日本のロボット研究の歩みHistory of Robotics Research and Development of Japan2005Integration, Intelligence, etc.〈インテグレーション・知能ほか〉二足歩行ヒューマノイドロボットによる人の舞踊動作の再現
中岡 慎一郎 | 産業技術総合研究所 |
中澤 篤志 | 京都大学 |
金広 文男 | 産業技術総合研究所 |
金子 健二 | 産業技術総合研究所 |
森澤 光晴 | 産業技術総合研究所 |
比留川 博久 | 産業技術総合研究所 |
池内 克史 | 東京大学 |
この論文は、ロボット研究開発アーカイブ「日本のロボット研究開発の歩み」掲載論文です。
本研究は、そのような手段を二足歩行ヒューマノイドロボットの全身動作を対象として実現したものである。対象が二足歩行型のロボットとなると、ロボットが人の動作軌道をそのまま追従しようとしてもうまく追従できずに転倒してしまうことになる。これは、動作を教示する人間とそれを再現しようとするロボットの間の身体構造や動力学バランスの差異によるものであり、元の動作をロボットに適用するにあたってこの差異をいかに解決するかが課題となっていた。
本研究では、観察学習(Learning from Observation)パラダイムを二足歩行ヒューマノイドロボットの全身動作に応用することで上記の課題を解決した。具体的には、足と床の接触状態遷移を基に脚の動作をモデル化した「脚タスクモデル」を設計し、ロボットへの動作適用をこのモデルを介した動作認識・動作生成の2段階に分けて行なう。まず、モーションキャプチャによって得られた人間の動作軌道データから、「両脚立ち」「右足ステップ」「左足ステップ」「しゃがみ」といった脚タスクの時系列データが認識され、次にこのデータを入力として、ロボットの下半身の動作軌道がロボットモデル上で再構成される。この再構成はロボットの動力学バランスや身体制約を考慮して行われるため、生成される動作はロボットが転倒せずに実行できるものとなる。また、脚タスクモデルが表現する動作の節目のタイミングや姿勢を保存することで、再構成された動作は元の動作の特徴を反映したものになる。
以上の手法を自動処理するソフトウェアシステムを開発し、これを用いて舞踊の師範が実演した「会津磐梯山踊り」を二足歩行ヒューマノイドロボット「HRP-2」が再現することに成功した。HRP-2による舞踊の再現は脚の動作を含むものであり、このように脚も含む人間の全身動作をロボットで再現したことは、世界的にも本研究が初めて実現した成果となっている。
2008年 第22回日本ロボット学会論文賞受賞
2005年 画像の認識・理解シンポジウム (MIRU) 2005 インタラクティブセッション優秀賞