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第40回日本ロボット学会学術講演会(RSJ2022)開催報告


主催:一般社団法人日本ロボット学会
会期:2022年9月5日(月)~9日(金)
開催:現地開催(一部オンライン開催)


1.はじめに

 第40回日本ロボット学会学術講演会(RSJ2022)が,東京大学本郷キャンパス(東京都文京区)において,現地開催(一部オンライン開催)形式で行われた.実行委員会メンバー一同,8月~9月上旬に新型コロナウイルスの感染状況を日々ウオッチしながら,直前まで現地開催にするかオンライン開催にするか悩んだものの,対面での議論の場の設定が切望されているだろうという考えの下,現地開催に踏み切った.現地開催は第37回学術講演会(RSJ2019.早稲田大学)以来3年振りであった.

 開催の概要を以下に示す.まず,オーラルセッションについては,全11室のパラレルセッションにより,9月5日午前,6日終日,7日午前~午後2時まで,8日終日に開催した(工学部2号館).創立40年記念行事を9月5日午後に,表彰式,開会式,特別講演,次年度開催報告を9月7日午後に,それぞれ開催した(安田講堂).最終日の9月9日には終日,一般公開企画のオープンフォーラムを開催した(工学部6号館,14号館).それらと並行して9月6日~8日の3日間終日で機器展示,書籍・カタログ展示を開催した(工学部2号館フォーラム,6号館).


2.実施結果

2.1 参加登録,講演実績

 参加登録者総数は1,519名(内有料登録者数1,387名,招待者132名),取材したマスコミは6社であった.テクニカルセッションの発表件数は67テーマ/716件であった(内一般セッション43テーマ/415件,オーガナイズドセッション21テーマ/260件,インターナショナルセッションは3テーマ/41件).また,最終日のオープンフォーラムは21テーマであった.参加者,発表者の属性を記した円グラフを図1に記す.

 参加登録者数,発表件数ともかなりの数であり,初日の最初から最終日のオープンフォーラムの終わりまで活発に議論が行われた.ロボティクスに対する興味,ニーズが継続的して増大していることが伺われた.

 発表内容については,ロボットマニピュレーションやロボット視覚等,基礎技術の研究が地道に着実に行われているのに加えて,以下の分野の発表が多くなされた.(a)社会問題を解決する/社会に浸透するロボティクス,(b)モノづくり以外の分野で利用されるロボットシステム,(c)人間との相互作用や介護・福祉,神経科学との融合(人間理解のためのロボティクス),(d) ELSIの問題を扱った研究.また発表題目中,AIの名前が前面に出てこなくなったことも特徴的であった.これは,それを使った研究が減ったのではなく,もはやAIが当たり前のように使われていることを意味すると思われる.

 ダイバーシティの観点からは,若手研究者,女性研究者,国際セッションにおける発表を促進し,結果としてその充実が見られた.女性研究者が座長に含まれている比率は約15%であった.

 


(図1a) 参加者属性(参加資格別)

 


(図1b) 発表者属性(参加資格別)

図1 参加者,発表者の属性


2.2 特別企画

 初日(9月5日)の創立40年記念式典では,前半の記念式典において日本ロボット学会会長 村上 弘記氏より挨拶と学会概況報告がなされた後,来賓からのご祝辞をいただいた.改めてロボット学会に対する期待の大きさを伺い知ることができた.後半に開催されたシンポジウムにおいては「2050年に向けて日本ロボット学会の進むべき道」と題して,佐久間 一郎氏(東京大学)の司会の下,菅野 重樹氏(早稲田大学),鈴森 康一氏(東京工業大学),永谷 圭司氏(東京大学),平田 泰久氏(東北大学),安藤 健氏(パナソニック),印藤 正裕氏(清水建設),森岡 昌宏氏(ファナック),村上 弘記氏の8名のシンポジストが,今後日本ロボット学会が進むべき道について多様な観点から議論した.その内容の豊富さにより,今後のロボット研究の方向性について,多くの示唆が得られた.

 3日目(9月7日)の特別講演においては,東京大学/理化学研究所の江間 有沙氏に「AI/ロボット社会実装の課題と矛盾」と題してご講演いただいた.昨今AIを搭載したロボットが様々な分野で適用されているが,その中での,安全性や公平性の問題,その原則から実践への流れについて問題提起したものであり,参加者がロボットの将来,ロボット技術に携わる者の責任について深く考える良い機会になった.


2.3 スポンサーシップ

従前の学術講演会に引き続き,スポンサーシップ制度を実施し,以下の16社の皆様にご支援をいただいた.心より御礼申し上げる.

<ダイヤモンド・スポンサー>

ASPINAシナノケンシ株式会社殿
SMC株式会社殿
ソフトバンク株式会社殿
村田機械株式会社殿
株式会社ロボティズ殿

<ゴールド・スポンサー>

株式会社アールティ殿
株式会社IHI殿
カワダロボティクス株式会社殿
Kudan株式会社殿
TechShare株式会社殿
東レエンジニアリング株式会社殿
日本バイナリー株式会社殿
ファナック株式会社殿
NOKOVモーションキャプチャ殿

<シルバー・スポンサー>

株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ殿
株式会社Mujin殿


スポンサーの方々には,以下のサービスを提供させて頂いた.

  • RSJ2022WEBページでのバナー掲載
  • RSJ2022への無料参加
  • 特別講演前および一般講演セッション間のCM動画配信(ダイヤモンド・スポンサー,ゴールド・スポンサーのみ)

2.4 機器・書籍・カタログ展示

 計36社の企業様に参画いただいた.展示スペースは講演会参加者が立ち寄りやすい立地を考慮して,工学部2号館フォーラム(一部工学部6号館)とした(図2参照).吹き抜けのため,9月上旬という開催期間における暑さ対策として数台のレンタルクーラーを設置した.

 


図2 機器・書籍・カタログ展示の様子
(東京大学本郷キャンパス工学部2号館フォーラム)


2.5 新型コロナ対策

 RSJ2022実行委員会副委員長の小林 英津子氏(東京大学)のイニシアチブの下,東京大学の「イベント開催時の新型コロナウイルス感染症予防ガイドライン」に従い,感染対策に関する基本方針案を作成した.具体的に多くのことを行ったが,以下いくつかを紹介する.(a)参加者が登録のために受付に集結しないように,事前登録を奨励した.概要集の作成をやめ,代わりに各種情報を印刷したA3版の案内を,参加者証などと一緒に事前に郵送配布した(図3).(b)参加登録者向けに,事前に「新型コロナウイルス感染対策・ご協力のお願い」文章を配布し,感染対策の重要性をご理解いただいた.(c)当日参加者には除菌シートを配布し,各自自身が利用する/した椅子・机を拭いてもらうこととした.(d)可能な限り感染リスクを下げるため,懇親会の開催を断念せざるを得なかった.また参加者が休憩をとるための談話室もリスク要因となるため,設置しなかった.

 


(図3a) 表面

 


(図3b) 裏面

図3 A3版の案内


3.おわりに

 RSJ2022には,多数の参加者,発表者にいらしていただき実行委員会メンバーとしては大変うれしい限りであった.さらには,2.5節で述べた新型コロナ対策についても参加者,発表者の方々のご協力をいただき,大過なく学会を終えられたと思っている.会期中,多くの議論,相互交流がなされ,大変喜ばしいことであった.これは,3年振りの現地開催ということで,普段以上に対面での議論に「飢えている」方々が多かった?という理由があったからかもしれない.学会会期中にも何度か議論に上がったが,現地開催には現地開催の良いところ,オンライン開催にはオンライン開催の良いところがあり,できるだけ運営側の負担を増やさない形でその両者の良い点をうまく合わせた講演会の開催が今後期待されると思う.

 最後になるが,RSJ事務局の方々には,スケジュール管理がままならなかった実行委員長へのいろいろな形でご支援等々多大なご協力をいただき,心より御礼申し上げたい.また,RSJ2022実行委員の方々には,長期間に渡り多くのお仕事をお願いし,それに対してそれぞれの委員会の業務を嫌な顔一つせず献身的にお仕事をしていただいたことに対して,この場をお借りして,お詫びと感謝の意を表したい.多くのお仕事をお願いしてしまい申し訳ございませんでした.それにも増して大変ありがとうございました.


(RSJ2022実行委員長 太田 順(東京大学))