日本のロボット研究の歩みHistory of Robotics Research and Development of Japan2012Integration, Intelligence, etc.〈インテグレーション・知能ほか〉人とのインタラクションで概念・言語をオンラインで学習するロボット
長井 隆行 | 電気通信大学 |
中村 友昭 | 電気通信大学 |
荒木 孝弥 | 電気通信大学 |
この論文は、ロボット研究開発アーカイブ「日本のロボット研究開発の歩み」掲載論文です。
我々は,自然言語処理などに広く用いられてきた統計モデルを自律型ロボットに応用することで,物体を統計的にカテゴリ分類し,物体概念を形成する手法を提案してきた [1].物体概念を獲得することで,未知の物体に対しても,その特性や性質を予測することが可能となり,人間と同様に柔軟な行動を取ることができる.この様なレベルでの物体学習を実際の環境で行うためには,ロボットが物体の視覚や聴覚,触覚などのマルチモーダルな情報を自律的に取得する必要がある.複数の感覚情報を利用することで,より人間の感覚に即した物体のカテゴリ分類を自動的に行うことが可能になると考えられるためである.つまり,最終的に目標としたのは,部屋内を動き回り,未知の物体を発見した場合には,自律的かつ自動的にその物体のマルチモーダル情報を取得し,物体や概念の学習を行うロボットである.一方,物体概念を形成する上で,言語情報も重要である.文献 [2]で我々は,マルチモーダル情報のカテゴリゼーションによって形成された概念と単語の結び付きを学習することで,ロボットが語意を獲得できることを示した.本研究では,さらに単語の情報とマルチモーダル情報を併用することで,語意を含む物体概念全体を学習することを考えた.物体の概念を形成する上で,語意情報を用いることで,より人間の感覚に即した物体のカテゴリ分類が実現し,同時に未知の物体に対する言語的な予測を行うことも可能となる.単語情報は人間による教示が必要であるが,先述したように単語情報全てを人間の手によって与えることは現実的ではないため,断片的な単語情報を適切な感覚情報と結び付けた概念形成を行う能力が必要となる.ロボットが物体のマルチモーダル情報取得を全自動で行い,カテゴリ分類と語意獲得を同時にかつ自律的に行うことができれば,未知物体の認識や機能の推定,単語情報の想起などが可能となるため非常に有用である. そこで本研究では,ロボットに搭載された各種センサを用いて,ロボット自身が複数の情報を自律的に取得するシステムを実現した.これによりロボットは,搭載されたカメラからの視覚情報,物体を振った際の音情報,物体を把持した際の感圧センサによる触覚情報を取得できる.また,一部の単語情報を利用した学習を行い,Gibbs Sampling をベースとしたオンラインマルチモーダル LDA (latent Dirichlet allocation) による,自律的カテゴリゼーションと語意の獲得を同時に行う手法を実現した.さらにシステムをオンライン化することで,データを保持する必要なく,ロボットと人間によるインタラクティブな物体の学習と認識が可能となった.
第1回(2013年度)日本ロボット学会Advanced Robotics Best Paper Award受賞IROS 2011 Best Paper Award Finalist.
IROS 2011 Best Student Paper Award Finalist.