大仰なタイトルだが,これは,今年の3月18日から科学未来館で始まったロボット特別展「きみとロボット、ニンゲンッテ、ナンダ?」のタイトルの一部である.国内展覧会史上最大規模となる,約90種130点のロボットが大集結!と謳っており,浅田は総合監修を務めた.江間有沙東京大学未来ビジョン研究センター准教授,大澤博隆慶應義塾大学理工学部管理工学科准教授,佐倉統東京大学大学院情報学環教授,長井志江東京大学国際高等研究所ニューロインテリジェンス国際研究機構特任教授にも監修協力をお願いした.開催内容や詳細はWEBページ[1]を参照いただくとして,今回は総合監修からのつぶやきである.
当初,総合監修の打診を受けたときに,展示会の目的をどのように設定するかで,監修協力の先生方,展示企画の方々といろいろ議論し,今回のテーマとなった.開催日の3月18日の一週間まえに国際ロボット展がビッグサイトで開催されており,未来館展示準備の視察も含めて,3月11日に訪問した.国際ロボット展の方は,それこそ,ビジネス志向のプロの展示者,来場者の集まりであり,最新ロボット技術を誇っていた.翻って,未来館のロボット展は,プロ向けではなく,小中高生やその親御さんたちを含めて,AIも含むロボットが一般社会に導入される際の未来のユーザーを対象としていることが,まず大きな違いである.もうひとつは,技術的な内容の展示というよりも,科学未来館での展示ということもあり,「ニンゲンッテ、ナンダ?」という科学的な問いかけを「からだ,こころ,いのち」という流れで,過渡に専門に立ち入らず,ユーザーサイドの視点での位置づけや課題を問うている.だから,我々ロボット研究者向けでないと思わないでいただきたい.技術オタク的な要素が強いと思われているロボット研究者にとってこそ,できれば,ご家族と一緒に来場していただき,教条主義的にロボット技術の薀蓄をたれる前に,家族の方々からの直接の感想を真摯に受け取る絶好の機会と思っていただきたい.ロボット技術の機能性・利便性のみを追求するのではなく,それらが一般社会に導入された際のさまざまな影響を鑑み,設計することが要求されている現在,むしろ,社会の価値観そのものを変える技術のあり方を再考する機会とも捉えていただきたい.もちろん,未来のあり方は一様ではないので,自身が考える未来を重ねて,妄想していただきたい.見学後の感想を聞かせてください.その際,同伴者のご意見も忘れずに...
[1] https://kimirobo.exhibit.jp
浅田稔
元会長,現在,大阪国際工科専門職大学 副学長,及び大阪大学先導的学際研究機構 共生知能システム研究センター特任教授