■未来のロボット工学を拓く若き才能の集い

オープンフォーラム「U18 Robotics Forum 2026」
第44回日本ロボット学会学術講演会で2026年9月1日、オープンフォーラムとして日本ロボット学会教育事業計画委員会が主催する「U18 Robotics Forum 2026」が開催されました。18歳未満のロボットに関連する活動に参加している生徒のみなさんの活動をアピールし,同じような興味・関心を持つ他校の生徒と交流する場として日本ロボット学会が開催しているものです。参加生徒たちは自らの探究活動を学術的な場でアピールし、専門家や同世代と切磋琢磨する場として活用できます。

オーガナイザーの名城大学 理工学部 教授 大原賢一氏
今回のオーガナイザーは名城大学 理工学部 教授の大原賢一氏です(研究室ホームページ https://wwwms.meijo-u.ac.jp/kohara/)。大原氏は開会の挨拶で「単なる成果の発表に留まらず、参加者同士、そして大学の研究者たちとの交流を通じて、将来のロボット界へ足を踏み入れる志を育んでほしい」と語りかけました。
参加チームは今回は7つ。発表形式は2分間のライトニングトークと、ポスター発表です。まずはじめに各チームが2分間で研究の要点をかいつまんで順番に話し、その後は自由に、あらかじめ貼っておいたポスター(と、一部実物)の前で、詳しい説明を行います。
本会の最大の特徴は、参加した生徒も教諭も、そして訪れた研究者も、会場にいる全員が審査員となる相互評価制度にあります。「対等な対話」の精神を重視しているのです。
■探求の軌跡:高校生7チームによる独創的なプロジェクト詳報
発表された7つのプロジェクトには、それぞれ技術的な完成度もさることながら、限られたリソースや本番環境での不具合といった壁に対し、いかに向き合ったか、成長のプロセスが反映されていました。
各チームの挑戦について、ざっと紹介します。
1. Tezukayama Rise(帝塚山中学校・高等学校)

Tezukayama Rise(帝塚山中学校・高等学校)のメンバー
「Tezukayama Rise」は、女子生徒だけで構成されたロボットチームです。チーム結成のきっかけは、ある女子生徒が「FTCに挑戦してみたい」と考えたことでした。FTC(FIRST Tech Challenge)は、学生たちが自分たちでロボットを製作し、プログラミングして競技に挑む国際的なロボット競技です。まだ女子の参加者が少ないロボット競技に挑戦することで、STEAM分野への女性の参加という社会的な課題にも取り組んでいます。FTC出場に向け、クラウドファンディングでの資金調達や小学生向けWS開催など、多方面に活動を展開しています。
チームの大きな特徴は、メンバーの多くがロボット分野の未経験者だったことです。単にロボット競技で良い成績を残すことだけではなく、「経験や性別、得意分野に関わらず、誰もがチームの中で自分らしく輝くこと」の実現を目指しています。ロボットを作るためには、機械を設計する人、プログラムを書く人、実験や調整をする人など、さまざまな役割が必要だからです。

「Tezukayama Rise」で製作したロボット
実際に製作しているロボットはオーソドックスな構成です。メカナムホイールを採用することで、前後左右への移動に対応。グリッドプレートを湾曲させて使用し、二つのボールを収納できる機構も製作しています。こうした機構は、3Dプリンターなどを活用しながら、自分たちで設計・製作・改良したそうです。
ロボットの機能は、あれもこれもと欲張りたくなります。ですが、動かなければ意味がありません。生徒さんからも「勝ちたいじゃないですか。やっぱ勝つためには、いや、あれちゃんと動かせないとダメなんでどこを取るかっていうのを考えました」とのことでした。勝つために「あえてやらない機能を決める」ことは、エンジニアリングにおける重要な取捨選択のプロセスです。
プログラミングにも力を入れています。フィールド指向制御を取り入れ、ロボットの向きに左右されずに移動できるようにしています。また、座標変換や指数スケーリングなどを利用して、操作性を高めています。さらにFTC Dashboardを使い、プログラムを毎回作り直すことなく、リアルタイムでパラメータを調整できる仕組みも導入しています。
ソフトウェアの構造も改善しています。サブシステムクラスを活用することで、コードを136行削減しました。プログラムを整理することで、修正や機能追加をしやすくしています。また、適応型ローカライザを導入し、2輪構成と3輪構成のどちらにも柔軟に対応できるようにしています。
競技では2026年1月の東京プレ大会では16チーム中3位となり、その後の韓国予選大会にも出場して72チーム中22位という成績を収めました。「やってみたい」という一人の思いから活動が始まり、その思いに仲間が加わり、学校や企業、地域の人々へとつながっていることが特筆すべき点です。経験がないことを理由にあきらめるのではなく、実際にやってみながら学んでいく。その過程で自分の得意なことを見つけ、仲間と協力し、さらに次の世代へ経験を伝えようとしているのです。
2. 愛知県立小牧工科高等学校

愛知県立小牧工科高等学校の情報デザイン科
愛知県立小牧工科高等学校の情報デザイン科の生徒たちは、Groove X製の家族型ロボット「LOVOT」を用いた地域・特別支援学校との交流について発表しました。プロジェクトのタイトルは「LOVOTで広がる支援の輪」。ロボットの「LOVOT」とチャットボットを活用し、地域や世代を超えた交流を生み出す取り組みに挑戦しています。ロボットを使って人間の仕事を置き換えるのではなく、「ロボットをきっかけとして、人と人との関わりを増やす」ことを目指している点が、この活動の大きな特徴です。
高齢化が進むと、日常生活を支える人材が不足するだけでなく、地域の中で人と人が交流する機会も減ってしまう可能性があります。また、周囲の人と話したり相談したりする機会が少なくなれば、孤独やストレスといった問題につながることもあります。そこで生徒たちは、LOVOTの持つ親しみやすさを生かして、人が交流するきっかけを作れないかと考えました。
彼らはLOVOTを活用した支援を「交流支援」「生活支援」「心の支援」の三つに分けています。交流支援では、LOVOTを使って親子や地域社会の交流を促進します。生活支援では、買い物チャットボットを活用し、高齢者や障がい者などが自立した生活を送るための支援につなげようとしています。そして心の支援では、会話チャットボットを利用し、会話によって精神的なストレスを軽減することを目指しています。

LOVOTを使って「人と人とが助けあえる環境作り」
彼らはLOVOTの「かわいさ」や「心地よさ」を、人との関係を生み出すための特徴として捉えて取り組みました。ロボット自体は高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)の貸与機材であるため「分解・改造禁止」という制約がありました。その限界の中で、そこで「スケッチ」を用いたプログラミングと、人間との関係性を構築するインタラクション・デザインに注力しました。これまでの取り組みでは、修学旅行などでのお土産購入を想定した買い物チャットボットや、心のストレス軽減を目的とした会話チャットボットを開発しています。
ロボットの活用方法は「人間の作業を自動化すること」だけではないのです。ロボットには、人が興味を持つ対象になったり、会話を始めるきっかけになったり、人と人をつないだりする役割も考えられるわけです。技術だけでは人は動かせません。だからこそ、人が自然に近づきたくなるロボットの特徴を生かし、そこからコミュニケーションを生み出そうとしているのです。「ロボットが人を助ける」のではなく、「ロボットがいることで、人と人が助け合える」環境を作る。そういう発想です。
3. 三田国際科学学園高等学校

三田国際科学学園高等学校の安西創介さん
三田国際科学学園高等学校の安西創介さんは、「地上走行ロボットとドローンの組み合わせによる不整地の克服と災害対応ロボットへの利用」をテーマに研究しています。災害が発生した現場では、道路が壊れていたり、がれきが散乱していたりするため、通常の車両やロボットが移動できない場合があります。また、災害対応では、現場の状況をできるだけ早く確認し、必要な情報を集めることが重要です。そこで、この研究では、地上を走るロボットと空を飛ぶドローンを組み合わせ、それぞれの長所を生かして災害現場で活動できるロボットを目指しています。
地上走行ロボットは、ドローンに比べて大きな荷物を運ぶことができます。一方で、段差や大きな障害物を乗り越えることは苦手です。ドローンは上空から広い範囲を調査でき、地上からでは確認しにくい場所を見ることができますが、飛行時間が短く、環境の影響を受けやすいという弱点があります。この二つを組み合わせることで、それぞれの弱点を補うことができます。
開発しているのはドローンがワイヤーを運び、地上ロボット(UGV)がウインチで巻き取ることで、急斜面や階段を突破する災害対応プラットフォームです。既製品に理想のサイズがない中、バイクのタイミングベルトを履帯に流用し、その歯形に合わせたホイールを3Dプリンターで自作したとのことです。
特に工夫されているのが、不整地を乗り越えるためのウインチ機構です。ウインチとは、ワイヤーなどを巻き取ることで、物体を引っ張るための装置です。研究では3Dプリンターを使ってウインチを製作し、プーリーとギア比を工夫することで大きなトルクを得られるようにしています。実際に傾斜地で実験を行い、ウインチを使わなければ登れなかった斜面を、ウインチの補助によって乗り越えることに成功しています。

開発したロボットについて解説する安西さん
ただし、実験を通じて新たな課題も見つかっています。現在のウインチには、巻き取り時の強度が不足しており、大きな力がかかるとワイヤーにずれや破損が生じる問題があります。今後は、より強度の高い材料を使ったり、構造やデザインを改善したりする必要があります。
また、現在はドローンを展開する作業や、展開したドローンを固定する作業を手動で行っています。そのため、サーボモーターやユニバーサルジョイントなどを利用し、ドローンの展開や固定を自動化することも今後の課題になっています。糸が絡まった際の「自己切断(セーフティ)」機能の必要性などにも課題が残っています。
移動・運搬のプラットフォームとした地上走行ロボットと、広域調査用のドローンを組み合わせることで、単独のロボットではできないことが可能になります。研究では「地上走行ロボットが現場付近まで移動する」「地上からの確認が難しい場合にドローンを離陸させる」「ドローンが移動可能な場所を探す」「着地したドローンを固定する」「地上走行ロボットがウインチを使って不整地を突破する」という一連の動作を想定しています。「どのようなロボットを作るか」だけでなく、「どのような環境で、どのように使うのか」まで考えて開発している点が、この研究の大きな特徴です。
なお今回はチームでの活動が多かったですが、ここは基本的に安西さんが一人で「放課後に居残って、ひたすらアルミフレームを買い足し、3Dプリンターを回す」ことでコツコツと検証を積み重ねて開発したとのことでした。
4. 愛知県立岡崎工科高等学校 情報デザイン科

愛知県立岡崎工科高等学校 情報デザイン科の発表
愛知県立岡崎工科高等学校の情報デザイン科3年生の二人は、「指定されたワークを正確に運ぶロボットの製作」というテーマでロボットの開発に取り組んでいます。8月1日、2日に開催された「第21回若年者ものづくり競技大会」のロボットソフト組込み職種への出場を目指して行なった開発です。競技では、決められたルールに従ってロボットを動かし、指定された色のワークを指定された場所まで正確に運ぶ技術が求められます。そのため、生徒たちは大会の競技内容を想定しながら、ロボットの機械部分から制御プログラムまで自分たちで設計・製作しています。
ロボットは4輪の車体にアームを組み合わせた構造です。車体にはStudica製のTitanモーターコントローラーとVMXを搭載。12Vバッテリー2個を並列接続して動力を供給しています。タイヤは4輪二輪駆動の構成で、10度のキャンバー角をつけています。アームはサーボモーターによってラックを動かして上下させ、先端部分はDCモーターによって前後・左右に回転できるようにしています。この構造によって、ワークの位置や向きに合わせてアームを調整し、ワークをつかんで運べるようにしています。旋回動作を省くため、アーム自体を360度回転させる機構を開発したのです。
前方には赤外線センサー、後方には超音波センサーを配置し、位置補正などに利用しています。また、モーターの回転量を利用してロボットがどれだけ移動したかを計算するオドメトリにも取り組んでいます。なおオドメトリとは、車輪やモーターに取り付けたエンコーダーから得られる回転量を利用して、ロボット自身の位置や向きを推定する方法です。このロボットでは、左右二つのモーターのエンコーダー値からそれぞれの移動量を計算し、その平均値からロボット全体の移動距離を求めています。さらに、ロボットの向きの変化も計算し、現在位置を推定します。最終的には、スタート地点から目標地点までの軌跡を計算し、指定された場所へ正確に移動できるようにしています。

作成したロボットの構造
プログラムについては、C++を中心に開発しています。特に「Command-Based Framework」を利用し、走行、アーム、センサーといった機能をそれぞれ分けながら、スケジューラーによって一つのシステムとして管理しています。ロボットの制御に必要な機能を整理して構築することで、複雑な動作を扱いやすくしています。
画像処理にも取り組んでいます。PythonとOpenCVを使用し、カメラで撮影した画像からラインやボールの色などを識別します。ポスターでは、黒いラインを読み取る処理や、青、赤、緑、オレンジといった複数の色のボールを識別する処理が紹介されています。C++側から取得した情報をSmartDashboardやNetworkTablesを通じてPython側へ渡し、カメラ画像を処理する仕組みも構築しました。
重要な点は「決められた場所へ正確にワークを運ぶ」という目的に対して、複数の多様な技術を組み合わせているところです。ロボットの各機能を一つずつ作り込むだけでなく、それらを組み合わせて競技中の一連の動作を実現することが重要になります。
本番では残念ながら練習環境とは異なる「本番のマットの摩擦」や「照明環境」による予測不足を痛感する結果となったそうですが、ものづくりの一連のプロセスを経験し、実戦におけるロバスト性(堅牢性)の重要性を感じてくれた彼らは次世代機への糧としてくれるに違いありません。
5. 神戸市立科学技術高等学校 科学工学科 ロボティクス研究室

神戸市立科学技術高等学校 科学工学科 ロボティクス研究室 井上遼さん
神戸市立科学技術高等学校 科学工学科 ロボティクス研究室の井上遼さんは、「地上における運搬ロボットの駆動方式の検討」という研究に取り組んでいます。地上を走行する運搬ロボットについて、どのような駆動方式が環境に適しているのかを実験によって比較したというものです。
運搬ロボットは、工場や倉庫などで荷物を運ぶために利用されています。しかし、ロボットが走る場所は必ずしも平らで滑らかな床とは限りません。屋外や災害現場などでは、砂利や段差、傾斜などによって走行が難しくなることがあります。そのため、運搬する荷物の重さだけでなく、どのような場所を安定して走れるかという点も、ロボットの重要な性能になります。
そこで、この研究では、地上を走るロボットの駆動方式として「4輪」「クローラー」「4足」の3種類を比較しています。走行タイムや揺れ角度をLEGO Spike Primeで比較しました。実験結果をもとに、兵庫県で行われる「ひょうごロボット競技大会」に使用する運搬ロボットの駆動方式を検討することが目的です。
競技では、3分間の制限時間の中で、9個の立方体を積み上げます。通常のブロックに加えて、通常の2倍の得点が得られるエクストラブロックも用意されており、どのようにブロックを運んで積み上げるかが重要になります。つまり、単に速く走るだけでなく、荷物を載せた状態で安定して移動できることが求められます。

「4輪」「クローラー」「4足」の3種類の走行性能を比較
実験では3種類のロボットを複数のコースで走らせ、走行タイム、可搬重量、転倒回数、ロボットの揺れ角度という4項目を測定しました。コース1は比較的平坦な環境、コース2は砂利などを含む不整地、コース3はさらに走行が難しい環境として設定されています。
平坦なコース1では、4輪ロボットが3.89秒で最も速く走行しました。クローラーは4.91秒、4足ロボットは17.25秒でした。可搬重量は4輪とクローラーがともに341gで、4足は95gでした。転倒回数と揺れ角度はいずれも0で、平坦な場所では4輪ロボットとクローラーが速さと安定性の両方で優れていることが分かります。
一方、コース2になると結果が変わります。4輪ロボットの走行タイムは6.05秒、クローラーは5.11秒となり、クローラーの方が速くなりました。可搬重量も4輪が304gだったのに対し、クローラーは341gを維持しています。揺れ角度も4輪が±7度だったのに対し、クローラーは±2度でした。4足ロボットは21.85秒と大幅に遅く、可搬重量も50gにとどまり、4回の転倒が発生しています。揺れ角度も±39度と大きくなりました。
さらに難しいコース3では、クローラーの優位性がより明確になりました。4輪ロボットは6.31秒、クローラーは5.25秒で走行し、クローラーの方が速い結果になっています。可搬重量も4輪が268gだったのに対し、クローラーは336gでした。転倒はどちらもありませんでしたが、揺れ角度は4輪が±13度、クローラーが±9度となり、クローラーの方が安定していました。4足ロボットは28.13秒かかり、荷物を運ぶこともできず、6回転倒しました。
これらの結果から、整地だけでなく不整地でも安定して運搬するにはクローラーが適していると考えました。一方、4輪方式には平坦な場所で高速に走行できるというメリットがあります。実際にコース1では3種類の中で最も速い結果でした。走行環境に応じて駆動方式を選択することの重要なのです。
今後は、今回の実験結果をもとに、実際の運搬ロボットの設計・製作に取り組む予定です。また今後はジャイロ機能を利用することで、ロボットの傾きや姿勢をより正確に測定し、実験の精度を高めることも考えています。
身近なLEGOを使いながら、実際のロボット開発にもつながる考え方を検証しているところがこの実験の特徴です。ロボットの性能は、モーターやプログラムだけで決まるわけではありません。「どのような場所で、何を運び、どの程度の安定性が必要なのか」によって、車輪やクローラー、脚などの駆動方式を選ぶ必要があります。実験を行い、検証する。ものづくりの基本的なプロセスを実践している研究です。
会場での議論では、表形式のデータをより直感的なグラフへと昇華させる「データの可視化手法」について、実践的なアドバイスが送られていました。
6. SAKURA Tempesta

「SAKURA Tempesta」の発表
「SAKURA Tempesta」は、複数の高校・大学のメンバーが参加するロボットチームで、FRC(FIRST Robotics Competition)に取り組んでいます。今回の研究では、「FRCロボットにおける自動射出機構と制御について」をテーマに、ロボットからボールを狙った場所へ正確に射出するための仕組みを開発しました。
FRCでは、ロボットが「FUEL」と呼ばれるボールを「HUB」というゴールに入れる競技があります。単にボールを発射するだけではなく、試合中にはロボット自身が移動しながら、敵チームのロボットの妨害なども受けることになります。そのため、どこからでも同じようにボールを投げればよいわけではありません。HUBまでの距離に応じて射出条件を変え、動いているロボットからでも正確にボールを入れることが重要になります。
そこでSAKURA Tempestaは、ボールを自動的に射出する「シュ―ター」を製作しました。シュ―ターは、回転するホイールと曲面状のガイドの間にFUELを挟み込み、ホイールの回転によってボールを送り出す仕組みです。ホイールを高速で回転させることで、ボールに速度を与えて射出します。

ボールを射出する「シュ―ター」機構
シュ―ターには三相ブラシレスモーターを2基採用。ホイールそのものを重くすることで慣性モーメントを大きくし、回転速度が変化しにくくなるよう工夫していました。ホイールにはポリカーボネート板を使用し、支柱やガイドと組み合わせてFUELを安定して射出できる構造です。
しかし、シュ―ターの性能を高めるだけでは、試合中に正確な射出を行うことはできません。例えば、HUBから3m離れた位置と4m離れた位置では、ボールを届かせるために必要な初速度が異なります。そのため、まず実験によって、ホイールの回転数とFUELの初速度がどのような関係にあるのかを調べました。実験の結果、HUBから遠くなるほど、より高い回転数が必要になることが確認されました。
実際のロボットを自動制御するプログラムも開発しました。ロボット自身の位置とHUBまでの距離を取得し、実験データから必要なシュ―ターの回転数を求めます。試合中はロボットが停止しているとは限りません。ロボットが移動しながら射出する場合、ロボット自身の移動速度もボールの射出に影響します。そこで、この研究では単純に「HUBまでの距離→必要な回転数」とするだけではなく、ロボットの移動による影響も考慮して射出速度を補正することを目指しています。ロボットが動いている状態でも、HUBに向かって適切な速度でボールを射出できるようにする仕組みを作りました。

実験データを積み重ねてロボット制御に活用
この研究で興味深いのは、開発者の「感覚」ではなく膨大な投射実験データに基づいて得られたデータをロボットの制御に利用していることです。まず実際のシュ―ターを動かしてデータを集め、回転数と初速度の関係を調べます。そのデータをもとに、HUBまでの距離に応じた回転数を決める。そして、その計算をプログラムに組み込み、自動的に射出条件を設定します。実験、モデル化、プログラムへの実装という流れになっています。「どのくらいの回転数なら、どのくらいの速度でボールが飛ぶのか」という実験データを集め、それを自動制御につなげている点が重要です。
本番ではプログラムの調整不足、バッテリー電圧の変動、練習環境と大会会場の違いなどに苦しみ、思うようなパフォーマンスが出せない悔しさを味わったそうですが、ポスターセッションではその論理的なアプローチが高く評価されました。またそもそも、ロボット開発においては最初から完璧なものを作ることよりも、実際に動かしてデータを集め、問題を見つけ、改良するサイクルを何度もできるだけ高速で繰り返すことが重要です。
7. 愛知県立瀬戸工科高等学校 ロボット工学科「SIリーグ班」

愛知県立瀬戸工科高等学校のロボット工学科「SIリーグ班」の発表
愛知県立瀬戸工科高等学校のロボット工学科「SIリーグ班」は、産業用ロボットを使った自動化システムの開発に取り組んでいます。SIとは「System Integration(システムインテグレーション)」のことで、ロボットやセンサー、機械装置、プログラムなどを組み合わせ、一つの自動化されたシステムとして動かすことです。SIリーグでは、高校生が産業用ロボットを使い、決められた課題を解決するシステムを設計・製作しています。
瀬戸工科高校が昨年度取り組んだテーマは、ペットボトルの処理を自動化するシステムです。競技では色んな種類のペットボトルを見分け、指定された場所へ運ぶ必要があります。ペットボトルには、キャップが付いているもの、キャップが外れているもの、飲み残しが入っているものなどがあり、それぞれを適切に分別することが求められました。短い競技時間の中で複数のワークを処理する必要があるため、正確さだけでなく、速さや安定性も重要になります。

産業用ロボットを使ってペットボトル分別を行うシステムを開発する
昨年度のチームは、アームロボットを中心とした自動化システムを製作しました。システムには、ペットボトルを供給する装置、キャップを外す装置、ワークを判別する仕組みなどが組み込まれています。単にロボットだけではなく、周辺の機械装置まで含めて一つのシステムとして設計しています。
特にペットボトルを1本ずつアームロボットに渡す「供給装置」に工夫がみられます。最初はコンベアを使ってペットボトルを運ぶ方式を検討しましたが、装置のコスト、制御の複雑さなどを考えて、重力を利用してペットボトルを供給する方式を採用しました。傾斜を利用してペットボトルを自然に移動させ、必要なタイミングで1本ずつ送り出す仕組みです。

開発したシステムの全体図
しかし実際に製作してみると、ペットボトルが供給装置の内部で詰まったり、複数本が同時に出てきたりする問題が発生しました。そこで、装置を作って終わりにするのではなく、実際に動かして問題を発見し、構造を修正する作業を繰り返しました。最終的には、ペットボトルが1本ずつ安定して供給されるように改良したとのこと。チームは、装置を完成させるためには実際の動作を確認しながら改良していくことが重要だと学びました。

開発過程で機構を改良
もう一つ、「キャップ外し機構」も開発しました。ペットボトルのキャップをロボットシステムで自動で外すには、キャップの位置や大きさ、ペットボトルの形状などを考慮する必要があります。専用の機構も検討しましたが、装置が複雑になることや処理時間などが課題だと考えられました。そこで、アームロボットを利用してキャップを外す方式を工夫しました。ペットボトルを固定した状態でアームを動かし、キャップをつかんで回転させて取り外します。異なる種類のペットボトルにも対応できるように、機構や位置を調整しています。昨年度はこうした装置を開発した結果、SIリーグの全国大会で優秀賞、全国2位という成果を上げました。

キャップ外し機構も開発
今年度は、昨年度と同じシステムをそのまま使うのではなく、昨年度は5種類だったワークを6種類に増やし、新たなペットボトルへの対応を目指しています。今年度の開発で重視しているのは、「安定性」です。ロボットシステムは何度繰り返しても同じように動くことが重要だからです。

開発されたロボットシステム
また、今年度は「チャレンジワーク」も追加しています。これは従来より難易度の高い対象を扱うことで、システムの対応力を高めるための取り組みです。チームは「リソース配分の重要性」「プログラム最適化の重要性」「プロジェクト管理と計画」「コミュニケーションと協力の大切さ」を学んだとのことでした。SIリーグの活動は機械設計、加工、組み立て、電気、ロボットの制御、プログラミングなど、多くの作業が関係しメンバー同士で役割を分担し、情報を共有しながら開発を進めることも重要です。
昨年度の競技で実際に装置を動かし、そこで発生した問題を分析し、その経験を今年度の設計に反映している点、技術だけでなく、リソース配分や進捗管理といった「プロジェクトマネジメント」の徹底は参加者たちから高く評価されました。
高校生の段階で、実際の工場で行われている自動化システムの開発にも通じる「作る→動かす→問題を見つける→改良する」という開発サイクルを経験していることは、このチームの大きな特徴だと言えるでしょう。ロボットそのものだけでなく、周辺の機械装置やプログラム、そしてチームでの開発方法まで含めて改善している点に、この取り組みの面白さがあります。
■ポスターセッションにおける活発な議論と相互評価

ポスターセッションの様子
ショートプレゼンの後は、いよいよ本番の「ポスターセッション」です。「ポスターセッション」とは来場者に直接説明する発表形式です。聞き手と説明者が近い距離で説明を聞き、疑問点を互いに掘り下げ、議論することができます。

発表者・質問者のあいだの距離が近いのがポスターセッションの利点
会場に集まった専門家達からは、より実地を想定した、さまざまな質問が飛びました。いっぽう生徒たちは、部品加工の苦労や、センサーの活用法、練習場所の苦労、チーム内での知識の共有や役割分担などなど、さまざまな経験を踏まえて答えてしました。最初は互いに若干の緊張がありましたが、徐々に生徒たちも慣れていったようです。

直接、互いの疑問点や課題をぶつけることができます
また、オーガナイザーの大原氏による積極的なシャッフルも行われ、生徒たち同士による議論も行われました。学校や活動を超えてやりとりできたことは、何らかのプラスにつながったと思われます。

さまざまな議論が行われました



学校を超えた交流が自然にできる点もポスターセッションの利点
審査は、会場に集った全員によって行われます。評価すべきチーム二つに「○」をつけて投票する方式です。「全員が審査員」というしくみは、他者の技術をリスペクトし、多角的に観察するという、技術コミュニティの基本を学んでもらうことを想定しているからです。

投票は全員で行う方式

運営側も今後に向けてさまざまな相談を行なっていました
■栄誉と展望:努力の結晶としての授賞、そして次なるステージへ
授賞式は、互いの探究を称え合う場です。今回、みんなの投票結果は以下のとおりでした。
* 最優秀賞:愛知県立瀬戸工科高等学校 ロボット工学科「SIリーグ班」
* 優秀賞: Tezukayama Rise(帝塚山中学校・高等学校)、SAKURA Tempesta
* 奨励賞: 愛知県立小牧工科高等学校、三田国際科学学園高等学校、愛知県立岡崎工科高等学校 情報デザイン科、神戸市立科学技術高等学校 科学工学科ロボティクス研究室
最優秀賞を獲得した愛知県立瀬戸工科高等学校からは「取れるなんて思ってなかった。この活動をやれて良かったです」という言葉がありました。そのほか各チームからも、学校の支援や予算、そしてチームワークへの感謝が述べられました。また、本番で実力を出し切れなかったチームからも「当日なかなか動かなくて、でもその結果をこうして発表で皆さんに見せてもらって評価してもらうことができて本当に嬉しいです」という言葉があり、未来に向けた気持ちが感じられました。

奨励賞: 愛知県立小牧工科高等学校

奨励賞: 三田国際科学学園高等学校

奨励賞:愛知県立岡崎工科高等学校 情報デザイン科

奨励賞:神戸市立科学技術高等学校 科学工学科 ロボティクス研究室

優秀賞:Tezukayama Rise(帝塚山中学校・高等学校)

優秀賞:SAKURA Tempesta

最優秀賞:愛知県立瀬戸工科高等学校 ロボット工学科「SIリーグ班」
■活動を自分の糧にして

日本ロボット学会学会長 久保田哲也氏((川崎重工業 理事)
最後に、日本ロボット学会学会長の久保田哲也氏((川崎重工業 理事)から「みなさんの中には、ロボットの道に進む人もいれば、進まない人もいるかと思います。しかし、今日みなさんの活動を見ていて、若い頃から本当に素晴らしい活動ができていると感じました。 これから日本のロボットや世界のロボット界を背負って立つ人も出てくると思いますし、この経験をもとに別の世界に進んでいく方もいると思います。 どのような道に進むとしても、本日の活動を自分自身の『糧(かて)』にして、これからも頑張っていってほしい」との激励が送られました。
2027年(第45回)の「日本ロボット学会学術講演会」は8月末に名古屋国際会議場で開催される予定です。そこでは「U18 Robotics Forum 2027」も行われる予定です。次回は実機を動かせるデモンストレーション・エリアの拡充も予定されています。ぜひ多くの方に参加してほしいとのことでした。

最後に全員で記念撮影
一部の生徒たちは発表の翌日にも残って、本格的な学会発表やスポンサー企業によるロボットデモの様子を見学していました。
学会では(人にもよりますが)気軽にロボットの専門家たちから直接、話を聞くことができます。彼らが将来どのような進路を歩むのかは誰にもわかりません。中にはロボティクスや機械工学への道を選ぶ人もいるでしょう。「航空工学に進みたい」と仰っていた生徒もいました。いずれにしても自分たちが大学生、大学院生になったときの姿を、少しだけくっきりと思い描くことができたのではないでしょうか。取材者である筆者も、彼らにはいろいろな人に出会い、いろいろな見方にふれ、いろいろな経験をしてもらいたいと思いました。
(文責:森山和道+教育事業計画委員会)


