日本のロボット研究の歩みHistory of Robotics Research and Development of Japan2001Business〈企業の研究開発〉罫書き・切断および溶接ロボットシステムの開発
小林 政己 | 川崎重工業株式会社 |
久保山 隆志 | 川崎重工業株式会社 |
山角 覚 | 川崎重工業株式会社 |
小池 雅司 | 川崎重工業株式会社 |
村上 幹夫 | 川崎重工業株式会社 |
この論文は、ロボット研究開発アーカイブ「日本のロボット研究開発の歩み」掲載論文です。
スタジアムや鉄塔構造物などに採用される厚板鋼管構造物の罫書き・切断ロボットシステムおよび溶接ロボットシステムの実用化を行った.
従来,鋼管の切断加工は素材となる鋼管の表面に切断線の罫書きと付属物取付位置の罫書きを行い,切断線罫書きに沿って手作業でガス切断を行っていた.これらは熟練を要し生産能率と精度が問題となっていた.また切断専用装置では切断トーチの姿勢,切断条件などに制約が大きく,複雑な切断面形状を持つ継手等の加工ができない場合が多かった.今回実用化した罫書き・切断ロボットシステムは切断トーチのこれらの制約を取り除くために多関節ロボットを用い,オフライン教示技術を適用してロボット動作プログラムを自動生成することにより作業の効率化を図った.また,鋼管素材の形状を計測してロボット動作軌跡を補正し鋼管素材の公差を加味した施工を可能とした.これらより作業時間を70%短縮することができ、加工精度を飛躍的に向上させることができた.
鋼管構造の溶接においては,部材の組み立て誤差や溶接中の熱ひずみなどにより継手断面形状の寸法誤差が大きくなり,ロボット溶接に際して溶接試験によりあらかじめ定めた溶接条件や積層計画データベースが実用上使えない場合が多い.さらに多層盛り溶接施工ではデータベース構築のための溶接試験に手間と時間を要する.これらによりロボット溶接が現場の実システムとして適用できず,これまでは熟練工の高い技量に頼った施工を行っており,生産能率の向上と品質の安定化が課題となっていた.そこで溶接条件と積層計画を自動生成する技術,および大きく連続変化する開先形状を計測するレーザセンサを開発し,スラグ除去やツール交換等の溶接に伴う付帯作業を自動化した. これらによって大幅な生産能率の向上(準備時間70%短縮、作業時間50%短縮)と高品質安定化を実現した.
2001年 第6回日本ロボット学会実用化技術賞受賞