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学生編集委員会企画「人とロボットの関係性をかたちにする:テクノロジーの通訳者 ロボットデザイナー園山隆輔」


1.はじめに

本企画はロボットデザイナーである園山隆輔氏への取材を行ったものである. 園山氏は2002年にフリーランスのデザイン事務所T-D-Fを設立し,様々なロボットのデザインを手掛けている. 特に,日本ロボット学会誌の表紙イラストで知られている. また,ヒューマノイド研究開発プラットフォーム「HRP-4」や双腕型作業支援ロボット「NEXTAGE」など,数多くのロボットデザインにも携わっている. 本取材では,園山氏の考えるロボットデザイナー像やデザインする上での考え方などについて伺った(図 1)(取材日:2025年12月6日).

 


図1:インタビュー時の様子.右:園山氏,左(手前から):新川,関.撮影:斎藤


2.「ロボットデザイナー」の定義と原点

 2.1 園山氏の考える「ロボットデザイナー」とは

— 園山氏にとって,デザインの定義やロボットデザイナーの役割とはどのようなものでしょうか?

デザインという言葉には様々な意味がありますが,私自身は「関係性を形にすること」だと捉えています. 新しいテクノロジーや新しいサービスが生活にどのような意味があるのか,それを手に入れて何が変わるのか,価格に見合う価値があるのか,このような要素を総合的に考え,形や名前,色を表現することがデザインの役割だと考えています. このプロセスを怠れば,技術的に成立しビジネス的に利益が出たとしても,「それって必要なの?」という疑問を払拭できず,ビジネスとして成り立たない. 特に,新しいテクノロジーでは「あなたにとってどんな意味があるのか」「どんなメリット・デメリットがあるのか」を明確に示すことが重要です. そのため,デザインはテクノロジーの通訳だと考えています.

ロボットという存在は,まさにこの関係性の設計が不可欠な領域です. 多くの人は漠然としたイメージを持っていますが,「生活がどう変わるのか」までは十分に説明されていないケースが多いと感じます. だからこそ,ロボットデザインの役割は関係性を明確にし,生活との接点を具体化することにあると考えています. 例えば,車の仕組みを内燃機関レベルで完全に理解している人は多くありません. それでも「このペダルを踏めば進む」「こちらを踏めば止まる」ということは直感的に理解できます. 単に操作を可能にするだけでなく,「こうすればこうなる」という因果関係を自然に理解できるように設計することです. これこそがデザインの力であり,それをロボットで実現するのがロボットデザイナーという職業です.


— 一般的な製品とロボットで,デザイナーの役割に違いはあるのでしょうか?

「関係性を形にする」という意味で、ロボットデザイナーも一般的なデザイナーも根本的に変わらないと思います. ただ一つ異なることは,関係性がすでに確立されているかどうかです. 例えば,炊飯器という言葉を聞いて,「掃除に使える」と考える人はいません. 「炊飯器」と明確に名付けられていれば,形が多少奇抜でも,人は「これは米を炊くものだ」と理解できます. 実際に,新幹線のような形をした炊飯器が流行した時期もありましたが,「炊飯器である」という前提が共有されていたからこそ,デザインの冒険が許されていたのだと思います. 一方で,ロボットはその段階に至っていません. だからこそ,地に足のついた関係性の提供を進める必要があると考えています.

ロボットにおける関係性を確立するには,目的を明確にすることが重要です. 炊飯器には,「早くおいしく米を炊く」という明確な目的があります. IH加熱などの技術は,それを実現するための要素技術にすぎません. ロボットの世界では,AIによる機械学習やモータによる素早く的確な動作が注目されていますが,これらも要素技術です. 例えば,人型ロボットの技術を,とりあえず人と同じことをさせればよいということで衣類の折り畳みへ応用されるとします. ここで,本当に人型でよいか議論する必要があります. 衣類の折り畳みなら,クローゼットやタンス型として内部で自動的に折り畳む仕組みの方が合理的かもしれません. このように要素技術と目的の関係性が不明瞭にならないように,目的を明確にする議論が重要だと考えます.

この要素技術と目的の関係性を明確にする上で,重要な役割を担うのがデザイナーだと考えています. 乗り物という言葉は上位概念であり,乗り物と一括りに言っても目的に応じて,三輪車や新幹線など様々なものがあります. ロボットという言葉も同様に上位概念の言葉だと考えています. 多種多様なロボットをすべて「ロボット」と定義してしまうと,議論が混乱してしまいます. そこで,最初から何でもできるロボットとするのではなく,子守ロボットや衣類畳みロボットなど,関係性を明確にすることが重要です. まず関係性を絞り込み,そのために必要な機能や技術を考えるべきです. そして,同時に実生活のどこで使用するのか議論する必要があります. 技術と目的を同時に議論する中で,「こんなことができれば楽しいのでは」と自由に発想することがデザイナーの役割だと考えています.


— 「人と技術の関係性」を重視するようになった背景には,どのようなきっかけがあったのでしょうか?

関係性に注目するようになったきっかけは,パナソニックの炊飯器に関するユーザーインタビューの経験にあります. 実際に製品を使用している主婦の方々から意見を聞く中で,ガス炊飯器からIH炊飯器に買い替えた方の事例が非常に印象的でした. 開発側は「よりおいしく炊けること」や「新しい加熱技術」の価値を重視していましたが,利用者が評価していた最大のポイントは「タイマー機能によって朝1時間長く寝られるようになったこと」でした.

この経験を通して,技術的な進歩や味の向上といった機能的価値よりも,「生活の中で何が変わるのか」「本人にとって何が一番大切か」という関係性こそが,本質的な価値であると気づかされました. つまり,製品と人との関係性は機能の優劣ではなく,「生活の優先順位」によって決まるものであり,そこにこそデザインが向き合うべきだと考えるようになりました. こうした経験から,技術そのものだけでなく,使用者と技術がどのような関わりを持つかという「関係性」に重きを置くようになりました.


2.2 憧れとデザインが重なり,ロボットデザイナーへ

— 「ロボット」に関心を持ったきっかけは何でしょうか?

私の世代の男子はほぼ例外なく,幼少期にロボットアニメの影響を受けています. 物心がついた頃には『鉄腕アトム』や『鉄人28号』がすでに名作として存在していました. そこに『ウルトラマン』のロボット怪獣や『ゴジラ』シリーズのメカニックな存在が加わり,『マジンガーZ』,『ガンダム』,そして『エヴァンゲリオン』と,ロボットに触れ続ける環境で育った世代です. 「どこがきっかけか」と問われると,「そういう時代に生まれてしまったから」としか言えません. 何か一つの作品がきっかけというより,継続的にロボットが身近に存在していた.それが自然な環境でした. ただし,学生時代に実際にロボットを作っていたかというと,そういう時代ではありませんでした. ロボットは現実の「職業」ではなく,空想や憧れの対象でした.

実在するロボットとして強く印象に残っているのは,大阪万博で見た巨大ロボットです. 太陽の塔の裏手にあったイベント広場に,高さ15メートルほどのロボット型オブジェが設置され,油圧で動き,スモークを吐く姿を目の当たりにしました. さらにエキスポランド内のロボット館では,当時の黎明期のコンピューターとともに,実際に動くロボットが並んでいました. 「ロボットは空想ではなく,現実に存在している」と初めて実感したのは,この体験だったと思います. とはいえ,当時はまだロボットが職業になるとは考えておらず,あくまで「夢の存在」でした.

その意識が変わったのは,ホンダがP2を発表した頃です. 「これは仕事になるかもしれない」と感じたのは,そのときが初めてでした.


— 一方で,「デザイン」の道を志すようになったきっかけは何でしょうか?

デザインへの関心は高校時代からです. プラモデルが好きだったことも影響して芸術の選択授業で工芸を選び,アート寄りの作品制作を行いました. 作品が教師に高く評価され,「工芸系の学校へ行ってはどうだ?」と勧められたことが転機となりました. そして,京都工芸繊維大学のデザイン学科へ進学しました. その後,パナソニックへ入社し,オーディオ機器のデザインに携わりました.


— 「ロボットデザイン」を手掛けることになった決定的な転機は何でしょうか?

本社直轄のデザイン部門へ異動したある日,偶然,次年度のプロジェクト担当一覧を目にしました. そこに,中央研究所のロボット案件と担当予定者の名前が書かれていましたが,自分の名前は記載されていませんでした. 面白くないなと思い,これからの生活におけるロボットの必要性に関して企画書を作成しました.

この企画書ではアイザック・アシモフのロボット三原則を基にしました. 「人を傷つけてはならない」,「人の命令には従わなければならない」,「自分自身を守らなければならない」という三原則を「安全性」,「操作性」,「品質」と読み替え,家電メーカーにおいて重要な領域だと気付きました. そのため,ロボットはパナソニックにおいても重要な要素であり,ロボットデザインの必要性を企画書にまとめました. さらに,ネット家電時代の到来を見据えて,「家電を統合するインターフェースとしてのロボット」というビジョンまで書き込みました. 部屋のあちこちから通知音が鳴る世界ではなく,一体の存在がすべてを把握し,人に伝える存在. それをロボットに担わせたいという考えでした.

その企画が通り,ロボットデザインの担当を担うこととなりました. ここから,ロボットデザインという分野に足を踏み入れました. このように,ロボットへの興味とデザインの経験が重なり,ロボットデザイナーとなりました.


3.代表的な制作事例とデザインの裏側

3.1 日本ロボット学会誌の表紙デザイン

— 長年担当されている日本ロボット学会誌の表紙の中で,特にお気に入りの1枚はありますか?

「お気に入り」というと難しいですが,特に印象に残っているのは,やはり一番最初に描いた表紙(図2a)です. 元々は編集委員の方が,ご自身の担当特集に合わせて写真をコラージュして表紙を作っていたそうです. そこで「描いてくれませんか」とお声がけいただいたのが,私が表紙を担当するきっかけでした. 最初のテーマは「ロボットの運動学習」でした. しかし,「運動学習」という言葉だけでは,一般的にはなかなかピンときません. そこで悩み抜いた末に,「ロボットが縄跳びをしている絵」を描きました.

この時に決めた方針が,特集記事を「一目で直感的に分かるようにする」ことです. 研究内容そのものを解説する図ではなく,その技術が十分に普及し,当たり前になったときにどんな世界が来るのか. 「本当にロボットが縄跳びできるか」は一旦置いておいて,「運動学習が極まれば,こんなことも可能になるかもしれない」という未来のイメージを描いてみたところ,これが非常に好評でした.

また,学会誌というのは,研究室や職場のテーブルに無造作に置かれることが多い媒体です. そのとき,通りすがりの人が「楽しそうな絵があるけど何だろう?」と手に取ってくれるような,「学会の広告塔」としての役割も持たせたいという裏テーマがありました. 最初の一枚で,その方向性がしっかりと定まったと感じています.


— 基本的には毎回特集の名前のみ共有され,それに沿って表紙をデザインされる形なのでしょうか?

初期の頃は,掲載される論文や記事も送られてきていました. しかし,記事が揃うのは締め切り直前が多く,それを待っていては制作が間に合いません. また,仮に揃ったとしても,全原稿を読むことは現実的ではありません. そのため,現在は特集のタイトルや巻頭言の概要など,「今回はどのようなテーマの特集にするか」という骨子のみを共有いただき,それをもとに早めにラフ案を提出しています. もし認識に齟齬があれば,その段階で指摘していただきますが,長年で差し戻しになったのはわずか1,2回程度です.

また,学会誌がリニューアルされ『ロボ學』へと名称が変わるタイミングで,表紙イラストの運用も見直されました. それまでは毎号描き下ろしのスタイルでしたが,それ以降はCGイラストを採用し(図2b),「今年はこのロボットをメインキャラクターにする」と年単位で決定し,毎月その色やポーズを変化させる形へと移行しています.

 


図2a:園山氏がイラストを担当された表紙(最初に担当された表紙(2004 Vol.22 No.2)[1])

 


図2b:園山氏がイラストを担当された表紙(CGイラストを採用した表紙(2019 Vol.37 No.1)[2])


3.2 実用ロボットのデザイン

— これまでにデザインしたロボットの中で,特に印象深いものはありますか?

一番印象深いものは,やはり「NEXTAGE」(カワダロボティクス,図3)です. このプロジェクトには,開発の極めて初期段階から参画させていただきました.

通常,プロダクトデザインの依頼は,機構やスペックなどの基本設計がある程度固まった段階,あるいは設計が完了した状態で外装のみを依頼されるケースが大半です. そのため,デザイナーが「ここを細くすれば美しくなる」と提案しても,内部機構との干渉により実現できないというジレンマは,この業界では日常茶飯事です.

しかしNEXTAGEに関しては,「今度このようなロボットを作ろうと考えている」という構想段階からお声がけいただきました. 実際,モーターの軸構成やサイズすら決まっていない,本当にラフな状態からのスタートでした. 「このレイアウトは面白いですね.これならデザインはこうなります」とこちらから提示すると,エンジニアの方も「それは面白い」と応じてくれる. そうやってエンジニアとデザイナーがキャッチボールを繰り返し,相互に刺激し合いながら形作られていきました. 設計開発とデザインが完全に同時進行し,かつ成功した稀有な事例だと言えます.

もちろん,担当したロボットはすべて印象深いです. 自分が描いた線が立体となり,実際に動いている姿を見る瞬間は,何物にも代えがたい感慨がありますし,デザイナー冥利に尽きる瞬間です.

 


図3:双腕作業支援ロボットNEXTAGE(カワダロボティクス)[4]


— デザインの過程で,特に苦労される点はどのようなことでしょうか?

デザインというものは,時間をかければ必ず良いものが生まれるという単純なものではありません. しかし,思考を深く巡らせ,悩み抜いた末に,ふと素晴らしいアイデアが閃く瞬間があるのも事実です. 恐ろしいのは,納品までにその「閃き」に至らなかった場合です. 納品後にふと,「あそこはこうすればよかった」「なぜあの時,この形状を思いつかなかったのか」と気づいてしまう. その時の悔しさや,自分自身への歯がゆさが,デザインをする上で最も精神的に負荷がかかる部分かもしれません.


— ロボットをデザインする上で,特に難易度が高いと感じる箇所はありますか?

関節は,可動範囲の確保と干渉回避の両立が必要です. そのため,どうしても駆動軸の周辺に物理的な空間が必要になります. しかし,その隙間をそのままにすると,例えば頭部の可動域を優先した結果,首が極端に細くなり,全体として華奢な印象を与えてしまうことがあります.

具体例として「HRP-4」[3](図4)が挙げられます. この機体は腰回りが非常にくびれています. 腰の可動域を確保するためには物理的に不可避な形状ですが,視覚的には腰が安定している方が「力強さ」を表現できます. 機能要件を満たしつつ,いかに貧弱に見えないフォルムを作るか.ここは常にジレンマを感じる部分です.

そのため,隙間を柔らかい素材で覆ったり,首元に襟のようなパーツを追加してボリューム感を出したりと,工夫を凝らします. 関節というメカニカルな制約を,いかに美しくまとめるか. これは毎回頭を悩ませるポイントですが,同時にデザイナーの「腕の見せ所」でもあると考えています.

 


図4:研究用ヒューマノイドロボットHRP-4(産業技術総合研究所/カワダロボティクス)[5]


4.デザインの考え方とアドバイス

4.1 発想のプロセスとツールについて

— デザインを行う上で,未来はどのくらい先まで予測できるのでしょうか?

会社に所属していると未来のロードマップを描く機会が多いのですが,正直なところ「3年先ですら当たらない」ことがほとんどです. 世界は何か大きな出来事を起点にして,ガラリと変わってしまうものだからです.

例えば,5年前に「生成AI」による創作がこれほど盛んになるとは誰も想像できなかったでしょうし,ガラケー全盛の時代に「スマホ」がこれほど普及するとは誰も予見できなかったはずです. そのため,変化があるたびにその都度考えていくしかありません.

しかし,新しい技術が出てきた瞬間に,「論理的に空想を膨らませる」ことは可能です. それがどのように家庭に入り込み,今の技術の延長線上でどのように進化するのかをシミュレーションすることはできます. ですから,遠い未来を予測するというよりは,「今現在の進化を論理的に考える」と言った方が近いと思います.


— 工学系の学生には想像しにくい,「デザインが生まれる瞬間」の思考プロセスはどのようなものでしょうか?

これには本当にいろいろなパターンがあります. 論理的に考え抜いてやっと答えが出ることもあれば,ある瞬間,突然「空から降ってくる」ようにアイデアが閃くこともあります. あるいは,「こういう方向かな」と手を動かしているうちに,全く違う方向から素晴らしいデザインが湧いてくることも珍しくありません.

大切なのは,「思考のアプローチ」を複数持っておくことです. 「言葉(論理)」で積み上げて考えるルートもあれば,「絵(イメージ)」を描きながら探るルートもある. できるだけ多くの思考引き出しを持っている方が,生み出せるデザインの幅は確実に広がると考えています.


— 最近は最初からCADで設計する学生も多いですが,園山氏はどのような手法でデザインを行っているのですか?

私はCADで描いた図面も一度は必ず「紙に印刷」するようにしています. 不思議なもので,紙にした瞬間にミスが見つかることはよくあります. これは原寸大か否かという話ではなく,文章を書く人や建築のプロも同じことを言いますし,特にベテランのエンジニアには共感いただける感覚だと思います.

また,最初からCADを使うことを否定するわけではありませんが,デジタルツールだけで描くと,どうしても人間が「アプリの仕様」に合わせてしまう側面があると感じています. 例えば,「にじみ機能」のないアプリを使う人は,にじみのない絵しか描かなくなる. ツールによって,人としての表現力や発想が制限されてしまうのは,非常にもったいないことだと思います.

ペンで描き始めたら,思いもよらなかった形に出会うチャンスがあるかもしれません. 最初からCADに触れると,その「偶然の発見」という可能性を自ら手放していることになります. プロとして「この形状は金型成型に適しているから」と判断してツールを選ぶなら良いのです. しかし,学生の間はあえて紙とペンで考え,「デジタルの限界」を知っておくことも大切です. 時間を贅沢に使える時期だからこそ,安易に可能性を潰さず,手を動かしてほしいと思います.


4.2 制作物への具体的なアドバイス

— このロボットの面白さを,子供たちに伝えるにはどうすればよいでしょうか?
(編集部注:ここで,質問者の斎藤が製作したロボット(図5)をお見せし,アドバイスを頂いた. このロボットは瓶の中で組み立てられた機械で,小学生向けのワークショップを行うために開発している.)

まず,これが厳密にロボットと言えるかという議論はさておき,この作品における驚きのポイントは,「どうやって中に入れたのか」という点と,「非接触で動く」という点の2つに集約されると思います.

まず「入れ方」の観点ですが,例えばボトルシップの場合,誰もが知っている「完成された船」が狭い口から入っているからこそ,砂や水を入れるのとは違う難しさが直感的に伝わります. しかし,この作品のように「中身がよく分からない機械」がバラバラのパーツで入っていると,中で組み立てたことがあからさまに分かり,驚きが薄れてしまうのではないでしょうか. ボトルシップに驚きがあるのは,帆を広げた状態の船が入っているのに「種明かし」がないからです. 一方でこのロボットは,機構が露出している時点で種明かしがされてしまっていますし,動きを見た瞬間に「磁石だろうな」と推測できてしまいます.

改善案としては,例えばガンプラやくまモンのように,「誰もが知っているキャラクター」が中で踊っていたらどうでしょうか. 「なぜこんなものが入っているんだ?」「何が起きているんだ?」と興味を惹くはずです. まずは「この瓶に入りそうにない形状・質感のもの」かつ「誰もが知っているもの」から入れてみるのが良いと思います.

 


図5:園山氏に見ていただいた瓶の中で動くロボット

 


図6:園山氏からご意見をいただいている様子


4.3 学生へのメッセージ

— 今後のロボット業界を担う学生に向け一言お願いします

「デザインに興味を持ってくれ」という一言に尽きると思います. 既に興味を持っている方もおられると思いますが,私が言うデザインとは,単に形を美しくしたり格好良くしたりすることではありません. 「関係性」を考えることであり,「なぜそれをするのか」「誰のためにそれをするのか」という本質を突き詰めることです.

研究とは,まだ世の中にない新しい技術を実証していくことだと思います. しかし,その技術が社会実装され,日常的に使われる未来を見据えたとき,「誰に対してどのような価値があるか」,「そのためにはどのようなデザインであるべきか」を,研究の初期段階から考えていてほしいのです.

もし,自分たちだけで考えるのが難しいのであれば,ぜひ相談してください. デザイン系の人たちとコラボレーションし,ときには喧嘩もして,切磋琢磨しながら新しい技術を生み出していけるような,そんな未来を期待しています.


5.あとがき

本取材を通して,ロボット分野を新たな視点で捉え,ロボットデザインの重要性や今後の可能性を改めて知ることができた. また,園山氏がロボットに注ぐ強い思いを肌で感じることができた. 本稿が,ロボット開発に携わる研究者や学生に対し,ロボットデザインという新しい視点を提供し,刺激となることを願っている.

 

参考文献

[1] 日本ロボット学会:学会誌バックナンバー, https://www.rsj.or.jp/pub/jrsj/archive/index.html?ref=642.

[2] 日本ロボット学会:学会誌バックナンバー, https://www.rsj.or.jp/pub/jrsj/archive/index.html?ref=938.

[3] K. Kaneko, et al.: 〝Humanoid robot hrp-4 - humanoid robotics platform with lightweight and slim body," Proc. IEEE/RSJ Int. Conf. Intell. Robots Syst. (IROS), pp.4400-4407, 2011.

[4] カワダロボティクス株式会社:NEXTAGE とは | 人と一緒に働くヒト型ロボット「NEXTAGE」, https://nextage.kawadarobot.co.jp/service.

[5] カワダロボティクス株式会社:HRP シリーズ, https://nextage.kawadarobot.co.jp/4391926.

 

関 有亮 (Yusuke Seki)

2024年東京大学大学院新領域創成科学研究科修士課程卒業.現在東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程在学中.静電気力を駆動原理とした新しいアクチュエータの研究開発に従事.(日本ロボット学会学生会員)

 

斎藤 天丸 (Takamaru Saito)

2023年東京工業大学工学院機械系機械コース修士課程修了.東京科学大学工学院機械系機械コース博士後期課程在学中.高齢者の歩行を支援するロボット技術を用いたデバイスの開発に従事.

 

新川 馨子 (Kaoruko Shinkawa)

2025年電気通信大学大学院情報理工学研究科機械知能システム専攻博士前期課程修了.同専攻博士後期課程在学中.アンドロイドの遠隔操作システムの研究に従事.(日本ロボット学会学生会員)