日本のロボット研究の歩みHistory of Robotics Research and Development of Japan2010Business〈企業の研究開発〉原子炉容器出入口管台 高速化INLAY技術
下鍋典昭 | 三菱重工業株式会社 |
大西献 | 三菱重工業株式会社 |
大平真 | 三菱重工業株式会社 |
日並一幸 | 三菱重工業株式会社 |
杉浦篤 | 三菱重工業株式会社 |
この論文は、ロボット研究開発アーカイブ「日本のロボット研究開発の歩み」掲載論文です。
PWR型原子力発電所の原子炉圧力容器(RV)管台とセーフエンドの溶接部におけるインコネル600溶接合金の応力腐食割れ予防保全工事を高精度かつ効率的に実現する工法を開発した。
本工法では、キャビティ水で満たされたRV内に円筒型容器を沈め、管台内のキャビティ水を排水することで、RV上の足場から管台施工部まで気中環境を創出する。円筒容器から管台施工部にアクセスし、RV管台内面で応力腐食割れ懸念部(インコネル600合金)を切削し、代わりにインコネル690合金を肉盛溶接することで原子力発電プラントの計画外停止をミニマム化し、稼働率向上に貢献している。従来工法では、高放射線下で作業員が装置の設置、取り替え、片付け等を実施していた。新工法では、施工装置をキャビディ上の仮設足場からクレーンで管台施工部のターンテーブル上に吊り込み、ターンテーブルにより施工装置とロボットマニピュレータとの位置合わせを自動で行う。最新のマニピュレータ技術を駆使し、遠隔操作で複数同時に管台施工を行うことで、作業員の大幅な被ばく低減と工期短縮を実現した。加えて、マニピュレータは遠隔自動着脱機能を有しており、各種先端装置を取り付けることで、高精度な検査・溶接・手入れ等を行い、従来工法に対し約70%の工程で高精度な工事を実施した。さらに本装置では、世界初となる母材硬さ制限に適合した常温テンパービード溶接条件を見出し、工法およびそれを支える装置のマッチングは、世界に類を見ない仕上がりとなっている。この画期的な工法はお客様からも高い評価を得た。
第16回(2011年)日本ロボット学会実用化技術賞受賞