当委員会では本年度、以下の研究会ならびにオープンフォーラムを開催した。
- 2022/04/05 委員会(オンライン)
- 2022/04/28 座談会:研究者にならなかった博士座談会(株式会社tayoと共同開催)
- 2022/06/03 若手・学生デモンストレーション交流会(ROBOMECH2022会場)
- 2022/09/06 日本ロボット学会学術講演会OS19:学生・若手研究者のキャリアパス開拓と支援
- 2022/09/09 学術講演会オープンフォーラム「このロボットがすごい2022」
本報告書では4月28日開催の座談会および学術講演会OSについて簡単に報告する。
座談会:研究者にならなかった博士座談会(株式会社tayoと共同開催)
2022年4月28日(木)19:00-20:30,参加者:100名超
本座談会は当委員会でもたびたび話題に挙がっていた,博士課程進学数の増大,学位取得後の多様なキャリアプランの提示について,その意図に共感いただいた株式会社tayoとの共同企画である.主たる広報,ミーティング設定,司会者等の斡旋を株式会社tayoが,座談会登壇者の選定・打診を当委員会で分担した.イベントの詳細な報告は以下の記事が詳しい.
https://magazine.tayo.jp/2022/06/09/博士人材キャリアウェビナー-vol-1研究者にならなか/
ロボティクス分野に限らず,博士課程取得後,または博士課程中途において民間企業等へ就職する,起業するなどのキャリアは少なくない.一方で,博士課程進学の動機の多くは研究職を目指すことであり,必然的に研究職,特にアカデミアを志すキャリアプランが多くなる.本企画はそのような状況を踏まえて,博士課程に進学・修了してから研究職に就かなかった方々の話を伺う機会を設けた.なお,登壇者は人文系博士の方や別分野への就職をされた方などさまざまなバックグラウンドを持つ方を選定した.博士課程での取り組み・学びが研究以外の多くの場面で生かされることを知ってもらい,博士課程で研究に取り組むこと自体が社会に還元されるものであると認知されるとよい.多くの学生が研究職を目指さなくても博士課程で研究に従事し,多くを学ぶという動機を促進できることを願っている.
日本ロボット学会学術講演会OS19:学生・若手研究者のキャリアパス開拓と支援
2022年9月6日(火)9:30-11:45
本セッションでは当委員会の各種の活動の狙いや2021年度の活動内容の総括などを報告した.また,当委員会と同じく若手研究者や学生を主たる参加者とするロボティクス勉強会(通称・ロボゼミ https://robosemi.github.io)からも登壇いただき,その活動趣旨などを発表いただいた.
- 若手の学際的ネットワーキングを狙った研究会の開催
○川節 拓実(大阪大),坂東 宜昭(産総研) - 日本学術振興会特別研究員へ応募する学生へ向けたろぼやんの取り組み
○小木曽 里樹(産総研),川節 拓実(阪大),山本 知生(産総研) - アウトリーチ活動のための対面/オンラインのハイブリッド型トークイベント「このロボットがすごい」について
○槇田 諭(福岡工大) - ロボティクス勉強会の設立と進展
大西 祐輝(東工大),○吉本 幸太郎((株)ティアフォー),安達 波平(筑波大) - 国際会議のオンライン開催を活用した学生・若手支援イベントの実例
○山本 知生(産総研) - 男性研究者の研究と育児の両立支援の在り方
○内山 瑛美子(東大),槇田 諭(福岡工大)
いずれの発表に対しても活発な質問・意見が挙がり,聴講いただいた参加者に向けて活動の趣意が伝達できたものと感じる.
川節氏からは生物学分野の研究者を招聘し,ロボティクス分野との親和性の高さ,共通項の存在を実感してもらうという企画意図が説明された.学際的・横断的な共同研究等へ発展する可能性を示唆するものであった.
小木曽氏からは日本学術振興会特別研究員への応募を目指す学生にむけた企画で,その準備や心構え,申請書の執筆内容等についてアドバイスがなされたと説明された.このような取り組みは他のセミナーでは珍しく,当委員会ならではといえる.
槇田からはコロナ禍以前の2015年からハイブリッドでの開催を続けているオープンフォーラム「このロボットがすごい」について,開催の経緯や今後の展望を説明した.
吉本氏からはもともと学生主体でスタートし,月一回のオンライン開催を続けているロボティクス勉強会について,その企画意図等が説明された.学会とは異なり,趣味でロボットに関わる方々も交えた勉強会で,とても幅が広く,高い受容性をもつ活動である.
山本氏からはオンラインで開催され,参加無料で開放されたIROS 2020を題材に,発表動画の良い部分を学ぶ勉強会の開催趣意とその結果が報告された.多くの研究会がオンライン化する中で,発表動画の良否はアピール力の差となるので,このような発表方法の勉強会は今後も期待される.
内山氏からは特に男性研究者の育児への関心を高めることを目指した企画の開催意図とその結果が報告された.助産師による専門知識の教授,および育児経験者の研究者による事例報告とパネルディスカッション,またそれらを踏まえたアンケート結果の分析がなされた.
本セッション自体が必ずしもロボット研究の内容を踏まえたものではないが,ロボット研究に従事し続けるために避けては通れない検討事項を多く含むものであった.今後も研究会等を通じて,このような意見交換,情報発信の機会を多く設定したいと考えている.
日本ロボット学会 若手・学生のためのキャリアパス開拓研究専門委員会
委員長 槇田 諭(福岡工業大学)