SEARCH
MENU

第38回日本ロボット学会学術講演会(RSJ2020)開催報告


主催:一般社団法人日本ロボット学会

会期:2020年10月9日(金)~11日(日)

開催:オンライン開催

 

1.オンライン開催の経緯

 2020年3月頃より新型コロナウイルスの感染拡大が進行し,リスク回避が必要となった.さらに,当学会では,業態改革を目指し,オンラインシンポジウム等の小回りの利く新たな事業を模索していた.このような背景から,4月理事会にて,当初計画していた信州大学での学術講演会の開催を2021年度に延期し,浅田会長を実行委員長とした理事会メンバー主体の実行委員会体制にて,新事業の試行としてRSJ2020のオンライン開催を決定した.併せて,感染拡大の影響による各方面の研究開発遅延の可能性を考慮し,学術講演会の開催時期を,当初計画の2020年9月2日(水)~5日(土)から, 2020年10月9日(金)~11日(日)と1か月ほど後に実施することとした.

 

2.実施形態

 会期中,各日程の冒頭では,Zoomウェビナーを用いオンライン特別講演を実施し,続けてZoomミーティングを用いてテクニカルセッションを実施した.さらに,テクニカルセッションに並行して,スポンサーによるオンラインPR企画を実施して頂いた.表彰式については,本会開催前に,各表彰案件のオンライン表彰式を実施し,その記録動画を学術講演会開催と同時にRSJ2020サイトにて公開した.オンライン予稿集については,10月8日(木)より発表論文の一括ダウンロードを可能とし,開催期間中のダウンロード集中を回避し,予稿集搭載サーバーの負荷を軽減するよう図った.

 テクニカルセッションは,従来の口頭発表の形式を再現するように計画した.二人の座長の内一人に口頭指示による発表の進行を図って頂き,もう一人の座長にタイムキーパーをお願いした.基本的には座長の采配でセッションを進めて頂いたが,Zoomミーティングで構成したセッション室の管理,セッション開始時の準備作業については,各室毎に学生アルバイトの管理者を配し,また,各管理者の取りまとめと非常事態に対する対策要員として実行委員からなる監督者を配する体制をとった.管理者及び監督者は,中央大学殿のご厚意により設営させて頂いた管理室に集結し,会期中の全行事の管制を行った.管理室については,十分なスペースをとり,消毒処置を行うことで,コロナ対策を図り感染者の発生を防いだ.
 オンライン講演会の開催は,当学会では初めての試みだったので,事前準備として,9月28日~10月3日にかけて,管理者向けにZoomを用いたセッション管理の訓練を行い,9月29日~10月5日にかけて,訓練済の管理者をインストラクターとして,座長及び発表者に対するセッションの訓練を実施した.発表者の1割くらいはZoom利用未経験者であったが,訓練の成果により,本番のオンラインセッションはスムーズに行われた.

 

3.実施結果

3.1 参加登録,講演実績

 参加登録者総数は1029人,発表件数:515件,セッション数は89件となった.セッションの内訳はオーガナイズドセッションが41件,一般セッションが45件,国際セッションが3件であった.初のオンライン開催ということで,参加登録の伸びが心配であったが,例年の現地開催規模の参加を頂けた.

 

図1-1 参加登録者の傾向分析1

 

図1-2 参加登録者の傾向分析2

 

図1-3 参加登録者の傾向分析3


 図1は,参加登録者の傾向を分析したものである.今年度は開催現地での参加登録受付が無く早期参加登録締め切りを10月4日まで延ばしたため,94%の参加登録が早期申請となった.参加登録者の内49%が非発表者であった.オンライン開催により開催現地への出張が不要になり,聴講者が容易に参加できたと考えられる.グループ別の参加分布に関しては,学校の先生と国公立研究所で44%,企業17%,学生が39%であり,これも例年と同様の傾向であった.各グループ毎の発表数については,学生の発表が300件強,学校の先生の発表が100件強で大半を占めており,学生の口頭発表による訓練の場としての色彩が強い.今回のオンライン開催により参加に伴う移動が不要になり,東京以外の地方からの参加が増えるのではないかと考え,現地開催であったRSJ2019と比較して,地域別の参加分布の変動があるか確認した.結果としては,RSJ2019が早稲田大学での開催のため東京都からの参加が36%と多めであったが,上位都道府県の参加順位は殆ど変わらなかった.このことから,学術講演会への参加は,関東圏と地方開催のロケーションの違いの影響よりも,主要大学,主要研究機関が存在する地域性に依存していると考えられる.


3.2特別講演会

 会期中のテクニカルセッション開催前に,次の3件の特別講演を実施した.

  • 10月9日:特別講演1,「再考(最高?):ロボット學」(大阪大学:浅田稔特任教授)
  • 10月10日:特別講演2「「来歴」論 〜意識,⾝体,創発〜」(米国カリフォルニア工科大学:下條信輔教授)
  • 10月11日:特別講演3「ロボティクスと総合知」(作家:瀬名秀明氏)

 この特別講演は,初日の講師の浅田実行委員長によりプロモートされ,ロボットの心理,意識,倫理に関する先鋭的かつ興味深いご講演を頂き,また熱心な質疑応答を頂いた.
 今回の特別講演は,約1時間という制約の中で行われ,各講演間の相互意見交換も望まれたため,10月29日に「RSJ2020特別講演会の講演者3人による討論会」をオンライン開催した.この特別講演及び討論会については,3人の講師の皆様に,別途,日本ロボット学会誌の講演記事としてご執筆頂くのでご期待ください.

 

図2.RSJ2020特別講演会の講演者3人による討論会

左上:瀬名氏,右上:浅田実行委員長,下:下條教授

 

3.3 スポンサーシップ

 昨年に続きスポンサーシップ制度を実施し,次の12社のスポンサーの皆様に講演会をご支援頂いた.

<プラチナスポンサー>

(株)IHI殿,セイコーエプソン(株)殿,ソフトバンク(株)殿

<ゴールドスポンサー>

(株)キビテク殿,コマツ殿,TechShare(株)殿,(株)日立製作所殿,富士通(株)殿,北京度量科技有限公司殿

<シルバースポンサー>

(株)クレアクト殿,菱洋エレクトロ(株)殿,(株)ロボティズ殿


 スポンサーの皆様には,次のサービスを提供させて頂いた.

  • RSJ2020及びオンライン予稿集サイトでのバナー広告掲載
  • RSJ2020への無料参加
  • テクニカルセッション幕間のCM動画配信
  • スポンサー独自企画のためのZoomアカウント提供
  • 「我が企業のロボット」企画への参加

 

4.アンケート結果

 RSJ2020のオンライン開催について参加者53名の皆様にアンケートのご回答を頂き,図3に示すように,概ね良好な評価を頂いた.また,図4に示すように,オンライン開催の利害得失に関する貴重なご意見を頂いた.

 

図3.オンライン開催に関する評価

 

図4.オンライン開催の利害得失に関する御意見

 

5.最後に

 ウィズコロナの世界になり,学術講演会等のオンライン開催は,世界的な流れとなってきた.今回のRSJ2020オンライン開催は,今後の学会事業のオンライン化にとり大きな試金石になったと考える.初めての試みのため多くの不明要因があったが,実行委員及びプログラム委員各位の頑張りと,オンライン事業を先行実施された他学会のご指導を得て,無事成功裏にRSJ2020を実施することができた.また,今回の実践により,今後のオンライン事業展開のための貴重なノウハウや,ご意見を得ることができた.改めて関係各位のご尽力に感謝いたします.また,コロナ禍の中,セッション管理室をご提供いた中央大学殿に新ためて感謝申し上げます.

(細田祐司 日本ロボット学会 事務局長)