究先訪問で,初めての地を二箇所回った.中旬にノルウェイの首都オスロで開催されたICDL-EpiRob(発達と学習およびエピジェネティクスロボティクスの国際会議)参加で,レセプションの市庁舎は巨大な壁画が飾られ(写真1参照),女性市長の挨拶から始まった.オスロには,ムンク美術館があり,「叫び」が有名だ.東京の特別展にも行ったが,あまりの大勢の来場者に一人約5秒と定められ,閉口したが,現地オスロではゆったりしており,十分に堪能した.しかしながら,それよりも,隣にあるオスロ大学の植物園の広さとその中にある動物博物館に圧倒された(写真2参照).オスロ市は市民70万弱だが,広大な敷地の植物園や博物館は無料で提供されている.

下旬に訪れたのは,イギリスウェールズの首都のカーディフで人口33万である.カーディフ大学心理学教室との共同研究の打ち合わせで訪れた.カーディフ城の近くに広大な敷地の公園ビュート・パークがあり(写真3参照)1時間あまり園内を散歩した.日曜の昼間で多くの人が訪れているのだが,敷地がそれを上回り,実にのんびりとした雰囲気である.巨木の合間をぬって遊歩道を散策する過程を満喫した.公園内ではないが,市庁舎の隣にある自然史博物館でも恐竜を始めとする多くの展示物があり,宇宙の始まりから,生物の発生,進化などを一巡できた.他にも現代美術の作品が多く展示されており,子どもたちがはしゃぎまわっていた.ここも無料である.維持には相当の費用がかかることは察するに難くない.日本でこれくらいの規模の都市で,市民が気軽に楽しめ,学べ,そして優雅に時を過ごせるところがどれくらいあるだろうか?経済指数では測れない心の豊かさが,ヨーローッパの各地で多くあり,真の裕げ(ゆたげ)とは何かを問うてくる訪問であった.

日本ロボット学会
会長 浅田 稔

 

写真1
写真1:オスロ市庁舎内の巨大な壁画

 

写真2
写真2:オスロ大学植物園内の動物博物館内の恐竜展示

 

写真3
写真3:カーディフ市のビュート・パーク