日本のロボット研究の歩みHistory of Robotics Research and Development of Japan2000Integration, Intelligence, etc.〈インテグレーション・知能ほか〉人間型二足歩行ロボットのためのテレイグジスタンス・コックピット
舘 暲 | 東京大学 |
小森谷 清 | 産業技術総合研究所 |
澤田 一哉 | 松下電工株式会社 |
西山 高史 | 松下電工株式会社 |
井床 利之 | 川崎重工業株式会社 |
小林 政巳 | 川崎重工業株式会社 |
井上 幸三 | ファナック株式会社 |
この論文は、ロボット研究開発アーカイブ「日本のロボット研究開発の歩み」掲載論文です。
経産省応用産技プロジェクト「人間協調・共存型ロボットシステムの開発」(略称 HRP, 平成 10~14 年度)において,人間型二足歩行ロボットを,テレイグジスタンスを用いて制御することを可能とする遠隔操作プラットフォーム(スーパーコックピット)を研究開発した.さらに,遠隔操作プラットフォームと人間型二足歩行ロボットとを結合し,遠隔ショッピング実証実験を行い,このシステムの有効性を示した.
スーパーコックピットは,操作者の視聴覚や力覚機能の臨場感を高め,あたかも人間型ロボットのなかに入り込んでいるかのような高臨場感操作を実現することをねらいとして開発した遠隔操作プラットフォームである.また本コックピットは,インターネットなどの情報ネットワークを通じて,より遠隔の地からでもロボットを簡易に操作するための遠隔ネットワーククライアント用のサーバーとしての機能も有している.
本コックピットを用いて人間型ロボットをテレイグジスタンスにより操作した際に, 人間協調共存環境においても複雑なタスクを遂行可能であることを実証するため,ショッピングゾーンの環境を設定し,ロボット操作の統合試験を実施した.スーパーコックピットからショッピング環境に存在する人間型二足歩行ロボットへテレイグジスタンスすることによって,自分の分身ロボットが階段昇降,その場旋回,前進,斜め歩行などを行い, 人間が働く環境内を移動し,その間に,縫いぐるみを持ち上げたり,ハノイの塔で遊んだり,扉付きのショーケースの中から缶コーヒーやスナック菓子などを取り出して買い物カートに入れ,カートをレジまで押して運んで行くといった作業を,あたかも自分がその分身ロボットに入り込み,その場に居るような感覚で実行できることを示した.また,高機能ハンド遠隔操作システムとミニマムコックピットを用いて,レジに配した固定式ロボットの 4 指高機能ハンドを遠隔操作し,買い物商品の箱詰め作業を行った.
これらの実験を通して,世界で初めて人間型二足歩行ロボットへのテレイグジスタンスに成功した.