当委員会では本年度、以下の研究会ならびにオープンフォーラムを開催した。
- 2021/01/25 第5回研究会(ロボティクスに関する講演会)
- 2021/03/23 第6回研究会(出産・育児とキャリアの両立どうする?!検討会)
- 2021/06/29 第7回研究会(日本ロボット学会研究専門委員会活動紹介)
- 2021/07/21 第8回研究会(生物学とロボティクスの学際研究)
- 2021/09/11 学術講演会オープンフォーラム「このロボットがすごい2021」
- 2021/09/25 第9回研究会(研究実施のためのtips情報交換会)
- 2021/11/13 第10回研究会(ロボット系学生・若手研究者のための学振と研究生活座談会)
本報告書では第7回研究会および学術講演会オープンフォーラムについて簡単に報告する。
<第7回研究会(日本ロボット学会研究専門委員会活動紹介)>
2021年6月29日(火)15:30-17:30、参加者数:19名
本研究会では、若手研究者や学生が研究分野の専門性をより深めていくにあたって情報収集の助力となる研究専門委員会について、当委員会を含む3委員会の活動を紹介し、それぞれの理念や方向性を認知してもらうことを目指した。本研究会においては、ロボット考学研究専門委員会より委員長の上出寛子先生(名古屋大学)、遊びとロボット研究専門委員会より委員長の望山洋先生(筑波大学)、そして若手・学生のためのキャリアパス開拓研究専門委員会より副委員長の内山瑛美子先生(東京工業大学)にご登壇いただいた。
遊びとロボット研究専門委員会では、文化よりも古いと言われる遊びと、ロボットという複合的なテクノロジーとの関係性について研究し、社会に対するロボットのあり方を見出すことを目的としている。「遊ぶ×つくる」と「遊ぶ×食べる」のキーワードについて活動を紹介いただいた。DIYを伴うイベント活動は参加者の満足度が高い一方で、多くのコストを要するという悩みが挙げられつつも、参加者による意外な発見も少なくないとのことであった。またロボットと植物、生物を組み合わせた美術品としての展示についても紹介いただいた。
ロボット考学研究専門委員会では、ロボット技術が人間社会や地球環境に与える影響や効果について学際的に考えることを目的としている。年に数回の公開委員会を開催し、AI倫理に関する講演会の報告をいただいた。また、学校におけるロボコンというモノづくり活動を通じて人間が成長する過程についての分析結果をご説明いただいた。モノと人という区別されるものが相互作用することで双方が融和し、人にとっての学びの効果が大きくなるという観点はとても興味深いものであった。
<日本ロボット学会学術講演会オープンフォーラム#10「このロボットがすごい2021」>
2021年9月11日(土)13:00-15:00、参加者数:164名
本フォーラムは2015年度より学術講演会の一般市民向け行事であるオープンフォーラムの一環として毎年開催している。本年度は以下の3名に講演いただいた。
- 林里奈(独立研究者 a.k.a. まるにゃん)「ほんわかロボットのひみつ」
- 山崎洋一(神奈川工科大学)「コミュニケーションロボティクス- 人とつながる,人をつなげる笑顔をつくるロボット技術 -」
- 多田隈理一郎(山形大学)「全方向駆動歯車機構の原理創案・具現化」
林様は民間企業で勤務の傍ら、独自にコミュニケーションロボットの開発・研究に取り組まれ、研究論文を発表されるなど精力的に研究活動をされている。ロボットと接することで利用者のストレスを低減する効果など心理的な影響を定量的に分析され、またそれをフィードバックしたロボットの改良に取り組まれている。ちょぼにゃんと呼ばれるロボットの重量や柔らかさ、応答まで知見に基づいて設計され、今後のリリースに期待が高まった。
山崎様は人間とコミュニケーションをとる手法に関する研究に取り組まれ、これまでにロボットの感情を表現する手法とその具現化、人間に感情を想起させるデバイスの開発をされてきた。眼球運動による感情表現や髪の毛形状のロボット、光の明暗によって感情を創発するデバイスなどユニークなロボット・デバイスが印象的であった。人間が感情を伝えるときに意識する視線や表情、また受け手側が感情に共感するときの注目点などは、ホームケアや家庭用ロボットへの導入が期待される知見であると感じた。
多田隈様は歯車の形状を多種多様に変化させた歯車駆動機構を提案され、二次元平面運動から球状関節の実現まで、独創的な研究に取り組まれている。通常は回転運動のみを伝達する歯車に対して、2軸直交するような歯切り面を製作し、全方向へ面状体を運動させる機構は物体搬送などへ応用されている。また、三自由度球面モータはこれまでの球面モータと異なり、歯車駆動であることから伝達動力を大きくすることができるため、ロボットアームの肩関節やヒューマノイドロボットの股関節など、球状関節を模す部位の小型化に寄与すると期待できる。
委員長 槇田 諭(福岡工業大学)