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学生編集委員会取材企画: 現場を知り,課題を解決する —東京大学 淺間一教授—


はじめに

私たち日本ロボット学会学生編集委員会東京支部は,東京大学大学院 工学系研究科 精密工学専攻 淺間一教授への取材を行いました.淺間先生は,福島原子力発電所の廃炉作業において,ロボット工学の専門家として活躍されています.私たち東京支部は,福島原子力発電所の事故発生から10年という節目を迎えたことを受けて,この機会に廃炉作業とロボット工学についてお伺いしたいと考えインタビューをさせていただきました[1].その過程で,淺間先生のご専門であるサービスロボティクスや淺間研究室についても興味をもち,お話を伺いました( 図 1 ).本稿はその内容をまとめたものです.

 


図1 淺間先生へのインタビューの様子


1 廃炉に関して

―ロボットによる福島第一原発の廃炉を目指した動機について教えてください.

事故当時は,放射性物質が外に放出されてしまい,その汚染が広がる中で,緊急的な調査などのいろいろな事故対応を行う必要がありました.線量が非常に高いから人が近づけないわけです.そうすると,ロボットを使うしかない.多くの作業でロボットを使わなければならないというような状況で,ロボットの研究を行っている科学者として,何らかの貢献をしないといけないという責任感を感じたのが一番大きいですね.

結局,廃炉という,3,40年かかる非常に長いミッションになりました.廃炉に移った後も,やはりロボット技術が必要だという状況は変わっていないので,研究室の中だけでロボットの研究をやってればいいというのではなくて,科学者としての社会貢献を果たすべきだと考えています.


―廃炉に関して放射線があるからこそ困難だった部分を教えてください.

放射線があると人が行けないわけです.そのため,遠隔技術によって,ロボットを使って調査や瓦礫の除去,除染,サンプリングといった多様な作業をやらなければなりません.

ロボットも放射線で半導体などがダメージを受けて壊れることがあるので,まずそれが1つの困難な要因です.ただ,放射線に強いロボットを開発すればいいだけではありません.燃料デブリという,溶けた核燃料を取り出すのがミッションですが,今格納容器の中に溶けて落ちていて,そこがものすごくアクセスがしにくい場所なんです.コンクリートで覆われた場所で,いくつかの貫通部分からしかロボットや調査機器を入れられず,また,内部は非常に複雑な構造になっています.障害物が多いし,真っ暗だし,冷却のために注入している水が上から落ちているという,ロボットにとっては最も困難な環境ですね.

多様な作業と複雑な環境,それからアクセスの悪さが,放射線に加えてロボットの導入を困難にしています.

もう1つは,内部の環境や様子が予め良く分かっているわけではなく,ロボットを入れてみて初めて分かるケースもあります.内部がどうなってるかよくわからない状況で,ロボットを設計・開発するのは難しい課題ですね.


―今まで解決されてきた課題と,今後解決して行かなければならない課題を教えてください.

情報の収集や瓦礫の除去,ダストや汚染水等のサンプリングはある程度上手くいっています.

逆に,除染などはあまりうまくいっていません.除染はどうしてそこが線量が高いかという原因まで突きとめないと効果的にできないんです.調査をしながら原因を突きとめて原因に応じた除染方法を選んでいかないといけません.一方で,壁一面に汚染物質がこびりついてしまっているとなると,壁を全部除染しないといけない.中には配管があったり障害物があったり,いろんな形状のものがあって,全部除染するのは難しいです.タスクや環境が複雑だというのが問題です.

今後一番難しいのは燃料デブリの取り出しですね.融けた燃料がどこにどれだけどういう形で存在するかというのもまだよくわかってないし,それを調べながらどういうふうに取り出すかということを設計して取り組まないといけません.


―複雑なタスクの中で失敗してしまったことや,次の教訓になったことを教えてください.

事故直後は失敗する事もときどきありました.最初は通信不良による失敗です.例えば最初にドローンを入れた時に落下してしまったんです.遠隔から操作していて,途中で通信が届かなくなって落ちたと考えられます.原子力プラントの中は非常に複雑になっていて無線が通らないので,有線で遠隔操作するわけです.ただ,この有線のケーブルがいろんなところに引っかかってしまい,切れると一切動かなくなる.

現在では,有線と無線を組み合わせています.具体的には2台のロボットを入れる方法です.1台は有線で,ある程度まで行って自分がアクセスポイントになり,もう1台を無線で動かします.無線で動くことで,割と自在に動けていろいろな調査ができます.もう一つは,自律性を高めるという方策も考えられます.通信が切れても戻ってくるなどの自律性を入れておくと途中でスタックしないようにできます.

次の失敗としては,溝にはまり込んで動けなくなったのが何台かありますね.最初蛇型で,形が変わってクローラーで動くトランスフォーマロボットがありましたが,これが最初溝にはまって動けなくなった.遠隔でカメラの映像を見ながら操作していて,下に溝があることにオペレータが気が付かなくて,そこにはまっちゃったんですね.これはヒューマンインタフェースの問題ですね.オペレータが下に溝があることに気が付かなかったので,現場の環境をうまくヒューマンインタフェースとして再現して提示する必要があったんじゃないかと思いますね.

ヒューマンインタフェースでは俯瞰映像がすごく便利だということがわかってきたので,そういうのを搭載したロボットが出てきています( 図 2 )[2].人がオペレーションするので,人の空間認知の性質を理解した上で,オペレータも含めた形でロボットシステムを考えることが重要というのが1つの教訓です.

 


図2 生成される俯瞰視点映像


もう一つの教訓は,全て操作が必要なロボットを遠隔操作するのは大変なので,ロボット自身に自律性を持たせることが重要だということです.

3つ目の失敗の原因は放射線で,長時間稼働させていると,放射線で半導体やCCDカメラとかが壊れるわけですね.

対策としてはまず放射線に強いデバイスを使うというのがあります.もう1つは半導体を使わず完全にメカニカルにしてしまうっていう手もあります.半導体を使わないで全部ワイヤー駆動にするなど,できるだけメカニカルなデザインを行うアプローチです.3番目はシステム的なアプローチです.例えば冗長にしておいて1つが壊れてもある程度機能するという機能縮退という考え方です.ダメージを受けても徐々に機能が縮退してくるようなシステムにする.例えば俯瞰映像では,4つのカメラ使っていますが,魚眼カメラのため視野が広く,4のカメラのうちの1個が死んでも残りの3つで結構見える( 図 3 ).2つ壊れても残りの2つでまだまだ見えるというようなことが実現できて,機能縮退可能なシステムにできます.

 


図3 俯瞰映像生成を行うロボット.魚眼カメラが4方向それぞれに取り付けられている.


―廃炉に関わったことで,研究への向き合い方や心構えに変化がありましたか?

好きな研究をやっているだけではダメだという,科学者としての責任感や意識はかなり変わりましたし,それから現場を知ることの重要性を再認識しました.いい加減なロボットを入れても絶対現場では役に立たないので,現場を知る,現場のニーズや環境をちゃんと把握した上でロボットを設計したり開発したりすることが重要ですね.


2 淺間先生の研究全般に関して

―サービスロボティクス分野の研究を始めた動機について教えてください.

ロボットというのは,大きく産業用ロボットとサービスロボットに分かれます.日本のロボット産業は,今,ほとんどの部分が産業用ロボットで,これは,工場の中で使われるロボットですね.ですから,溶接とか塗装とか組み立てとか,そういう工程に使われているロボットがほとんどなんです.実際,今の日本のGDPを見ても第1次産業は日本は非常に少ないんですが,第2次産業も大体1/4ですね.3/4ぐらいが第3次産業.日本はそういう意味では今は第3次産業でもってる国なんですね.昔は第2次産業が非常に強かったんだけど,今どんどんその割合が減ってきて,むしろ第3次産業が,日本の今の産業を支えています.今後はやはりサービスの生産性をどう上げるかっていうのが,日本の経済を考える上で重要だと思うんです.ですから,そんなような背景からロボット技術もこれから第3次産業にどう貢献できるかということを考えないといけないだろうと思ったのが,1つですね.

もう1つは,私がサービス工学をやっていました.今SDGsって言われてますよね.昔は大量生産,大量消費で経済を作ってたのですが,それが成り立たなくなってきた.ではどういう風に価値を作り出すのか.それはサービスです.要するに,パラダイムが今,大量にモノを作る時代から,サービスや知識を作る時代に変わりつつあるので,そういうところでロボット技術がどう貢献するかを考えないといけないだろうと思います.そんな所からサービスロボティクスをやはりやるべきだろうと思って始めました.


―サービス工学というのは,どういったことをされてたんですか?

サービスをどう作るかという学問ですね.サービス工学と対比されるのは,ハードウェアを作ることです.例えばマッサージロボットなんてのは,ものを提供するんじゃなくて,マッサージというサービスを提供するわけですよね.マッサージロボットはマッサージをしてお金を稼ぐわけですよね.マッサージロボットを売るということだけでなく,ロボットが提供するマッサージというサービスを売るということなんです.

言い方を変えれば,「もの」としてのハードウェアだけで なく,ソフトウェアやサービスを全部含めてものづくりだと考えればいいということですね.

教育もサービス業です.私は教育で給料をもらってますけども,何もものは生産してないわけですね.だから唯一の価値は私が何か授業で話して,それが皆さんの頭の中に入って今までと違う知識などが頭の中に蓄えられると,それが価値なんですよ.物質的でない価値が世の中にあって,それを提供するのがサービスに携わってる人間の仕事ですね.


―ロボットを開発するにあたって注意していることはありますか?

1つはロボットが使われる現場のニーズとか,環境とかそこでの課題を知ることが極めて重要です.そうでないと役に立たないロボット技術開発をすることになってしまういます.

それからもう1つ重要なことは,人間を知ることです.なぜロボットなのに人間を知ることが重要なのか.これには2つの意味があります.1つはサービスを提供する対象は人なので,その人が何を望んでいるのか,人とはどういう存在なのかを知るということが重要になります.もう1つは自律性の実現のために重要になります.人間のようなロボットの実現には,人間がどのように自律的な行動を作り出してるのかを理解することが必要ですね.人間が自律的に活動しているメカニズムが分かると,それがロボットをつくる上でのヒントになるわけです.つまり,サービスを提供する対象としての人を知るということと,ロボットをインテリジェントにするためのヒントを得られるという2つの面から,人を知ることは,ロボティクスをやればやるほど重要であると気付きます.

3つ目は,社会受容性です.ロボットをつくったけど,結局なかなか使ってくれないということが多いわけですよね.それは,信頼性や安全性,倫理的な問題,犯罪などへの悪用,そのための法規制,そして事業性などの問題です.ロボットの実用化や社会普及も考えないといけないというのが最近実感していることですね.


―ロボットをつくる上でのこだわりを教えてください.

私が重要だと思っている考え方は,自律分散です.ロボットを作る時,大体のシステムは集中型の構造を取るわけですね.要するに1つのCPUが頭となり全体をコントロールする構造です.この構造ではフレキシビリティはあまりないわけです.ですから,非常に多様な作業ができるかとか,放射線でやられても残った部分で機能するかとか,環境が変わっても適応的に動けるのかという話になってくると,フレキシビリティのない構造では対応ができないんです.

生物には自律分散という構造があって,たくさんの自律したモジュールがうまく協調しながら動いています.個体レベルでは,アリみたいなロボットシステムがあってもいいじゃないかと.1台1台のアリロボットには大した機能はないかもしれない.簡単に壊れちゃうかもしれない.でもそれが例えば何十万匹もいれば,協調しあって,大きいものを運んだりとか,並列処理で,効率的に餌を捕って来たりとか,敵が来てもみんな協力して防衛したりとか,何匹か人間に踏み潰されてもちゃんと残ったやつで作業ができるとか,そういうフレキシブルなシステムにできるわけですよね.そういう,個々のロボットの機能は大したことがなくても,それが沢山集まり,協調して動くようなロボットシステムが,重要だと思っています.最近ではようやく,自動倉庫でたくさんのロボットが動いている例が出てきました.でも,例えば福島の原発の廃炉を群ロボットでやれるかというとまだやれないですよね.実用のシステムはまだまだ機能が限定されているので,そこは,こだわりを持ってやっていきたいなと思っています.


―ロボットの実用化をより推進するためには ロボットのためのバリアフリーが必要と言われていますが,現在どれぐらい進んでいますか?進むためには何が必要だと思いますか?

これはずいぶん,進んでいると思いますね.私は情報環境,環境知能のをやらないとダメだと主張してきましたが,今はIoTなどが出てきたので,いろんなデバイスが,エッジでローカルに情報を処理したり蓄積したりすることができるようになりました.IoTはどんどん社会に浸透してきたし,それらをつなぐネットワーク技術が進んできました.ただ,スマホにはコンピュータが必ず入っていますが,メガネには入っていません.そのうちメガネにも入るかもしれないし,すべてがネットワークでつながるようになると,勝手に情報環境が実現されていくわけですね.ですから,そういう環境ではロボットが環境とコミュニケーションしながら動けるようになってくると思いますね.我々グローバルなコミュニケーションやろうとすると,どんどん高速なネットワークが必要になってくるんですけど,動物はみんな環境に情報を残すんですよ.マーキングっていうんですけど.例えば犬が環境におしっこして,ほかの犬はそれを嗅ぐだけで,誰がいつここに来たか分かっちゃう訳ですよ.犬同士で直接やるコミュニケーションとは異なります.だから,そういう環境を介したコミュニケーションが自律分散には重要で,グローバルなコミュニケーションの負荷をかけずに情報交換をローカルにやるんですよね.だから自律分散をやればやるほど,環境構造化も重要になってくるし,面白くなります.

今まさにコロナで,デジタル化は進みましたよね.みなさんも授業を遠隔で受けていると思いますけども,それは1つのいい効果もあったと思うんです.ただ対面とは違いますね.対面とバーチャルなコミュニケーションとは何が違うのか,ぜひ考えていただきたいと思いますが,もちろんバーチャルの限界もあるわけです.私は直接会って対面でコミュニケーションする重要性はすごくあると思っているんです.ただ,環境構造化っていうのは,進めば進むほど,いろんなことができるようになると思うので,それはそれで重要な技術になると思います.


3 淺間研究室に関して

―淺間先生の研究室はどんな研究室ですか?

簡単に言うと課題解決志向の研究室ですね.現場で起こっているいろんな問題を解きたい,という人には向いてると思います.雰囲気は非常にアットホームで,みんな家族だと思ってます.どんな人でも歓迎しますよ.


―研究室の学生を指導する時に心がけていることはありますか?

そうですね.大切にしていることが3つあります.一つめは,やはり課題解決能力です.社会で一人前に生きていくのに必要な論理的な考え方や姿勢を,研究室にいる間に身に付けてほしいと思いながら学生を指導しています.専門的な知識をつけることももちろん大事ですが,みんながずっと研究室に永遠にいつづけるわけじゃないですし,研究者になる人ばかりでもないですからね.社会に出て仕事をするときに,過去に誰かがやったのと同じことをやるだけでいいというようなことはほとんどなくて,次々に出てくる新しい問題を自分で解かないといけないわけですから,そういった能力が大切なんです.

さまざまな課題の中でも,特に環境問題や社会問題を考える意識が重要だと思います.今まさにSDGsと言われていますよね.たとえば30年後の世の中は今とだいぶ変わっているでしょう.今よりももっと多くの問題を抱えているかもしれません.そのなかで問題をどう解決するかは,若い人自身にかかっている.ここで強調しておきたいのは,「誰かが解決してくれるだろう」と傍観するのではなく,「自分がやらなきゃだめだ」という意識を持ってほしいということです.自分の行動が社会を変える.自分が常に関わっている.だから自分が解決しなくちゃいけない.そういう意識をひとりひとりが持たないといけないと思います.

そういった課題を解決するうえで,ロボティクスは特に重要です.ロボティクスはシステムインテグレーションです.特定の分野での専門性が弱くても,ソリューシの提案ができるという点が強みだと思います.だからこそ,研究室の人には幅広い知識や技術を身に付けて,それを課題解決に役立ててほしいと思っています.

二つめは,リーダーシップです.私は最近よく「マイクロリーダーシップ」という言葉を使います.上の人間が旗を振って下の人間を動かすのではなく,下の人間が上の人間を動かすことです.環境問題や社会課題は1人ではまず解決できないので,ほかの人と信頼関係を築いて協調する必要があります.指示まちではなく,人に何かをやってもらうよう依頼するとか,わからないことがあったら誰かに聞くといったことをできるようになってほしいと思っています.マイクロリーダーシップはこの先ますます重要になっていくでしょう.あらゆる人間が責任感,義務感をもってリーダーシップをとるという社会を目指さないといけないと思います.

三つめはより高い目標を持つことです.「このぐらいでいいだろう」とは思わないで,できるだけ高い目標を持ってほしいと考えています.私は「人に優しく自分に厳しく」をモットーにしています.自分に対しては満足しない.常に高い所を目指して成長してほしいし,自己実現をしてほしいし,自分の価値をどんどん高めていってほしい.それがやる気に繋がるのです.


―ロボティクスのようなシステムインテグレーションの研究では必要な知識がたくさんあると思うのですが,淺間先生が考える独学のコツは何ですか?

今の自分に満足しないことだと思います.私は人より常識のない人間で,常識のある人間になりたいと常々思ってました.今でもそうです.誰かが話していることが理解できないと,自分はダメだ,こういうことがわかるぐらいの常識人にならないといかん,と感じて,知識や常識を身に付けようともがきながら,今に至っています.そういう姿勢がたぶん重要で,それがより貪欲に学ぶという行動につながっていくのだと思います.あと,学ぶときは遠回りすることも必要です.一見関係がなさそうに思えることにも興味をもつことが重要で,そういうことから次元が全然違う発想が生まれるんです.いわゆる「セレンディピティ」ですね.私はそういうのを大事にしています.だからいろんな学会や研究会にもよく顔を出します.そういう場には面白いことをやってる人がたくさんいるので,必ず1つや2つは新しく「へえ」と思う話が聞けるんです.

たとえば,福岡大学の藍先生から伺ったミツバチの八の字ダンスの話はとても興味深かったです.八の字ダンスというのは,餌場を見つけたミツバチが巣に戻ってから行う,おしりをブルブル振ってぐるっと回るという動きです.このダンスは,餌場の方向と距離を表しています.どの方向にどれだけの距離行ったところに餌場があるのかをほかのミツバチに教えているわけです.藍先生は,ミツバチが仲間の八の字ダンスを見た後にとる行動を観察しました.そうしたら,八の字ダンスが示す餌場の方に飛んでいったミツバチは7割だけで,残り3割は全然違う方向に飛んでいったそうです.3割は何をしているのかというと,その餌場が枯れたときに備えて,新しい餌場を探しに行っているんですね.

私はこれを聞いて,組織論にも当てはまる話だなと思いました.例えば,ある会社で儲かっている事業があっても,そこに人的リソースを100%投入しない方がいい.7割くらいにして,残りは新しい事業の開拓に回した方がいい,ということを示唆しているように思えます.そうすることで,今儲かっている事業が潰れても他の手段で生き残れます.これは,最適化問題として捉えることができますね.ある境界条件の中で最適化する行動 と,その境界条件の中に解がなくなった時に備えて境界条件の外を探しに行く行動とのバランスを取らないといけないわけです.ミツバチの場合はその割合が7:3なんですね.「なるほど!」と思いました.

こういうのが「セレンディピティ」ですね.みなさんもぜひいろんなことに興味を持ってみてください.


あとがき

淺間先生へのインタビューさせていただいたことで,現場で実際に役に立つロボットを作ることの重要性や心構えについて学ぶことができました.使用する場面について考えることを忘れずに取り組みたいと思います.このような貴重な機会を設けてくださったことにこの場をお借りして御礼申し上げます.


References

[1] 淺間研究室,http://www.robot.t.u-tokyo.ac.jp/asamalab/ (accessed Dec. 21th, 2021)

[2] Komatsu, R., Fujii, H., Tamura, Y., Yamashita, A., & Asama, H. (2020). Free viewpoint image generation system using fisheye cameras and a laser rangefinder for indoor robot teleoperation. ROBOMECH Journal, 7(1), 1-10.

 

淺間 一(Hajime Asama)

1984年東京大学大学院修士課程修了.1986年より理化学研究所.2002年東京大学人工物工学研究センター教授.2009年同大学大学院工学系研究科教授.2019年同研究科人工物工学研究センター長.サービスロボティクスの研究・社会実装等に従事.日本学術会議会員.IFAC会長.工学博士(東京大学).


インタビュア

茶田智来(Tomoki Chada)

2020年東京大学工学部精密工学科卒業.現在東京大学大学院工学系研究科精密工学専攻,修士課程在籍.日本機械学会学生会員.表面電位測定に関する研究に従事.

 

山口恵璃(Eri Yamaguchi)

2020年東京大学工学部精密工学科卒業.現在東京大学大学院工学系研究科精密工学専攻,修士課程在籍.ガラス環境におけるロボットセンサに関する研究に従事.

 

小嶋麻由佳(Mayuka Kojima)

2020年東京大学工学部精密工学科卒業.現在東京大学大学院工学系研究科精密工学専攻,修士課程在籍.硬軟感知覚や触覚刺激を用いた疑似力覚提示に関する研究に従事.

 

※所属は記事執筆当時のものです.