「COMPASS5.0ロボット分野~新しいロボット教育の潮流~」特集について
日本ロボット学会誌42巻3号「COMPASS5.0ロボット分野~新しいロボット教育の潮流~」
- COMPASS5.0 ロボット分野におけるRX 教育の開発に向けた取り組み(多羅尾 進・冨沢 哲雄・髙田 宗一朗・原口 大輔・伊藤 浩・町田 茂)
- COMPASS5.0(ロボット分野)における北九州高専の取り組み(久池井 茂・安信 強・日高 康展・古野 誠治・松尾 貴之・谷口 茂・蒋 欣・富永 歩・久野 翔太郎)
- 社会実装ロボット教育とシステム開発プロセス教育(青木 悠祐)
- ロボットSI 演習の教材開発と教育実践(原口 大輔)
- 機械・知能系におけるRX カリキュラムのグランドデザイン(藤原 康宣)
- コンピュータリテラシ科目を活用したSI 演習(津田 尚明・谷 皓仁)
- ロボメカ技術者の育成に焦点を当てたロボットシステム統合化演習のアレンジメント(亀山 建太郎)
- SIer を意識したFA 実験教材の開発(中村 尚彦・鈴木 学・浜 克己)
- ROS を柱とした教材開発と教育実践(松尾 貴之・富永 歩・中野 壽彦・湯治 準一郎・前田 貴信)
- 産業用ロボットシミュレータを用いた教示作業実習(富永 歩)
- 企業と協働したデジタルものづくり教育プログラムの構築:SIer 基礎とプロジェクト演習(谷口 茂・久池井 茂)
社会実装教育を重視する高専機構は,令和2年度より次世代型基盤技術教育のカリキュラム化,COMPASS5.0事業を進めています.COMPASS5.0事業とは,AI・数理データサイエンス,サイバーセキュリティ,ロボット,IoT,半導体という五つの分野をこれからの技術の高度化に関する羅針盤(COMPASS)と位置づけ,高専教育に組み込むことで新たな時代の人材育成機関としての高度化を目指している事業です.
高専では30年以上前からロボットエンジニアを育てる様々な教育を行っており,高専といえば,ロボットやロボットコンテスト(ロボコン)という印象をもつ方も少なくないのではないでしょうか.しかし,近年のIoTやDX関連技術の進歩は著しく,従来の高専教育で習得できるスキルと産業界から求められるスキルとの間に差異が生じています.そこで,COMPASS5.0ロボット分野では,いま産業界で必要とされている「ロボットを利活用できる人財」に求められるスキルを調査し,これらを効率的に習得できる新しい教育パッケージ(到達目標の策定,カリキュラム,シラバス,教材開発,教育実践例まで整備されたもの)を開発しています.新しいロボット教育を通じて,「ロボットの社会実装ができる」,「デジタルものづくりができる」人材の輩出を目指しています.特に前者の人材教育をRX(Robot Transformation)教育,後者の人材教育をDX(Digital Transformation)教育として,取り組みを進めてきました.また,本教育パッケージの開発は,ロボットメーカーおよび日本ロボットシステムインテグレータ協会(SIer協会)が産業界から参画している未来ロボティクスエンジニア育成協議会(CHERSI)と連携しながら進められており,より実践的な教育パッケージとなっています.
本特集では,新しいロボット教育の理念,開発した教材,そして,教育実践例を紹介いたします.この特集が産学のロボット教育に携わるすべての皆様の手助けとなれば幸いです.
最後に,本特集号の実現にご協力いただいたCOMPASS5.0ロボット分野事務局および日本ロボット学会誌編集委員・事務局のみなさま,ご多用の中,記事を執筆いただいた先生方に心より感謝申し上げます.
(若林勇太 舞鶴工業高等専門学校
ゲストエディター:多羅尾進 東京工業高等専門学校,久池井茂 北九州工業高等専門学校)