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日本のロボット研究の歩みHistory of Robotics Research and Development of Japan2001Business〈企業の研究開発〉全方向移動型パワーアシストカート


藤原茂喜パナソニック株式会社
北野斉パナソニック株式会社
山下秀樹パナソニック株式会社
前田裕史パナソニック株式会社
福永秀雄パナソニック株式会社

この論文は、ロボット研究開発アーカイブ「日本のロボット研究開発の歩み」掲載論文です。

本研究では,力の代替としてのパワーアシスト技術に着目し,重量台車に適用したシステムを提案する。本研究の目的は,600kg程度の手押し車両を,モータの存在を意識させず,まるでスーパーの買い物カートを操作する感覚で,全方向に軽快に手動操作できるパワーアシストカートを開発することである。

まず,基幹要素は人の操作力を検出する力センサである。力センサが誤検出すると,重量車両が暴走する危険性がある。そこで,できる限り周囲の環境変化に影響されないように,操作力に応じて生じる板バネの変位を,渦電流式変位センサで測定する方法を提案する。たとえば,50 [ N ] の操作力に対し,変位としては最大でも約0.3 [ mm ] なので,操作者にはその変位がわからない程度である。操作ハンドルの形状は一般の台車に多い横バー型であり,台車との接続部に3 自由度(前後,左右,旋回)の検出ができる力センサを備えている。 車輪としては,ユニバーサルホイールを車両の四隅に,前進方向に対し,45°の角度を持たせて配置する。

課題としては4輪キャスターの台車を引き操作すると,左右にふらつく。その対策として,全方向移動制御 ( 押し操作用 ) と仮想2自由度駆動制御 ( 引き操作用 ) に,切替できるようにすることを提案する。仮想2自由度制御とは,あたかも引き操作時の前輪が自在車輪,後輪が駆動輪の動作を制御で実現するものである。両手で操作ハンドルを保持した場合は押し操作が多いものとして全方向移動制御,片手で操作ハンドルの中央を保持した場合は引き操作が多いとして仮想 2 自由度駆動制御とする。把持部の検知は,ハンドルに光電センサを配置することで実現する。

これら以外も含め,多くの項目を検証していったことにより,全方向移動機構においても,軽快な操作感を実現した。

第6回(2001年度)実用化技術賞受賞