日本ロボット学会 ソフトロボティクス研究専門員会(SIG Soft Robotics)2024年活動報告
概要
日本ロボット学会ソフトロボティクス研究専門委員会は、日本国内の関連研究者による学際的な研究コミュニティの構築と、ソフトロボティクス分野のさらなる振興のために2017年4月から活動している。本年も、研究会やシンポジウムの開催のほか、関連学会にてオーガナイズドセッション(OS)の実施を継続してきた。
活動の中から、一般向けにソフトロボティクスを紹介する展示・セミナーを行った共催イベント「いいかげんなロボット展2024 ~マテリアルとソフトロボットの融合~」について紹介する。
イベント開催報告
「いいかげんなロボット展」は科研費新学術領域研究「ソフトロボット学」主催にて、一般向けにソフトロボット実物を見て触れるイベントとして、2022年に日本科学未来館で、2023年に山形県鶴岡市立加茂水族館と福岡市科学館で開催してきた展示シリーズである。第4回目となる「いいかげんなロボット展2024」は京橋エドグラン(東京都)を会場として、実行委員 鈴森康一(東京工業大学)、前田真吾(東京工業大学)、難波江裕之(東京工業大学)の体制で実施された。
今回の展示では、2日間に渡り、16件の展示と、研究者らによるトークセッション10件が行われた。関連分野として、科研費基盤研究(S)「深層生体模倣ロボティクス」および新学術領域研究「発動分子科学」との連携による展示・トークが実現した。約300名の一般参加があった。
展示について
やわらかいロボットハンド、イヌやネコの解剖学的構造を空気圧人工筋肉で詳細に模倣したロボット、食べられる素材で作った人工筋肉、イモムシロボット、柔軟材料を使った医用ロボットなど、幅広いソフトロボット、ソフトデバイスの展示が行われた。すべてが実物を伴う展示であり、実際にやわらかさを触って体験し、また、動く様子を見ることができるため、一般の来場者にも直感的にわかりやすい展示となった。
また、ソフトロボティクスの応用として、看護師向けの排泄ケア訓練シミュレータおよびうんちロボットは、これまであまり例のない看護分野とロボティクスの異分野融合による成果として展示された。これは、慶應義塾大学宮川研究室、東京工業大学前田研究室、東京工業大学 鈴森・難波江研究室の共同研究である。
さらに、たんぱく質のスケールモデルや、圧力分布を可視化できる新しい蛍光分子など、やわらかい分子の世界を紹介する展示も行われた。ロボティクスと化学の間に新しい接点が生まれることが期待される。
トークセッションについて
トークでは、研究者らが先端研究についてわかりやすい紹介を行い、設定したトピックについて数名の研究者がさまざまな観点からディスカッションを行った。
1日目には次のようなトピックでトークおよびパネルディスカッションが行われた。
- ソフトロボット学とは?
- 発動分子科学とは?
- ソフトメカニズム
- ソフトロボットの社会実装
- ソフトロボットとマテリアルの融合
2日目には、対象を小学生以上として、より平易な内容で次のようなトピックでトークおよびパネルディスカッションが行われた。
- やわらかいロボットとは?
- 分子のマシンとは?
- やわらかいメカニズム
- 社会に役立つやわらかいロボット
- やわらかいロボットとマテリアルの融合
期間中、ラジオ局やウェブメディアによる取材も入り、ソフトロボティクスおよび関連分野のおもしろさや重要性を専門家でない人に伝えることができたイベントとなった。