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日本のロボット研究の歩みHistory of Robotics Research and Development of Japan2011Locomotion〈ロコモーション〉車いすとパートナーロボットによる協調段差移動


池田 英俊富山高等専門学校
中野 栄二国際ロボフェスタ協会

この論文は、ロボット研究開発アーカイブ「日本のロボット研究開発の歩み」掲載論文です。

パートナーロボット 「TATEYAMA」は富山高専 池田研究室で開発された.本ロボットは小型モータで動作する双腕マニピュレータを備えた車輪型ロボットであり,車いすの段差移動支援に加えて,逆に車いすを利用してロボット自身も移動する「協調段差移動」を実現する.

家庭やオフィスでの使用を想定した移動ロボットのマニピュレータには,そのボディサイズが制限されるため小型モータにより駆動されることが多く,それは,車いす等の重量台車の段差搬送作業を困難にする要因の一つとなっている.それに加え,段差移動に伴う搬送対象車両の傾斜量変化はロボットに対する,「押す」,「引く」という力を著しく変化させ,両車両の転倒や駆動輪の滑りを生じさせるケースが多い.そのため,移動マニピュレータによる車いす等の重量台車に対する段差移動支援はこれまで実現されていなかった.しかし,本研究グループでは車いすと車輪型ロボットを受動リンクで連結し,そのリンク取り付け高さと車両間の速度差を適切に制御することで協調段差移動が可能であることを示した[1].本研究ではこの手法を発展させ,双腕マニピュレータを備えたパートナーロボット「TATEYAMA」を用い,段差移動時にハンドで車両同士を連結した上で,マニピュレータの関節を主に受動制御とし,移動過程に応じてマニピュレータの上腕や前腕リンク部を車いすやロボットに押し付け,車両間に働く力をマニピュレータの関節出力ではなく,車両全体で受けとめることでコントロールし,駆動輪の滑りと車両の転倒を回避し実現する協調段差移動手法を示し,その有効性を示した.