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日本のロボット研究の歩みHistory of Robotics Research and Development of Japan1994Business〈企業の研究開発〉動き追跡処理システム「トラッキングビジョン」


内山 隆(株)富士通研究所
森田 俊彦(株)富士通研究所
沢崎 直之(株)富士通研究所
岡林 桂樹(株)富士通研究所
浅田 和徳富士通(株)
佐藤 雅彦富士通(株)
井上 博允東京大学
稲葉 雅幸東京大学

この論文は、ロボット研究開発アーカイブ「日本のロボット研究開発の歩み」掲載論文です。

ロボットが周囲の状況を効率よく把握しそれに適応しながら動作するためには,特定の対象を注視し,その動きを追いかける機能が不可欠である。そこで,カメラで捕らえた目標を高速に追跡できる画像処理装置トラッキングビジョンの開発・実用化を行った。

トラッキングビジョンでは,局所画像の相関演算(各画素の濃度差の絶対値和)を高速処理する専用LSIを開発・搭載することにより,任意の対象をビデオレートで追跡できる性能を実現した。トラッキングビジョンの特徴を以下にまとめる。

  1. 高速ビデオレート処理
    ビデオレート(30Hz)で最大2300の目標を同時に追跡すること,あるいは最大2300の動きベクトルを計算することが可能(ACP-II,8×8画素テンプレートで単色処理の場合)。
  2. 小型・低価格システム
    小型低価格システムでありスタンドアロン動作およびパソコンへの内蔵が可能。
  3. 柔軟で容易なソフトウェア制御が可能
    追跡対象の位置をソフトウェアで柔軟に制御でき,様々な用途に対応可能。
本システムは,東京大学における研究成果をベースに,1992年から実用システムの共 同開発に着手し,第一版を1994年に製品化した。その後,専用動き追跡プロセッサACPを 搭載したパソコン内蔵型のPCIバス対応ボードを開発し実用化した(1996年,図1,図2)。 さらに,画像処理回路と汎用のRISCプロセッサを1チップ化しパフォーマンスを強化した 専用プロセッサACP-IIを搭載した1ボードシステムの開発・実用化を行った (1999年,図3,図4)。

図1 動き追跡プロセッサ「ACP」写真
図1 動き追跡プロセッサ「ACP」写真
図2 PCIバス対応版「カラートラッキングビジョン」写真
図2 PCIバス対応版「カラートラッキングビジョン」写真
図3 動き追跡プロセッサ「ACP-II」」写真
図3 動き追跡プロセッサ「ACP-II」」写真
 
図4 スタンドアロン版「組込み型トラッキングビジョン」写真
図4 スタンドアロン版「組込み型トラッキングビジョン」写真

本システムは,現在,ロボット研究に従事する大学・研究機関の間で,視覚処理の標 準ツールの一つとして広く普及している。また,ロボット以外の分野においても,監視 システム,スポーツ中継,車の識別等,自動化システム開発のキーテクノロジとして応用 が拡大しつつある。

1997年 日本ロボット学会実用化技術賞受賞