日本のロボット研究の歩みHistory of Robotics Research and Development of Japan2011Locomotion〈ロコモーション〉水平床反力限界を考慮した2脚ロボットの走行歩容生成
竹中 透 | (株)本田技術研究所 基礎技術研究センター |
松本 隆志 | (株)本田技術研究所 基礎技術研究センター |
吉池 孝英 | (株)本田技術研究所 基礎技術研究センター |
城倉 信也 | (株)本田技術研究所 基礎技術研究センター |
この論文は、ロボット研究開発アーカイブ「日本のロボット研究開発の歩み」掲載論文です。
2脚歩行ロボットの走行速度を上げようとすると, 離床直前または着地直後にスリップやスピンが発生してバランスを崩しやすくなる.この問題に対して本論文では, 両足部質点と倒立振子とフライホイールから成る動力学モデルを用いた2脚ロボットの走行歩容生成手法を提案する. 倒立振子とフライホイールは, それぞれ上体の水平並進運動と上体回転運動に対応する.
全体重心鉛直運動, 足部軌道および目標ZMP軌道が与えられているものとすると, 上体運動の瞬時値生成においては, 原則として目標ZMPを満足するように倒立振子の加速度が決定される. ただし, 水平床反力が許容範囲を越えると, 越えないように倒立振子の加速度が修正され, この修正分を補うようにフライホイールが加速される. これにより, スリップしにくい走行歩容が生成される. また, 上記の許容範囲を変更するだけで, 歩行歩容と走行歩容が統一的に生成できる.
ところで筆者らは, 歩行に関して, これから生成される今回歩容に続く暫定的な定常歩容を設定し, これに漸近するように今回歩容を生成する手法を提案している. 本論文では, この概念を走行に拡張する. 具体的には, "鉛直方向の加速度変化を伴う倒立振子の運動に対する発散成分"という概念を用い, 今回歩容の終端発散成分と定常歩容の初期発散成分が一致するように, 今回歩容の目標ZMP軌道を修正する.これにより, 歩容生成の継続性が保証される.また, 位置と速度を境界条件とする場合に較べ, 境界条件が緩和されるので, 今回歩容の目標ZMPの修正量が小さくなる.
本手法を用いることで, ASIMOと同じサイズの実験機にて, 10 km/hの走行を実現した.
2012年 第26回日本ロボット学会論文賞受賞