
「変形ロボット」特集について
【展望】
- 自己組織化ロボットの振り返りと変形(自己再構成ロボット)の展望(福田 敏男)
【随想】
- モジュラーロボットから分子ロボットへ(村田 智)
【解説】
- 宇宙開発における変形ロボットの挑戦(吉田 和哉)
- 玩具技術を用いた月面探査事業参画と,取得ノウハウの地上展開について(赤木 謙介・米田 陽亮・渡辺 公貴)
- 多リンク型飛行ロボット(趙 漠居)
- コンポーネント型トランスフォーマーロボットシステムの構成法(真壁 佑・長谷川 峻・岡田 慧)
- 柔剛切替機構の原理・実機具現化(渡辺 将広・多田隈 建二郎)
- ソフトロボット学からみた変形ロボット(新山 龍馬)
- 光る生き物に学ぶ次世代の変形ロボット材料(草間 健吾・大石 篤郎・長瀬 美樹・新竹 純)
- 変形ロボットのFall Recovery への応用(木村 航平)
ロボットの形態は,車輪型・人型・多肢多脚型・飛行型・ローバ型・索状型・倒立振子型など多岐にわたり,活動する環境や置かれた状況,与えられたタスクごとにその都度その形態を有する機体を設計開発してきました.本会誌でもこれらの形態を有するロボットに独立して焦点を当てて多くの特集が組まれています.
一方で,同一の機体でこれら複数の形態へ包括的もしくは部分的にでも変化可能な変形ロボットが誕生すれば,実世界で直面し得る多様な環境やシチュエーション,多様なタスクに対してロボットを身体性の観点から賢く適応させることができます.先駆的には,本会誌「モジュラーロボット」特集(2003年Vol. 21 No. 8)において,CEBOTやM-TRANをはじめとする変形可能なモジュール型の動的自己再構成ロボットの当時の可能性が示されています.20年ほど経った現在では,日本ロボット学会学術講演会(RSJ2025)オーガナイズドセッション「身体可変構成ロボティクス」や,第158回ロボット工学セミナー「機械特性が変化する「可変」ロボットの仕組みとその応用事例」をはじめ,複雑化する身体可変構成における知的なモデル化・最適化や,形態の変化に限らず剛性などの機械特性の変化にも着目した変形ロボットに関する最新の知見の共有とその議論が展開されています.
本特集では,形態A⇔形態Bのような離散的な変化を伴う変形ロボットに加えて,決まった形態をもたない連続的な変化を伴う変形ロボットも含めて,幅広い専門家の方々にこれまでの取り組みや最新の動向をご解説いただきました.本特集の領域は,自己組織化ロボット・自己再構成ロボット・モジュラーロボット・分子ロボット・宇宙ロボット・月面探査ロボット・玩具ロボット・飛行ロボット・索状ロボット・4足ロボット・ヒューマノイドロボット・車輪移動ロボット・レスキューロボット・ソフトロボット・インフレータブルロボット・水中ロボット・生物規範ロボットなど,多様でありこれらの領域を「変形」という軸で横断する形で構成されます.Transformable,Reconfigurable,Deformable,Stiffness-Variable,Inflatableといった変形可能性の観点から,宇宙空間・月面上・空中・火中・水中・不整地上・細胞内に至るまで,広く「環境適応」「タスク実現」「自己保護」等の変形戦略に関してご寄稿いただきましたことに感謝申し上げます.(木村航平 電気通信大学)



