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日本のロボット研究の歩みHistory of Robotics Research and Development of Japan1996Integration, Intelligence, etc.〈インテグレーション・知能ほか〉作業の目的を考慮した視覚認識戦略の生成


三浦 純大阪大学
池内 克史東京大学

この論文は、ロボット研究開発アーカイブ「日本のロボット研究開発の歩み」掲載論文です。

視覚を利用するロボット作業においては,視覚は作業を適切に行うために必要 な情報を作業環境から獲得するために用いられる.一般に,視覚認識は限られ た資源の下で行われるため,必要な情報だけを効率よく獲得できるように視覚 認識戦略を生成する必要がある.効率的な視覚認識戦略を生成するためには, 作業に関する知識が不可欠である.作業に関する知識がなければ,観測すべき 視覚特徴を適切に選ぶことは難しく,また,不要な視覚情報の処理に時間を費 やしてしまう可能性がある.

適切な視覚認識戦略生成のためには,以下のことを知る必要がある.

  1. どのような視覚情報が現在の作業に必要か?
  2. そのような視覚情報を得るためには,どの視覚特徴を観測すればよいか?
  3. その視覚特徴を観測するために,センサをどこに配置すればよいか?

これらの情報は明らかに現在の作業に依存するため,作業に関する知識を利用 しなければ,適切な認識戦略は生成できない.

本研究では,作業に関する知識を用いることにより,各作業を遂行する上で最 適な視覚認識戦略を自動的に生成することのできる手法を開発する.対象とす る作業は既知環境における組立作業であり,物体の形,大きさ,概略の位置は CADベースの環境モデルから与えられるものとする.このような作業における 視覚の役割は,物体の位置を十分な精度で求め,適切に組立が行われるように することである.

提案する手法では,まず,組立動作の面接触状態の遷移に基づく解析結果を利 用し,各動作を実行する際に視覚で観測すべき自由度を決定する.図1は可能 な接触状態遷移を3種に分類したものであり,図1(c)の遷移の場合に視覚情報 が必要となる.図2は多面体が並進運動を扱う場合について,可能な接触状態 と可能な遷移を数え上げたものであり[1],図1の分類にしたがうと,図中の太 線で示した遷移について視覚情報が必要となる.さらに,物体が平面および円 筒面からなり,かつ並進3自由度に加え円筒面の中心軸まわりの回転1自由度を 含む場合について接触状態とその遷移を解析した.その結果,図3に示す6種の 遷移について視覚情報が必要なことが分かった.図中,黒い矢印で示したもの が観測すべき自由度である.観測すべき自由度が決まると,次に,どの視覚特 徴を観測すればどの自由度が観測できるかという知識を用いて,観測すべき視 覚特徴の組を生成する(図4参照).最後に,予測成功確率に基づく評価によっ て,現在の動作を遂行する上で最適な視覚認識戦略を選びだす.予測成功確率 とは,ある視覚認識戦略を用いて組立動作を行ったときにその作業が成功する 確率を,物体形状のモデルと視覚情報の不確かさのモデルを用いて計算したも のである(図5参照).

提案する手法を,ラインレンジファインダを対象センサとして実装した.実験 結果から本手法の有効性,特に作業の目的を考慮して視覚認識戦略を決定する ことの重要性を示した.

第11回(1997年) 日本ロボット学会論文賞受賞

図1 3種の接触状態遷移
図1 3種の接触状態遷移
図2 状態遷移グラフと視覚情報を必要とする遷移
図2 状態遷移グラフと視覚情報を必要とする遷移
図3 視覚情報を必要とする6種類の遷移
図3 視覚情報を必要とする6種類の遷移
図4 観測すべき視覚情報の決定
図4 観測すべき視覚情報の決定
図5 予測成功確率(2次元の場合)
図5 予測成功確率(2次元の場合)