日本のロボット研究の歩みHistory of Robotics Research and Development of Japan2002Business〈企業の研究開発〉エンターテインメントロボットAIBO
藤田 雅博 | ソニー(株) |
景山 浩二 | ソニー(株) |
大槻 正 | ソニー(株) |
天貝 佐登史 | ソニー(株) |
土井 利忠 | ソニー(株) |
この論文は、ロボット研究開発アーカイブ「日本のロボット研究開発の歩み」掲載論文です。
我々は新しいロボティクスの応用として、実世界で人と触れることに注目したエンターテインメントをめざし、 “ロボットエンターテインメント” を提案した。1997年に小型自律4脚ロボットの試作機を発表し、1999年にAIBO ERS-110として商品化をした。25万円という家庭用商品としては高額なものにかかわらず、3,000体(日本)に対してインターネットからのみの注文を約20分で完了するという支持を受けた。 このAIBO発表の後、玩具ロボットとして多種のペット型ロボットが登場し、さらにいわゆるホームロボット分野の研究開発の発表が各企業から相次いでなされた。AIBOの商品化が社会に対して、人間と共存するロボットの可能性を示し、大きなインパクトを与えたことを示している。
AIBOの開発と商品化は大きく以下の2つの活動があり、ロボット産業の発展に貢献した。
1)完全自律型ペットロボットAIBOのコンスーマ商品化: AIBOは5つの本能(睡眠、好奇心、愛情、運動、充電)と6つの感情(喜び、悲しみ、怒り、驚き、恐怖、嫌悪)をもち、ユーザーや環境とのインタラクションで成長する機能を有した。高度の認識技術と学習技術を駆使し、エージェントアーキテクチャを工夫することで完全自律型ロボットとして実現された。
2)技術開発プラットフォームOPEN-Rの開発と公開:新しいロボット産業を興すためにOPEN-Rと名付けたロボットの基本モジュール(ハードウエア、ソフトウエア)のAPIとアーキテクチャを定義した。開発者は、これらを使って簡便に新しいロボットの開発が可能になった。AIBOとOPEN-Rは、RoboCupという自律型サッカーロボット競技会の4足ロボットリーグのプラットフォームとしても採用され各大学が歩行、画像認識、SLAM, ボールコントロール、協調行動などの技術を競い合い、ソースコードを交換することで技術進展に貢献した。
2002年 第7回日本ロボット学会実用化技術賞受賞