日本のロボット研究の歩みHistory of Robotics Research and Development of Japan1989Business〈企業の研究開発〉宇宙実験用テレオペレーションシステム
渡辺 一郎 | 株式会社富士通研究所 |
岡林 桂樹 | 株式会社富士通研究所 |
須田 良輔 | 株式会社富士通研究所 |
内山 隆 | 株式会社富士通研究所 |
この論文は、ロボット研究開発アーカイブ「日本のロボット研究開発の歩み」掲載論文です。
テレサイエンス技術に対するイメージの明確化を主眼として、テレオペレーション系(マニピュレータ含む)、テレプレゼンス系等、テレサイエンスの主要技術を含む模擬システムを構築し、1988年11月7, 8日に地上での公開模擬実験を行った。通信衛星(CS-3)を介したテレサイエンス模擬実験(想定テーマ「カエルの固体発生に対する微小重力の影響」)を行い、伝送遅れ(往復0.5秒)のある画像を見ながら、マニピュレータのバイラテラルマスタースレーブ操作により、顕微鏡下で直径1mmのアフリカツメガエルの卵をナイフで切断できることを示した。マスタスレーブ間を関節座標で結合するのではなく手先座標系で結合する力帰還型バイラテラルマスタースレーブ制御系を構成し、微小な操作を可能とするためのマスタマニピュレータ操作量を縮小(1/20等)してスレーブに転送する機能、同時操作自由度を限定して高精度な操作を容易にするための操作自由度の拘束機能を用意した。0.5秒の時間遅れでは予測操作が十分可能であり、最初は作業実行速度が遅くなるが、操作中にオペレータは時間遅れに適応できた。この時、操作感は時間遅れのない場合に近く、MOVE & WAIT動作は顕著には見られなかった。また操作の縮小や拘束などのオペレータ支援機能は卵の切断時などに非常に有効であった。本実験実施時の見学参加者(宇宙関連機関、大学などから50名程度)に終了後記入していただいたアンケート等の結果、解決しなければならない技術課題として、「時間遅れに対する予測制御支援」、「実験装置の自動化と地上からの遠隔制御との最適な役割分担」、「遠隔操作に関するテレメトリとコマンドとの対応づけを元にした学習機能」、「高精細画像の圧縮伝送」、「テレサイエンス機器の小型化、軽量化」などが挙げられた。また、概して「テレサイエンスのイメージの明確化に役立った」と好評をいただいた。
1990年 第1回日本ロボット学会技術賞受賞