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第155回 陸・海・空!フィールドで活躍するロボットや センシング技術の開発とその勘所(実施報告)


第155回ロボット工学セミナー実施報告
「陸・海・空!フィールドで活躍するロボットや センシング技術の開発とその勘所」

日時:2024年8月2日(金) 10:00-17:00
会場:オンライン
参加者:40人
オーガナイザ:水野勝紀(東京大学)
サブオーガナイザ:藤永拓矢(大阪公立大学)
セミナーURL:https://www.rsj.or.jp/event/seminar/news/2024/s155.html


セミナー概要

地球温暖化などの気候変動や超高齢化社会など,人類が直面している課題は多岐に渡ります.その課題解決に向けて,アクセスが困難な環境情報を取得するためのロボットやフィールドワーカーの担い手になり得るロボットなど,これまで以上にフィールドロボットやフィールドセンシング技術への期待が高まっています.本セミナーでは,極地を含む多様なフィールドにおける環境計測や農業,水産業などに貢献しているロボットやセンシングシステムの開発者をお招きし,最新の技術や成果に加え,フィールドロボット開発ならではのknow-howや運用上の勘所などについてご紹介いただきました.


第1話 養殖魚の食いつき度判定のためのセンサシステム

九州工業大学 西田 祐也様

水中カメラ映像とAI 技術を用いて養殖魚の餌の食いつきを判定し,餌を自動的に与える技術の開発についてご講演いただきました.特に,養殖場の多くは透明度が高くないため,濁水下でも生け簀全体の養殖魚の餌の食いつき度を判定可能な流速センサに基づくシステムについて,その設計思想や技術的な課題,今後の展望について,現場の実際のデータを交えながらご紹介いただきました.濁水であることに加え,気泡が多く存在している養殖場では,光学も音響も利用することが難しい状況で,流速を利用するという新しい視点に今後の養殖魚モニタリングの一つの方向性を示されました.


第2話 農業ロボット

東京大学 海津 裕様

冒頭で,農業ロボット全般に関する整理と現在までの農業に特有の問題点についてご紹介いただき,その後,これまでに開発されてきた各種の小型農業ロボットに関してご講演いただきました.また,農業だけではなく,湖沼といった自然環境において,環境モニタリングや,水草の刈払いといった作業を自動的かつ広範囲に行うロボットについてもご紹介いただきました.ロバスト性,コスト,位置推定精度などの観点から,移動ロボットをどのような思想に基づいて設計されているかについてご意見をいただきました.最後に,農業ロボットの動力源としてウマやウシを使う古くて新しいアプローチについてもご紹介いただき,これまでにない観点から農業について考える重要性についてもご説明いただきました.

 

第3話 自律型海中ロボット(AUV)の研究開発動向と極域探査

東京大学 巻 俊宏様

冒頭で, AUV (Autonomous Underwater Vehicle) の概要と国内外での研究開発動向についてご説明いただき,技術的な課題のみならず,日本において産業化を進める上での課題(海中技術の負のトライアングル)についてもご紹介いただきました.後半では,AUVを用いた南極探査に関するご講演をいただきました.南極探査ならではの技術課題やそれを解決するためのロボットの設計思想についてご教示いただき,その後,実際に実施された南極探査例について,AUV MONACAの実際のハードウエア,ソフトウエア情報とともに,取得されたデータを交えてお話いただきました.人類が未踏なエリアを探査する際の難しさや面白さについては特に興味深い部分でした.


第4話 自律型海中ロボットの連携による無人海洋探査

明治大学 松田 匠未様

本講演では,複数の AUV による協調ナビゲーション技術や実機による実環境試験についてご紹介いただきました.特に,海洋探査における時間の制約,空間の制約を克服するためのロボット連携のアイデアについて,理論から実際のデータ解析まで,詳細にご説明いただきました.海底ステーションを用いる方法やAUV自身がランドマーク(測位基準)になり,その間,他のAUVが自己位置推定を行いながら観測範囲を広げていく手法や,親機と子機が連携して効率的に探査する手法についてご紹介いただきました.複数AUVの協調については,海洋開発における水中人工物モニタリングなどにおいて,重要な技術であり,今後もその進展が望まれます.


第5話 水上での航行及び発着が可能な固定翼ドローン

株式会社スペースエンターテインメントラボラトリー 金田 政太様

冒頭で,固定翼UAV(Unmanned Aerial Vehicle)について概要をご説明いただき,後半でこれまでに開発されてきた自動離着陸や長距離飛行が可能な飛行艇型ドローン「ハマドリ」シリーズについてご紹介いただきました.プロトタイプ開発の話では,当時の設計戦略や想定外の課題との遭遇,その解決方法についてもご説明いただきました.また現在,産官学連携で進められているプロジェクトについてもご共有いただき,これまで世の中になかった新しい観測プラットフォームとしての期待を感じました.最後に,能登エリアにおける災害地撮影による,フィールドロボットならではの活躍事例についてご紹介いただきました.


第6話 水空合体ドローンによる遠隔水中点検

株式会社KDDI総合研究所 西谷 明彦様

海中の新しいインフラになりえる水空合体ドローンの開発に関してご紹介いただきました.既に商用化されているモバイル回線を利用して空中ドローンを管制するプラットフォームをベースに,このドローンプラットフォームを水域まで拡張し,人が船で現場に行かずとも遠隔から飛ばして水中まで点検可能な水空両用型のドローンの開発について,実証試験の結果を交えてご説明いただきました.水中での測位精度の重要性を改めて示されたとともに,その解決策としての新しい水中通信技術についても,その課題と展望についてご紹介いただきました.