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学生編集委員会企画:第39回日本ロボット学会学術講演会レポート(オーガナイズドセッション:視覚・触覚に基づくロボットマニピュレーション(1/3))


2021年9月9日から11日にかけてオンライン開催された第39回日本ロボット学会学術講演会(RSJ2021)のセッション参加レポートをお届けします.今年も新型コロナウイルスは終息せず,現地で参加できなかったのは残念ですが,各セッション見逃し配信(YouTube Streaming)によって,後から色んなセッションを見ることができたのはありがたかったです.


今回レポートするのは,2日目の9月10日の午前に開かれた「視覚・触覚に基づくロボットマニピュレーション(1/3)」というセッションです.最先端のロボットマニピュレーションに関する研究発表が3セッションにまたがって15件行われました.今回,はその中でも1セッション目の5件についてレポートします.全体的に近接覚センサに関する研究が多かったです.


発表順にプログラムを紹介します.


1件目は豊田合成株式会社の島田雅俊様による招待講演「誘電ゴムアクチュエータ”e-Rubber”を用いた触覚伝送技術の遠隔ロボット制御への活用可能性」です.e-Rubberとは高分子誘電アクチュエータ・センサのことで,「電気を力に,力を電気に変換する次世代ゴム」だそうです.e-Rubberはアクチュエータとしては柔軟性や応答性が,センサとしては耐久性や耐荷重性が高いらしく,応用例としては,インソールセンサや心臓手術トレーニングシミュレータ「SupeR BEAT」,ロボットハンドなどがあるようです.いつかスマートインソールを使ってスポーツ練習してみたいですね.
また,e-Rubberを用いたバンドエイド型触覚提示デバイスを開発しているらしく,これにより,水や脈などの柔らかい触感を伝えることができたそうです.体験した人によると結構生々しい感触らしく想像がつかないので,一度体験してみたいです.


2件目は大阪大学のグループによる「触覚機能を内包する高速・高精度近接覚センサ」です.このグループでは,滑りやすさに関係する表面の光沢に注目し,近接覚センサだけで,光沢面の正確な測距・測角,拡散・鏡面反射パラメータ推定を可能にしたそうです.これにより,従来難しかった透明な試験管をロボットハンドによってつかむ,などのタスクもこなせるようになったそうです(図1).

 


図1 反射パラメータを推定する様子


3件目は金沢大学のグループによる「近接覚センサ情報を利用した逐次接触点推定とリアルタイム把持安定性予測」です.物体をどれだけ安定して保持できるか(把持安定性)を評価するには形状・質量・接触点などの事前情報が必要だそうです.未知の物体に対して評価するためにはその情報をセンシングする必要があるらしく,本グループでは,近接覚センサを用いてセンシングした情報を元に評価する手法を提案したそうです(図2).

 


図2 実験の様子


4件目は立命館大学のグループによる「不確定物体把持のための近接覚センサを用いた重心推定制御」です.本グループで開発した接触作業が可能な軽量かつ逆可動性の高いワイヤ駆動のロボットアームを用いて,一度の接触により,不確定物体の重心を動的に推定する手法を提案したそうです(図3).

 


図3 ロボットシステム全体の様子


5件目は富山高等専門学校と富山高等専門学校専攻科のグループによる「近接覚フィードバックを有するバイラテラルマニピュレータによる狭隘空間作業」です.人体への近接覚をフィードバックすることによる疑似的なバイラテラルマスタースレーブマニピュレータを開発しているそうです(図4).このマニピュレータを用いることで,ロボット操作に慣れない人でも,遠隔でロボットを操作できる直感的操作環境を実現したそうです.

 


図4 システムの概要


以上で「視覚・触覚に基づくロボットマニピュレーション(1/3)」のセッションレポートを終わります.この他にも,「ヒューマン・マシン・インタフェース(1/2)」「ヒューマンインタラクション」のセッションについてもレポートしていますので,そちらも是非御覧ください.

 

参考文献
  1. 島田:【招待講演】誘電ゴムアクチュエータ”e-Rubber”を用いた触覚伝送技術の遠隔ロボット制御への活用可能性,日本ロボット学会第39回学術講演会予稿集,2F1-01, 2021.
  2. 小山,万,原田:触覚機能を内包する高速・高精度近接覚センサ,日本ロボット学会第39回学術講演会予稿集,2F1-02, 2021.
  3. 吉田,鈴木,辻,渡辺:近接覚センサ情報を利用した逐次接触点推定とリアルタイム把持安定性予測,日本ロボット学会第39回学術講演会予稿集,2F1-03, 2021.
  4. 辻川,有田,植村:不確定物体把持のための近接覚センサを用いた重心推定制御,日本ロボット学会第39回学術講演会予稿集,2F1-04, 2021.
  5. 佐藤,神田,李:近接覚フィードバックを有するバイラテラルマニピュレータによる狭隘空間作業,日本ロボット学会第39回学術講演会予稿集,2F1-05, 2021.

 

小嶋 麻由佳(Mayuka Kojima)

2020年東京大学工学部精密工学科卒業.現在は東京大学大学院新領域創成科学研究科人間環境学専攻,博士課程在籍.硬軟感知覚や触覚刺激を用いた疑似力覚提示に関する研究に従事.