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RSJ2019学生講演レポート [1N1(OS17):ヒューマン・サポート・ロボティクス(1/2)]


執筆日 2019年9月13日

執筆者 菅宮友莉奈

 

 2019年9月3日から7日にかけて早稲田大学で開催された日本ロボット学会第37回学術講演会のセッション参加レポートをお届けします.今回レポートするのは,学会の最初のセッション,9月3日の午前中に開かれたヒューマン・サポート・ロボティクス(1/2)です.学会に参加したことのない人や,このセッションに参加していない方にも雰囲気が伝わるようにレポート頑張ります!

 

 まずは部屋の雰囲気です.部屋に入ると一番前に座長のお二人です.パナソニックの安藤さんと九州大学の中島先生です.ピンクの紙を見ながら進行について確認している様子でした.最初のセッションということもあり,部屋はやや緊張気味でした.

部屋の雰囲気

 

 続いて発表についてです.ヒューマン・サポート・ロボティクスのセッションですが,8件中6件は『歩行・立ち上がり支援ロボット』でした,また,すべての発表に『介護』という言葉が出てきたので,介護支援についてのセッションという方が直感的かもしれないなと感じました.私も祖父の介護の時に立ち上がり介助や歩行介助をすることがあるので,身近なお話として聞かせていただきました.

 

 さっそく,セッションの内容です.

 1件目は三重大学と岐阜大学のグループによる「膝折れによる転倒防止を実現するロボット膝装具の開発」でした.歩行のリハビリをしている際には,「膝折れ」というガックンとなってしまう現象が起きてしまうそうです.そこで膝折れを検知して事前に補助してくれる膝の装具の開発についての発表でした.膝折れや歩行の様子を續木さんが実際に再現しながらの発表で,手練れだな!なんて思ってしまいました.

續木さんの回の質疑応答

 

 2件目は大分大学の増田先生による「パッシブ型バイオミメティック膝関節の開発」でした.既存の膝関節のサポートは膝の回転中心を1点に固定しているのですが,本来の膝は回転に従い回転中心がずれていくので,回転中心のずれを考慮した膝関節の開発を行っていました.

 3件目は大阪工大と福井工大のグループから原口先生による「前方移乗式起立リハビリテーション支援機器の開発」でした.既存のリハビリテーション支援機器では膝が前後方向に固定されてしまうのですが,理想的な起立では膝が移動するので,膝の移動を許容できるリハビリ支援機器を作られていました.確かに祖父の介護の時も一点を固定して支えると途中で姿勢が崩れてしまうので,複数の点で支えつつ移動しつつが安定感が生まれるな・・・と共感しながら拝聴しました.

 4件目は高知工科大学と高知大学と徳島文理大学のグループによる「インテリジェント歩行支援機による立ち上がり支援方法の検討」でした.実はこの発表をした小田先生は7件目の発表者でもありました.小田先生お疲れ様です.発表の内容は,下肢の筋肉が衰えているが腕の力は衰えていないご高齢の方による利用を前提とした上肢でつかまるタイプの歩行支援機の開発についてでした.

 5件目は理研AIPとパラマウントベッド,千葉大学のグループによる「高齢者の転倒防止のためのベッドサイドロボット」です.こちらは歩行支援ではなく,転倒防止のためのロボットでした.実はベッドから起き上がり歩き出す際に転倒するという事故は結構多いらしいです.そこで,介護士さんが到着するまで話しかけて引き留めるというロボットで斬新でした.試行錯誤(発表者の三宅先生いわくPDCA)していく中でモータを積んだロボットという形ではなく,音声が出る人形の方がよいという話になり,かわいらしいお人形になっていきました.本当は最終版ロボットがあるのですが,「かわいい!」と見とれていたら写真を撮り忘れてしまいました.すみません.

かわいらしいベッドサイドロボット

 

 発表がかなりボリューミーだったので一部実験がカットされてしまいましたが,とても興味深かったです.ロボットからの問いかけは内容が難しいと高齢の方には無視されてしまい,引き留める効果が薄いため,YesかNoで答えられるようなシンプルな質問をするべきというお話は「なるほど」と興味深く拝聴しました.

 もう一つ,面白いなと感じたのは,参加感についての実験です.「2台のロボットがシナリオ通りに会話していると,自分も参加している感じが出る.」という理論に基づき,ロボット2台と被験者という状況での参加感に関する実験をされていました.結果として,参加感も増すということなので,もしかしたら人間同士でも使えるコミュニケーション術なのでは?と感じました.

 続いて6件目は同志社大学による「歩行支援機器の運動特性が被歩行補助者の歩容へ及ぼす影響」です.歩行器の弾性と粘性を変えることで歩行者の歩き方が変わるのかという研究でした.

 7件目は高知工科大学で2度目の登場.小田先生の「坂道歩行時に踵高さが下肢筋肉に与える影響の解析」です.上り坂を歩くときにかかとの高い靴を履いたら楽になるのかな?という内容でした.結果として,楽になる筋肉と辛くなる筋肉があるという話でした.ものすごく興味があったのでたくさん質問させていただきました!後述します.

 ラスト8件目は高知工科大学と瀋陽工大による「生活支援ロボットの運動制御」です.こちらも歩行支援ではなく,活発に活動できない非介護者の生活をサポートするロボットの研究でした.そのための経路計画を行っておりました.日本語があまり得意ではないということで急遽質疑応答は英語でということに!学会っていう感じです.

 個人的に興味があった7件目の「坂道歩行時に踵高さが下肢筋肉に与える影響の解析」について取り上げてご紹介させていただきます.先述したとおり,坂道を上る時にかかとの高い靴を履いたら楽なのかという研究です.実際に上り坂を上り,負荷を計測し,かかとの高低での差を見る,というものでした.測定部位は大腿直筋,大腿二頭筋,内側広筋,腓腹筋,ヒラメ筋の5か所を筋電によって測っていました.5人の被験者で実験されていて,4名には共通の特徴,大腿直筋で負荷が上がり,背面の筋肉では負荷が低減されたとのことでした.

 個人的に「わかるわかる!」とうなずいていたのですが,その理由はハイヒールを履いたときの体感と一致したからです.体の前面の筋肉は痛くなるのですが,後ろ側の筋肉は楽な気がします.それが数値で見えると「私合ってた!」という感じです.つい「ハイヒールを履くのとは違うのですか?」なんて質問をしてしまいました.他にも「かかと高さを上げるために装着した装置の重量はいくつですか?重さの増加分の影響ではないですか?」という質問をしたところ「約200gです.重さの影響も考えて,かかとの高さを調整していないシューズにも200gのおもりを装着して実験しました.」という回答でした.細かいところまで気を遣われているんだなぁと感心しました.

 7件の発表が終わりこのセッションは終わったのですが,議論はまだまだ終わらない様子でした.1件目の續木さんと4,7件目の小田先生が発表後にディスカッションをしていらっしゃいました.(許可をいただいて撮影したのですが少々緊張されていました.スミマセン・・・.)

 

 

 

【講演プログラム】

1N1_OS17:ヒューマン・サポート・ロボティクス(1/2)

 1N1-01  膝折れによる転倒防止を実現するロボット膝装具の開発

○續木 竜次(三重大学),伊丹 琢(三重大学),矢野 賢一(三重大学),青木 隆明(岐阜大学),西本 裕(岐阜大学)

1N1-02 パッシブ型バイオミメティック膝関節の開発

○増田 拓海(大分大学),福岡 賢治(大分大学院),菊池 武士(大分大学)

1N1-03  前方移乗式起立リハビリテーション支援機器の開発

○原口 真(大阪工大),宗京 輝(福井工大)

1N1-04 インテリジェント歩行支援機による立ち上がり支援方法の検討

○瀋 博(高知工科大),王 碩玉(高知工科大),石田 健司(高知大),榎 勇人(徳島文理大)

1N1-05  高齢者の転倒防止のためのベッドサイドロボット

○三宅 徳久(理研AIP),渋川 翔太(パラマウントベッド),正木 治恵(千葉大),大武 美保子(理研AIP)

1N1-06 歩行支援機器の運動特性が被歩行補助者の歩容へ及ぼす影響

○渡部 竣(同志社大学),積際 徹(同志社大学),横川 隆一(同志社大学)

1N1-07  坂道歩行時に踵高さが下肢筋肉に与える影響の解析

○小田 啓介(高知工科大),王 碩玉(高知工科大),瀋 博(高知工科大)

1N1-08  生活支援ロボットの運動制御

○楊 光(高知工科大),王 碩玉(高知工科大),楊 俊友(瀋陽工大)