「ロボット研究者と妊娠・出産・育児」特集について
日本ロボット学会誌42巻4号「ロボット研究者と妊娠・出産・育児」
【座談会】
- 研究者の妊娠・出産・育児とキャリアについて語り合おう(内山 瑛美子・米澤 かおり・瀬戸 文美)
【解説】
- 産婦人科医が伝えたい,妊娠に関する大事なこと(重見 大介)
- 研究者の妊娠~産後の生活と支援制度(米澤 かおり)
- 周産期メンタルヘルス(村上 寛)
- 男性の産後うつと育児休業(今西 洋介)
- 研究者の育児事情と課題(児島 功和)
【随想】
- 若手研究者の妊活と3度の妊娠生活(内山 瑛美子)
- 研究室を持つ女性研究者の育休取得(金崎 朝子)
- 研究者の育児と転職(坂田 茉実)
- あるハードウェア研究者の育児休業(神永 拓)
- 男性研究者の育休取得@国研(小木曽 里樹)
- ハードウェア研究者の育休なし育児について(趙 漠居)
- 男性高専教員が育児休業を取得したときの話(槇田 諭)
- 育児休業に関する二つのケースと考察(上田 隆一)
- ある研究者夫婦とその娘の生活(夫・妻・娘)
- 研究者夫婦,子育て15年を振り返る(宮田 なつき・前田 雄介)
- なぜ学会一時託児の実施が重要で,学会としてやるべきなのか?(瀬戸 文美)
若手研究者にとって,ワークライフバランスの両立は大きな関心を集める所である一方で,ではその情報を一体どこから得るか?というのは多くの研究者・学生が疑問に思うだろう.いざ子どもを持とうと考えたとき,実情を尋ねられる相手は,果たして身近にいるだろうか.自身やパートナーが妊娠した際や,上司/同僚/部下/教員/学生から,当人やそのパートナーの妊娠報告を聞いた際に,何に配慮すべきか.そもそも,妊娠や出産とは何か.多様な専門分野が重なるロボティクス分野だからこそ,様々な経験を基に,自分に合うワークライフバランスを構築するヒントが得られないだろうか.本企画では,助産師でもある米澤かおり先生をゲストエディタにお迎えし,単に当事者の経験談に閉じるだけでなく,専門家の解説も交えることで多様な視点からの情報提供を行うことを目指した.また企画の特殊性ゆえ,匿名での寄稿も受け付けた.なお,本企画は「若手・学生のためのキャリアパス開拓研究専門委員会」による特集号も兼ねた企画であり,委員にも複数名寄稿を依頼した.過去に例を見ない企画を後押ししてくださった編集委員会の皆さま,および,これまでにない依頼で大いに戸惑わせてしまったであろうにご快諾いただき,記事をご寄稿いただいた皆さま・座談会に参加くださった皆さまに,心より御礼申し上げる.
(内山瑛美子 東京大学)
内山先生とお話したときに「看護系の研究者は出産している人がたくさんいて,研究者でも出産できるんだというイメージが初めて持てた」というお話が大変印象に残った.それまで,研究分野が違うと文化が大きく異なると思っていたが,確かに研究者特有の出産・育児への影響は共有・共感できるということに気が付いた.そうであるならば,普段,ロボット学会と男女比が反転するような分野に身を置いている立場から参画することで,お互いに気が付くことができる点もあり,またロボット学と看護学だけではない,研究者全体の話に広げられるのではないかと期待している.
個人的には,自分と似た状況の人とのピアサポートは,日々のライフハックを考えるのに最も役に立つと思っている.今回多くのロボット学会にご所属の先生方の子育て研究者ライフをご寄稿いただいている.また,個人の体験でカバーできない部分を考慮し,専門家からそれぞれ出産・育児を考える人に意義のある論考を寄せていただいた.今まさに出産育児を考えている人だけではなく,将来のライフプランをどう考えるか,あるいは同僚の生活を具体的にイメージするために,今回の特集が読者の皆さまのお役に立てば幸いである.
(米澤かおり 東京大学)