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みのつぶ短信第11回「ロボットが実社会で活きるべく備えるべし」


本エントリーは会長在任中に投稿された記事です。

 昨今,新型コロナウィルスによるパンデミックによる全世界的な危機的状況の中で,国内では緊急事態宣言により,著しく活動が制限され,経済的な大打撃もさることながら,人類そのものの存続に関する大きな問いかけがなされていると感じるのは浅田だけではないだろう.ヒトという種が地球上で大繁栄し,超高度な人工社会を築きあげてきたにも関わらず,生物という身体的拘束から逃れられず,苦しんでいる姿はある種の矛盾に映るし,また,新たなる試練ともとれる.このような状況下で人工システムがどのように貢献できるであろうか?もちろん,既存技術は現在利用されているが,ウィルスに効くワクチン開発などで,ビッグデータの利用,データの洗浄(ソフト的な意味),既存知識からの洗い出しなど,現代AI が価値を発揮する場面は多々あると思われる.

 しかし,それ以上に,本来導入されるべきは,生物実態のウィルスに侵されない(ソフトウィルスを除いたハードウィルスフリーの)医療ロボットや看護ロボットだろう.患者や医者,看護師などに寄り添い,補助するためのハード的なメカに加え,心的支援可能な対話能力,ネットに接続された膨大なデータや知識に支えられたQ&A に加えて,他者(患者や医者,看護師)の意図の理解や,共感能力が本来発揮されるべきだが,まだ実用に至ってないのが現実だ.その意味で,急務である.これが,人工知能やロボット研究者に突きつけられた課題であり,挑戦である.

 

 最先端技術の社会実装で一番困難な課題は,現場での利用を促す手段だ.事故がおきてから,普段使ったこともないロボットやシステムが急に使えるわけでもない.Fukushimaの教訓でもあるが,解決しているとは言い難い.日常から使いこなしてもらう環境が必要だ.そのためには,まずは日常環境で人間と共生可能なロボットたちをいち早く導入し,それに慣れてもらったインターフェースで今回のような非日常環境(コロナ禍での医療,介護等々)で稼働可能なロボット開発への流れである.RSJ会長として近々に声明を出したいと思う.

 

日本ロボット学会
会長 浅田 稔