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みのつぶ短信第14回「機械に法人格が付与されることは技術的にも道徳的にも間違っているのは何故か?」


 これは,前回(第13回)紹介したICRA2020WSの「How will Autonomous Robots and Systems Influence Society? Debate from technological, philosophical, ethical, legal, and social implications perspectives」でのRaja Chatila教授(仏ソルボンヌ大)の講演タイトルである.Rajaはヨーロッパに代表される保守的な立場の代表で明解で分かりやすい内容である.最初に法人格の定義として人間に自然に付与されており,資産の処理,訴訟を受けたり,契約の一部などの法的行為の主体であり,その集合である企業や連合などにも拡張され,最近ではエコシステムにも及ぶ(ニュージーランドの川の例)と説明する.さらに動物も感受性があることで,保護の対象にもなっているとも言う.法人自体の定義はさまざまであるが,権利と義務が共通すると指摘し.中世では,子供が豚の親子に殺害され,裁判にかけられた例をあげ,そこでは.子豚は無罪で母親豚が有罪判決を受けたが,裁判費用は当然だが,豚のオーナーが支払ったそうである.つまり動物は裁判を受ける対象であるが,最終的にはオーナーの責任を前提としている.その観点から,欧州議会の2017の法令を引き合いにだし,考察している.欧州議会の説明では,「ロボットが自律的に判断を下したときに,伝統的な法令でロボットのライアビリティを明確にできない.なぜなら,補償を提供する責任のある当事者を特定し、この当事者に損害を与えるよう要求することができないためである.」とあるが,これが多くの混乱を招いたとRajaは説明する.そして,マルコフ決定過程の強化学習の例を引き出し,また機械学習の例を出して重み付けの変更などの手法を説明し,あらゆる決定に確定的な過程が関与するとし,現状可能かどうかは別として明らかにできると主張する.ロボットと人間の違いとして意思決定主体のエージェンシー,道徳的スタンス,権利と義務をあげた.浅田としては,ロボットの法人格の適用の是非に関しては,Rajaに譲る(一つは現状のロボットがそこまで至ってないことと,現状の法制度の適用困難さの二つの意味で)が,実際,システムが複雑化したときには,確定的な過程として説明可能かは議論の余地がある.浅田はむしろそこが,ロボットの研究としての面白さだと考えている.この議論,以降にも続く.

 

日本ロボット学会
会長 浅田 稔

 

 

http://www.ams.eng.osaka-u.ac.jp/ristex/index.php/eventreports/icra-2020-workshop-video/?lang=en