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活動報告2022:ソフトロボティクス研究専門員会


概要

 日本ロボット学会ソフトロボティクス研究専門委員会は、日本国内の関連研究者による学際的な研究コミュニティの構築と、ソフトロボティクス分野のさらなる振興のために2017年4月から活動している。研究会やワークショップ/シンポジウムの開催のほか、関連学会にてオーガナイズドセッション(OS)を実施している。2022年は、日本機械学会ロボティクスメカトロニクス講演会(Robomech)においてOS「ソフトロボット学/フレキシブルロボット学」、ロボット学会学術講演(RSJ)においてOS「ソフトロボティクス」、計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会(SICE SI)においてOS「ソフトメカニズム」を実施した。
 活動の中から、Robomech 2022の期間中に開催したシンポジウムを下記で詳しく紹介する。


シンポジウム開催報告

 日本機械学会ロボティクスメカトロニクス講演会(Robomech 2022)において「異分野融合で“いいかげん”を科学するソフトロボット学3」を実施した。札幌コンベンションセンターにて、2022年6月1日に開催した。このシンポジウムは、ハイブリッド形式とし、zoomおよびYouTubeライブでも配信を行った。なお、この企画は科研費新学術領域研究「ソフトロボット学」との共催で、コーディネータ:望山洋(筑波大学)、モデレータ:平井 慎一(立命館大学)の体制で実施された。シンポジウムの構成は、ソフトロボット学の導入講演1件、制御工学や解剖学などから見たソフトロボットに関する講演2件、関連研究を進める若手研究者による講演3件であった。各講演の概要をまとめる。

 

「いいかげんなロボット:ソフトロボットが創るしなやかな未来」
鈴森 康一(東京工業大学、新学術領域『ソフトロボット学』代表)

 古典的なロボティクスとは異なる「好い加減」という考え方に基づくロボット学の新展開について新学術領域で行われている研究事例を交えてお話しいただいた。

 

「ソフトロボットの手綱を求めて:制御理論からの挑戦」
石川将人(大阪大学)

 制御という観点から、ソフトロボットが所望の振る舞いを得ることの難しい超劣駆動系であることを出発点に、制御やシミュレーションの難しさの原因や、制御のためのアプローチについて論じていただいた。

 

「ソフトロボティクスの視点から紐解く動物解剖学の今と未来」
郡司芽久(東洋大学)

 解剖学がどのような学問であるか、具体的な事例に基づいて説明していただくとともに、動物の身体の多くの部分に見られるやわらかさや、ロボティクスとの融合研究についてご紹介いただいた。

 

「動物の好い加減な振る舞いから切り拓くやわらかいロボット」
福原 洸(東北大学)

 動物のしなやかな振る舞いが、身体に閉じたものではなく、環境やコンテキストに応じて創発的・自律分散的から現れるのではないかという仮説や、それに基づく脚ロボットについて紹介いただいた。

 

「分子ロボット特有の通信システムの解析」
小塚 太資(慶應義塾大学)

 バイオテクノロジーによってプログラムされた微小細胞を分子ロボットとみなし、その内部の遺伝子回路による情報処理や、分子ロボット間の分子通信という考え方と、そのモデル化についてお話しいただいた。

 

「人に寄り添うソフトロボットのインタラクションデザイン」
ソン ヨンア(法政大学)

 ソフトロボットの技術をユーザーエクスペリエンス(UX)やデザインの観点から論じ、ケーススタディとしてインフレータブルロボットと人間のインタラクションなど、人に寄り添うロボットのあり方についてお話しいただいた。


 シンポジウムの最後には、講演者6人によるパネルディスカッションを行った。また、ウェブ上および会場からの質問も寄せられ、議論が広がった。

 

委員長:新山龍馬