SEARCH
MENU

第137回 サービスロボットと安全性-医療福祉分野-(実施報告)


第137回ロボット工学セミナー実施報告書
サービスロボットと安全性-医療福祉分野-


開催日時 2021年10月20日(水)10:20~17:10
会場 オンライン開催
参加者数 48名
オーガナイザ 打田正樹(鈴鹿高専)
サブオーガナイザ 高椋佐和(株式会社アイシン)

 

1. セミナー概要

 近年医療福祉分野へのロボットの普及は目覚ましいものがあり,人の近い場所(生活空間)でロボットが利用される場面や,人に対して侵襲性があるロボットが利用される場面が増加している.それらのロボットにおいて安全性を確保することは必要不可欠であり,その対策が必須となる.そこで,本セミナーでは,最新の医療福祉ロボットにおける安全性への取り組み事例や対策を紹介していただいた.さらに,医療福祉ロボットを実用化する上で,臨床実験は必要不可欠である場合が多く,その際の一助となるロボット臨床保険に関しても紹介いただいた.
このセミナーでは,医療福祉ロボットの研究開発に携わる方を対象として,実用的な観点から侵襲性が高い手術用ロボット「hinotori」,比較的侵襲性が低いリハビリ用ロボット「CoCoroe」やアシスト用ロボット「HAL」,セラピーロボット「パロ」に関する研究開発事例と安全性に対する取り組み,ロボット臨床保険に関する取り組み等をご紹介いただいた.


2. セミナー報告

2.1 第1話 国産初の手術支援ロボット“hinotori™ サージカルロボットシステム”の開発について

株式会社メディカロイド 北辻博明 様

 2020年に発表された最新の手術用ロボット「hinotori」について開発経緯や開発過程等を含めて安全性に対する取り組みを織り交ぜながら,わかりやすくご紹介していただきました.企業様の目線から,手術用ロボット開発に取り組んだ経緯や過程,医師との研究開発連携等を紹介していただき大変興味深い内容でした.特に,手術用ロボットは侵襲性が高く,完全な安全性が要求されるものであり,それに対する対策は非常に印象深いものでした.普段あまり紹介されることのない内容であり,医療福祉ロボット開発に取り組む研究開発者にとって大変貴重な内容であったと考えます.


2.2 第2話 「メカトロニクス応用と医療機器安全規格に適合したリハビリロボット(装置)の開発」

株式会社安川電機 山中 太 様

 本講演では,リハビリロボット開発に取り組んできた経緯や様々なリハビリロボットの特徴を説明していただくと同時に,それぞれの安全規格とそれへの対応,さらに対応における注意点等を企業様の目線から大変くわしく説明していただきました.特に,リハビリロボットの実用化,医療機器戦略が大変印象的でした.大変複雑で多くの安全規格があり,それに対応するためには膨大なリソースが必要であることがわかりました.この内容は,現在医療福祉ロボットの実用化を目指す方々に大変参考になったと考えます.


2.3 第3話 革新的 装着型サイボーグHALの医療介護分野での取り組み

CYBERDYNE株式会社 安永好宏 様

 実用化が進んでいる装着型アシストロボットHALについて,その原理とビジネス戦略,現在の最新の事例について安全対策を交えて紹介していただきました.HALは世界的に実用化が進んでおり,各国の規格に対する対策,HAL自体の利用や安全性に対する研修等,実用的な対策が進んでいることが印象的でした.また,リハビリ分野での利用も進んでおり,HALを用いることで様々なリハビリ効果が得られることも印象的でした.今後のさらなる発展が楽しみな内容でした.


2.4 第4話 ロボットビジネスの最新動向を踏まえたリスク対策と保険制度

株式会社MOGITATe 北河博康 様

 ロボットの実用化を支援する企業からのご講演で,これまで様々なロボットの実用化に取り組んでこられた経験と,ロボットを取り巻く保険事業について詳しく紹介してただ来ました.医療福祉分野だけではなく,様々なロボットにおけるリスク事例と保険対応等具体的な内容を踏まえてご紹介いただきました.ロボット研究開発自体に取り組んでいるとあまり触れることのない保険事業の視点から,ロボットの実用化やトレンドをご紹介していただいたことが大変印象的でした.またロボットを実用化する上で保険を考慮することの重要性が認識させられる内容でした.第3話までの内容とは趣向が異なりましたが,それらの内容も踏まえてご講演され,大変興味深い内容となっていました.ロボット実用化を考えておられる方々に非常に興味深い内容になったと考えます.


2.5 第5話 アザラシ型ロボット・パロのセラピー効果のエビデンスと世界の医療福祉制度への組込み

産業技術総合研究所 柴田崇徳 様

 アザラシ型のセラピーロボットについて,これまでの取り組みと,普及化戦略,効果について安全対策を交えながら大変くわしく紹介していただきました.特に,エビデンスの取得方法と,それをベースとした定量的評価手法からセラピー効果を立証されていることが大変印象的でした.また,現在のCOVID-19下における対策や効果等も交えてご紹介いただき大変興味深い内容でした.さらに,日本にと世界におけるパロの位置づけの相違点についても印象的な内容となっておりました.セラピーロボットの重要性と,様々な安全対策が必要であることを再認識させられる内容でした.


3. まとめ

 最新の医療福祉ロボットについて,安全性に対する対策を紹介していただきました.様々な医療福祉ロボットについて,安全性の視点から俯瞰してみることは大変貴重であり有意義なセミナーになったと考えます.
質疑応答におきましては,各講演の最後に設けました.大変興味深い内容であったこともあり,全体で55件の質問がありました.

 当日の運営トラブルを避けるために,講師の方と遠隔配信システムの動作確認を行うリハーサルを実施しました.しかし,事後のアンケートにて司会の音声が途切れ途切れなるというご指摘をいただきました.参加者の皆様にはご不便をおかけしましたことをお詫び申し上げます.この原因は司会のPCの不備であることが分かりました.今後のロボット工学セミナーの運営に反映し,より良いセミナーにしていきたいと考えます.


謝辞

 ご多忙の中,講演をご快諾頂いた講師の方々,そして熱心に聴講いただいた参加者の皆様にお礼申し上げます.また,企画・運営におきましては,事業計画委員会の皆様をはじめ,ロボット学会事務局皆様,特に水谷様,村上様,サブオーガナイザーをお引き受けいただいた高椋様(株式会社アイシン)には大変お世話になりました.心より感謝申し上げます.

打田 正樹(鈴鹿高専)